パキスタンの3分の1が冠水、被害総額4兆円超。世界的異常気象はいつまでつづく?
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今年の6月は史上最も早い梅雨と報じられ、8月は連日猛暑が続きました。最近では史上最大の台風が上陸するなど異常気象が見られています。その結果、日本の四季の美しさが脅かされ、生活する動植物も環境に適応するのに困惑する日々…。
こうした現象は、日本だけでなく世界でも起こっています。今回は、異常気象によって起こっている世界各地の問題と、なぜ異常気象が発生しているのかを見ていきましょう。
今年の異常気象、なぜ起こっている?
東京では、6月に35度を超える猛暑日が9日も続きました。観測が始まった1875年から2021年までの147年間で、東京で6月に猛暑日を記録したのはたった3回。この数値から、いかに異常なことが起きているかがわかります。では、今年の異常気象は、なぜ起こっているのでしょうか。
気象庁の異常気象分析検討会が2022年8月22日に出した分析結果では、以下のように述べられています。
6月下旬~7月初めの記録的な高温は、日本付近で上層の亜熱帯ジェット気流が北に蛇行し、上層の高気圧と地表の太平洋高気圧がともにこの時期としては記録的に強まったことが主要因で、これに持続的な温暖化傾向が加わったためとみられます。
気象庁も、「持続的な温暖化傾向」が一因になっていると分析しています。
しかし、国立環境研究所 地球環境センターの研究によれば、記録的な極端現象の発生には自然本来の「ゆらぎ」が最も重要であることが多いそう。また、極端な現象の発生頻度が変わるメカニズムはまだ十分に明らかになっていないようです。
地球温暖化がすべての異常気象を招いている訳ではないようですが、同センターは「一部の気象イベントについては、地球温暖化の進行によってその発生確率が大きく引き上げられていたことがわかりました」。と発表しています。
あらゆる異常気象の原因の1つが、地球温暖化であることは間違いありません。温室効果ガスの削減のために、できることを取り入れていきたいですね。
記録的豪雨や干ばつ、山火事の発生。異常気象によって世界では何が起こっている?
世界各地で、ここ数か月の異常気象によって深刻な被害が続いています。日本も他人ごとではないかもしれません。2022年の事例を見てみましょう。
1.記録的豪雨(パキスタン)
記録的豪雨に見舞われたパキスタン。パキスタンには雨季がありますが、今年の降雨量は、過去30年間の降雨量の平均の、5.5倍を観測。パキスタン各地で洪水や土砂崩れなどが発生し、国土の約3分の1が冠水してしまいました。一向に水が引かず、2週間以上も自宅の屋根に避難していた人もいたほどです。
パキスタン政府の発表によれば、9月15日時点でこれまでに1486人が死亡、また3300万人以上が被災するなどの被害が発生しているといいます。経済や農業などに与える損失は300億ドル以上(日本円で4兆2000億円以上)。パキスタンへの国際的な協力・支援が求められています。
2.干ばつ(中国)
中国気象局は8月18日に、長江流域に中度以上の干ばつ警報を発令しました。中国は7月以降、1961年の観測開始以来もっとも強い熱波に襲われており、さらに降雨量も少ない日が継続。長江の一部で川底が露呈するほど水位が下がり、電力面でも日常生活に支障をきたすような被害が発生しています。
湖北新聞によれば、17市州79都市の477万7,800万人の農作物が被害を受け、16万3,000人の飲料水が不足し、直接的な経済損失は34億2,400万元にも上るそうです。
ライフラインである水と電力が危ぶまれ、危機的状況だと言えます。
3.ヨーロッパの猛暑・山火事
記録的な猛暑が襲ったヨーロッパ。中でもスペイン南部のコルドバでは、7月12日、13日に最高気温43.6℃を記録。一部地域では、平均気温より10℃も高い、異例の暑さが続きました。WHO(世界保健機関)は7月22日、猛暑の影響でスペインとポルトガルだけで、すでに死者が1700人を超えたと発表。
スペインやフランスでは大規模な山火事が、イギリスでは、鉄道の線路にゆがみが発生したり、滑走路が隆起したりと、交通機関にも大きな影響を与えました。猛暑が続く日本も、同じような被害を受ける日が来てしまうかもしれません。
21世紀末に世界では何が起こる?日本の四季は失われるのか
国立環境研究所 地球環境研究センターは、近年観測された極端な気象現象の変化の世界規模の評価、その変化に対する人間活動の寄与、21世紀初頭(2016〜2035年)及び21世紀末(2081〜2100年)の将来変化予測を発表しています。
この予測によれば、「ほとんどの陸域で、寒い日や寒い夜の頻度の減少や昇温」「ほとんどの陸域で、暑い日や暑い夜の頻度の増加や昇温」について、21世紀初頭に変化が生じる可能性は非常に高く、21世紀末にはほぼ確実だそうです。
つまり、これから寒い日が少なくなり、暑い日が増えるということ。このままでは、これまで私たちが感じてきた春夏秋冬の趣は、失われてしまうかもしれません。
さらに、「大雨の頻度、強度、大雨の降水量の増加」については、21世紀初頭は、多くの地域で可能性が高いとされ、21世紀末には、中緯度の大陸のほとんどと、湿潤な熱帯域で可能性が非常に高いとされています。
日本でも豪雨の被害を受けているニュースを見ることがありますが、今後はさらに、大雨が襲ってくることを想定した方がよいかもしれません。
今後の予測で、気温の上昇や大雨の頻度、強度降水量の増加などが「確実」「可能性が非常に高い」と言われると、ハッとしますよね。SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」を、他人ごとと捉えず、自分にできることを小さく始めるとともに、世界の動きにもしっかり耳を傾けておきましょう。