【解説】SDGs目標2「飢餓をゼロに」とは?解決すべき課題や現状
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テレビや新聞などで目にする機会が多くなってきたSDGs。そのうちの一つに、SDGs目標2「飢餓をゼロに」が掲げられています。「飢餓をゼロに」に取り組む上で、目標が設定された理由や現状などを把握することは大切です。では、「飢餓をゼロに」とは一体どのようなものなのでしょうか。この記事では、その概要や飢餓に関する問題などについて解説します。
SDGs目標2の現状と課題について
SDGs目標2は「飢餓をゼロに」。「飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する」というものです。これは2030年までに飢餓や栄養不足の問題を解決し、全ての人が栄養のある食糧を得られる社会を目指すという目標です。SDGsの中に「飢餓をゼロに」という目標が掲げられているのは、飢餓が世界中で取り組むべき深刻な課題の一つだからです。2019年に国連が発表した統計によると、世界で約6.9億もの人が飢餓に苦しんでいるのが現状です。
①世界の飢餓人口
新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、2020年以降はさらに飢餓の人数が増加しています。飢餓というと、食べ物が不足している状態を思い浮かべる人が多いと思います。しかし単に食糧が不足しているだけでなく、必要な栄養が不足していたり、栄養バランスが極端に悪いという意味も含まれています。栄養不良になると、発育障害や消耗性疾患など身体的な影響を引き起こすだけでなく、知能の発達を遅らせる危険もあります。国連の発表によると、5歳未満の子どものうち1億4,400万人が発育障害、4,700万人が消耗性疾患をかかえていると言われています。
②飢餓の理由
では、飢餓の原因は何なのでしょうか。飢餓の原因の一つは貧困です。貧困状態に陥っている人は多く、SDGsでも目標1「貧困をなくそう」と設定されています。貧困状態になると、食べ物を買うお金も自給自足で農産物を育てるお金もありません。貧困と飢餓には密接な関係があり、同時に解決しなければいけない課題なのです。自然災害も飢餓の原因の一つです。大雨や干ばつなどにより田畑が大きな被害を受けると、仕事がなくなったり、食糧を確保するのが困難になります。貧困が多い途上国で自然災害が起こると、すぐに復興するのが難しく収入源を失ったり、食糧を確保できなくなる可能性があり、さらに深刻です。自然災害が多い日本も例外ではなく、大規模な自然災害が起こった後は貧困や飢餓の問題が発生するかもしれません。
また、アフリカ地域を中心に、紛争による飢餓も深刻な問題です。飢餓に苦しむ人のうち、半数以上の人が紛争地域に暮らしていると言われています。いつ戦いが始まるか分からないため、外に働きに出たり畑で農作物を育てることができなくなります。そして、紛争が激しくなると家や農地など自分たちの生活を全て捨てて、避難場所に移動しなくてはなりません。避難場所では収入がなくなり、食べ物を確保するのが難しくなる可能性が高いでしょう。
③飢餓への支援
世界の人々が食糧を得られるように様々な支援が行われています。食糧を届ける活動も重要ではあるものの、途上国の農家が持続的に食べ物を生産できるようになることが大切です。食糧に困っている国は農業技術が低いという問題もあり、農産物を育てる畑を広げたり、肥料を使って育てるだけでは農産物を育てたとしても少ししか収穫できないのが現状です。また、肥料を確保するために森林や草地を燃やして農地を作る焼き畑農業を行い、森林を失っている地域が多いという問題もあります。
安定的に収穫できるように、その土地の環境や生態系を守りながら自然災害に強い作物を作る必要があります。そのため、先進国が農業のノウハウを伝えて、持続可能な方法で農業を行う仕組みづくりが求められています。安定的に農業の仕組みが運用されるようになれば、必要な食糧を自分たちで作れるようになり、そこで働く労働者の収入にもなり貧困から抜け出せるでしょう。
SDGs目標2達成に向けて私たちができること
SDGs目標2を実現させるためには、国際社会全体で取り組んでいく必要があります。しかし国や企業などに任せるだけではなく、一人ひとりができることを行うも大切です。
①食品ロスをなくす
個人でSDGs目標2の達成に向けて取り組むなら、まずは食品ロスをなくすことを意識しましょう。食品ロスとは、本来は食べられるのに捨てられてしまう食品のことです。毎年世界で生産される約40億トンの食糧のうち、3分の1が捨てられているという統計があります。
農林水産省・環境省が発表した「令和元年度の食品ロス発生量の推計値」によると、日本の1年間の食品ロスは570万トンとなっています。(事業系食者から約309万トン、家庭から約261万トン)⾷品ロス量の推計を開始した平成24年度以降、最少値ですが、これは国民1人あたりで計算すると、毎日お茶碗1杯分の食料を捨てていることになります。世界中に飢餓に苦しむ人がいるにもかかわらず、たくさんの国で食べられる食糧が廃棄されているのです。
食糧不足で苦しんでいる人に食品ロス分が行き渡れば、飢餓の問題解決に繋がるでしょう。これは食糧の再配分という考え方です。一人ひとりが食べられる分だけ購入すると、残った食品は食糧難の人に行き渡ります。食品の廃棄と飢餓の問題を一気に解決できるのです。日本でもこうした取り組みは既に開始されており、余った食品が支援施設に届けられています。家庭での食品ロスをなくすためには、食材を無駄なく使い賞味期限や消費期限切れで食品を捨てないように心がけましょう。
また、外食産業でも食品ロスが問題になっています。外食産業の食品ロスの主な原因は顧客の食べ残しです。外食時についつい頼みすぎてしまい、料理を残した経験がある人は多いのではないでしょうか。飲食店で注文する際は、自分が食べられる分だけ注文するように心がけ食べ切ってから追加注文したり、食べ残しの持ち帰りが可能な飲食店を選ぶといった工夫もよいでしょう。
②食料自給率をあげる
日本の食糧自給率は約38%で、食糧の大部分は輸入に頼っています。日本などの先進国が食糧を輸入している先は、食糧確保に困っている途上国も含まれています。生産された農産物の多くは他国に輸出されるため、自国で食べられる食糧はほとんど残りません。また低賃金で働く農民が多く、十分な食糧を買えるほどお金を持っていない人もいます。この問題を解決するためには、途上国から食糧を輸入している国が食糧自給率を上げることが必要です。
そこで近年では、地産地消の農作物を選ぶ動きがあります。地産地消とは、地域で生産されたものをその地域で消費する取り組みです。地元や国産の農産物を購入して農業活性化に貢献すれば、日本の食糧自給率アップに繋がるでしょう。また地産地消が広がれば食糧自給率が上がるだけでなく、食糧を輸送するときに排出されるCO2の削減にも貢献できます。個人で食糧問題に取り組む際は、無理のない範囲で自分ができることを探すことが大切です。
スーパーの地産地消コーナーやファーマーズマーケットなどを積極的に活用し、地元で生産された食品を購入してみてはいかがでしょうか。地産地消の食品を買うのが難しいなら、できる限り国産の食べ物を選ぶようにしましょう。普段購入している食品を輸入品から国産に買えるなど、日常生活の中で飢餓ゼロに貢献できることを見つけてください。
飢餓の解決に向けて、自分ができることから始めましょう
日本に住んでいると身近に感じるのは難しいものの、世界では多くの人が飢餓で苦しんでいるというのが現状です。飢餓問題の解決に向けて、国や地域、企業だけが取り組むのではなく、私たち一人ひとりができることにも目を向けることも大切ですす。食品ロスを出さないなど、まずは自分の生活の中でできることから始めてみましょう。