そのコーヒーは大丈夫?50年で30億羽消えた鳥を救え
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10月1日は国際コーヒーの日でした。そこで今回はコーヒーの話題を!
レストランで食後にコーヒーが提供される理由をみなさんご存知でしょうか。一説では、フランスの食文化がもとになっているといわれています。フランスでは、食事と一緒にワインを楽しむ習慣があり、ワインの酔い覚ましとして、食後にコーヒーを飲むようになったといわれているそうです。
食後以外にも、仕事中の気分転換やリラックスしたいときなど、わたしたちの生活を豊かにしてくれるコーヒーですが、実はコーヒーの生産が増えたことで、渡り鳥の生態系を追い込んでしまっていることは、あまり知られていません。
一見、コーヒーの生産と渡り鳥は無関係に思えますが、実は低コスト・大量生産を追求したコーヒーの栽培方法の変化が原因で、熱帯林を休息地にする渡り鳥の数が減少しています。今回は、渡り鳥たちの住処を守ることができる「バードフレンドリー®」コーヒーについてご紹介します。
アメリカの渡り鳥が50年で30億羽、姿を消した?
アメリカでは毎年、42種類以上数百万羽の鳥が、越冬するために北米から暖かい地域のメキシコやカリブ海、中南米に移動しています。
鳥たちの多くは、最適な場所を記憶していて毎年同じ場所を目指してやってくるそうですが、アメリカとカナダが行った調査によると、1970年から2020年までの間に、鳥の個体数が全体でほぼ30%、約30億羽の渡り鳥が姿を消したことがわかったそうです。
低コスト、大量生産を求めた結果は…渡り鳥とコーヒーの関係
渡り鳥にとって、越冬するのに最適な場所は、熱帯林の木陰で栽培されるコーヒーの木でした。
かつては、コーヒーの栽培は熱帯林の下で育てるシェードグロウン(木陰栽培)が主流で、コーヒーが育つ自然環境は、気候も暖かく、食料や水も豊富で、渡り鳥にとって安全な場所だったからです。
しかし、この栽培方法は、人の手で収穫しなければならず、とても手間がかかる栽培方法でした。
そのため、近年は低コスト化、大量生産を求めて、木陰を作るシェードツリーを伐採した「サン・コーヒー(Sun Coffee)」と呼ばれる低木で栽培する農法に転換されました。森林を伐採し、コーヒーの単一栽培を機会で展開するほうが効率的だったからです。そのために、多くの自然が失われ、渡り鳥も減少したと考えられています。
鳥に優しい生息地をつくるための「バードフレンドリー®認証」
渡り鳥が減少していく危機感から、1999年にアメリカの「スミソニアン渡り鳥センター」が始めたのが、「バードフレンドリー®認証」制度です。
この認証を取得するためには2つの条件があります。1つ目の条件は、有機栽培であること。そして、2つ目の条件は、自然に近い環境、そして日陰でコーヒーを栽培することです。この2つ目の条件には、スミソニアン渡り鳥センターの独自基準が設けられて審査されます。
独自条件とは、たとえば、森林の木(シェードツリー)の高さが設定されており、15m以上が20%、12m以上が60%以上であること。木の種類はインガ・エドゥリスが最も望ましいこと、さらに11種類以上の木で森林が構成されていることなど、農園の木陰が自然林と似ていることが求められています。認証を取得したあとも、3年後に審査を受けて、認証を更新する必要があります。
2022年1月現在で、世界12ヵ国、53農園がバードフレンドリー®認証を受けており、1780種類以上の鳥が世界中の認証農園内で確認されているそうです。
バードフレンドリー®認証のコーヒーは?
バードフレンドリー®認証を受けた農園で栽培されたコーヒー豆は、プレミアム価格で買い取られ、生産農家も支えられています。さらに、製品の売上の一部は、スミソニアン渡り鳥センターを通じて、世界中の渡り鳥の保護や生態系保護の活動のために役立てられます。
コーヒー豆は世界で年間1000万トン以上生産されていますが、その中でもバードフレンドリー®認証を受けたコーヒー(「バードフレンドリー®コーヒー」)は1%にも満たない貴重なものになります。日本では住商フーズが総代理店となり、カルディや小川珈琲店、UCCなどで、バードフレンドリー®コーヒーを取り扱っています
日々の美味しいコーヒーを楽しみながら、生産農家を支え、森林を守り、そこで休む鳥を守るのが、バードフレンドリー®コーヒーです。まさにバードフレンドリー®コーヒーは、持続可能な社会を実現するための取り組みだといえるのではないでしょうか。
また、森林を守る取り組みは、地球温暖化にも貢献することができます。世界中で多くの人に飲まれているコーヒーですが、「コーヒーの2050年問題」を抱えています。
コーヒーの栽培は、環境の変化を受けやすく、世界国々の課題となっている地球温暖化がこのまま続くと、世界有数のコーヒー大国として有名なブラジルの栽培適地は、2050年には60%も。アラビア種のコーヒー栽培に適した土地は、現在の50%にまで縮小されるといわれています。
このように1杯のコーヒーでも、その背景にはいろいろな課題を抱えています。大切なことは、小さなことでも、私たち一人ひとりが当事者意識を持って何が出来るのかを考えることなのかもしれません。