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カジノ解禁でどうなる?ギャンブル依存症大国日本

カジノ解禁でどうなる?ギャンブル依存症大国日本

#SHOW CASE
  • すべての人に健康と福祉を

毎年5月14日~5月20日は、ギャンブル等依存症問題啓発週間です。ギャンブル依存症と聞くと、当事者でない人にとってはあまり関係のない言葉のようにも感じますが、2018年にカジノ法案(IR整備法)が成立したことで、ギャンブル依存症患者は色々な形で支援を受けられるようになりました。日本初のカジノ開業に向けて各候補地が審査を進めるその裏では、今まさに、これからの日本のギャンブルの在り方について様々な議論がなされています。金銭面だけでなく、依存性といった健康面、更には治安など多くの問題を抱えるギャンブル。ある調査では、世界的に見て日本はギャンブル依存国だということが分かりました。今後カジノの解禁によってギャンブルを取り巻く環境は大きく変化することが予想されています。私たちは今後ギャンブルとどう付き合っていけばよいのでしょうか。

ギャンブル依存症とは

ギャンブル依存症は、ギャンブルにのめり込んでコントロールができなくなる精神疾患の一つです。「病的賭博」という名称でWHOも正式に病気と認定しています。依存症になると主に、興奮を求めて掛け金が増える、やめようとしてもうまくいかない、ギャンブルをしないと落ち着かない、ギャンブルのことで嘘をつき借金をする、などといった症状が見られ、何かしらの問題が起きているにも関わらず、賭け事をやめられない状態に陥ります。
SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」の中のターゲット5では「薬物乱用やアルコールの有害な摂取を含む、物質乱用の防止・治療を強化する」と掲げられています。ギャンブル依存症もここに通じるものとして考えられ、周囲が環境を整え、適切に治療を進めることはSDGsの目標達成に繋がる重要な要素であり、決して他人事ではない問題なのです。

日本は世界一のギャンブル依存大国?

厚生労働省が2021年に行った依存症に関する調査によると、日本で過去1年間にギャンブル依存症が疑われる状態になったことがある人は成人(18歳~74歳)の2.2%、196万人と推計されています。少し古いデータではありますが、世界をみると依存症の割合が多い国でも米国が1.9%(01年調査)、英国が0.8%(00年調査)、スウェーデンが0.6%(01年調査)と、日本は諸外国と比較しても突出して高い数値であることが分かります。
また、同調査では、ギャンブル依存症が疑われる人たちが最もお金を使ったギャンブルについて、パチンコが39%、パチスロが32%と全体の7割を占めていたことも明らかになりました。日本には約8,000店のパチンコ店・パチスロホールがあります。誰でも気軽にギャンブルを始めることができるのは世界的に見ても特殊な環境です。日本が世界一のギャンブル依存国である理由はパチンコ店の多さも大きく影響していると言えそうです。

ギャンブル依存症患者を減らす取り組み

カジノを中心とした統合型リゾートの設立を推進するIR推進法が2016年に施行されたことを受け、2018年には「ギャンブル等依存症対策基本法」が公布されました。国や地方公共団体に対し、依存症の予防や啓発、患者、家族への支援等の対策を計画的に推進することが義務化され、ギャンブル依存症患者数の減少が期待されています。ちなみに、法律の名前がギャンブル“等”となっている理由は、公営競技(ギャンブル)である競馬・競輪・競艇・オートレースと、法律上は賭博ではなく遊戯として扱われているパチンコやパチスロが区別されているためです。これまでパチンコ等への依存症は問題視されながらも国による対策は推進されておらず、医療体制や相談支援体制など十分ではありませんでした。この法案によってパチンコやパチスロもギャンブル依存症の一因と認められ、国や自治体の支援の対象になりました。

2020年にはギャンブル依存症の患者がグループで意見交換を行う集団治療プログラムが公的医療保険の対象になるなど、ギャンブル依存症を治療する環境はここ数年で大きく変化しています。現在、ギャンブル依存症の相談窓口となっている拠点は全国で65カ所、専門医療機関は52カ所あります(2022年3月時点)。全国の保健所や各都道府県・政令指定都市ごとに1か所ずつある精神保健福祉センターでは電話相談や面談を受けることもできます。

その他にも、全国公営競技施行者連絡協議会ではギャンブル依存症をセルフチェックできるツールを公開し、早期発見・早期予防につなげる活動も行っています。また、冒頭の「ギャンブル等依存症問題啓発週間」に合わせて大学生向けのセミナーが開催されたり、パチンコ依存について専門家が議論するWebフォーラムが配信されたりするなど、各事業者も様々な取り組みを進めています。

ギャンブル依存症のセルフチェックについてはこちら

麻雀・ポーカーもイメージ向上を図っている

賭博のイメージが強い麻雀やポーカーに負のイメージを持っている方も多いかもしれません。公営競技と違い、賭博は少額であれ違法です。しかし本来は頭脳を使うゲームですので、健康目的や娯楽として楽しんでいる人が多いことも事実です。近年はこれらの業界でもイメージ向上のために様々な取り組みが行われています。

競技麻雀のナショナルプロリーグ「Mリーグ」

企業とプロ契約を結んだ選手がチームを編成し戦う麻雀のプロリーグ、Mリーグが2018年に発足されました。2021年は全8チーム32名の選手で開幕し、全試合がABEMAで生中継されています。Mリーグは、理念の1つに麻雀に対する負のイメージの払拭を挙げており、参加するプロ選手にも違法賭博との決別を課しています。Mリーグを見たことで麻雀のイメージが変わったという声も多く聞かれ、今後も娯楽・競技としての地位向上が期待されています。

Z世代で”賭けない”ポーカーが人気

ポーカーは囲碁やチェスと同じくIOC国際オリンピック委員会に認められているマインドスポーツ(頭脳スポーツ)です。競技人口は世界で1億人を超え、米国では将来なりたい職業ランキングの上位にも入るほどの人気ぶりです。最近では賭けないアミューズメントカジノや、オシャレなポーカーバーがZ世代を中心に流行しており、一昔前のダーツやビリヤードのように若者の間でブームになっています。日本最大規模のポーカー大会を主催する日本ポーカー連盟は、ポーカーの健全な普及と社会的地位の向上を目指した活動を行っています。ポーカーには既に様々な世界大会がありますが、今後健全なスポーツとして競技人口が増えることで、将来オリンピック種目に登録される日がくるかもしれませんね。

正しく楽しんで依存症を予防しよう

現在カジノ法案で進められている議論では、日本人のカジノ入場に6,000円を徴収したり、月の利用上限回数を設けたりするなど、ギャンブル依存症への対策も進められています。しかし今後カジノが解禁されることで、日本におけるギャンブルの在り方は大きく変わってくるでしょう。特に、ギャンブル依存症大国の日本では、既存の患者のケアは急務です。本人だけでなく家族や周りが病気として認識し、病院で正しく治療することで、ギャンブル依存症から脱却することができます。公営競技やパチンコも、依存という形にならなければ娯楽や趣味として健全に楽しむことができますし、今後カジノをはじめとしたIRの実施によって経済や地域が活性化されることも大きく期待されています。正しい楽しみ方と正しい治療で、私たちも上手に付き合っていきたいですね。

writer黒川/editer森川

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