そのお酒まだ捨てないで!日本酒に賞味期限はありません
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食べ物の中で、賞味期限がない食べ物は一体何でしょう?一見、なぞなぞのような質問ですが、意外と答えられない人も多いのではないでしょうか。東京都福祉保健局によると、賞味期限の表示を省略できる食品は大きく9つ。答えは、でん粉、チューインガム、冷菓、砂糖、アイスクリーム類、食塩及びうま味調味料、酒類、飲料水及び清涼飲料水、氷です。今回はいくつかある賞味期限がない食品の中から、日本酒についてピックアップして解説していきます。
日本酒には賞味期限の概念がない、なぜ?
贈り物でいただいた日本酒をうっかり長期間放置してしまい、ラベルを確認しても賞味期限の表記がない。飲んでも大丈夫なのかと迷った経験、あるあるですよね。ほとんどの食品や飲料は賞味期限が記載されているのに、なぜ日本酒にはないのでしょうか。
実は、酒税法により日本酒は賞味期限の記載義務がありません。日本酒造組合中央会によると、日本酒は比較的高いアルコールが含まれているので、アルコールの殺菌作用により腐敗することがない、とされています。また、熟成という概念が存在するため、賞味期限がないようです。ただし、劣化の概念はあるため、製造年月を記載することが義務付けられています。ボトルの製造年月は、普通酒(吟醸酒や純米酒、本醸造酒などの特定名称酒として分類されない日本酒のこと)の場合は、日本酒が瓶容器に詰められた日。特定名称酒(本醸造酒、純米酒、特別本醸造酒、特別純米酒、吟醸酒、純米吟醸酒、大吟醸酒、純米大吟醸酒)の場合は、貯蔵後に製品が完成した日が記されています。最近では、劣化してしまっても、日本酒風呂として楽しむなど、飲むだけではない別の活用方法もあるそうです。
賞味期限の呪縛に悩まされる酒造業界
近年の食に対する安全志向の高まりにより、製造年月からたった1、2ヶ月経過した日本酒を日付経過品という扱いで返品されるケースが増えているそうです。秋田県酒造協同組合は、ホームページにポスターを掲載。「日本酒に賞味期限はありません」と題し、早期の返品は資源の有効利用の面からもマイナスであり、中小零細企業が多い酒造業界にとって、企業経営の大きな足かせになっていると実情を伝えています。
賞味期限がないとはいえ、保存方法は大事!劣化したとしても別の活用法を。
賞味期限がない日本酒を劣化させず美味しくいただくには、正しい保存方法を覚えておく必要があります。日本酒造組合中央会によると、日本酒の大敵は太陽の光や高温。これらが影響することによって味に影響が出てきます。適切な保存場所は、1~15℃程度と温度が一定に保たれていること。太陽の光が入らない冷暗所を勧めています。一般家庭では冷蔵庫がよいですね。新聞紙や化粧箱に入れて保存しておくと、開閉時の光の影響も受けにくくなります。日本酒を間違った保存方法や、栓を開封したままにすることで劣化する場合も。劣化の特徴は、日本酒自体が焦げた臭いがしたり、沈殿物が目立っているケースもあります。おいしく飲めるか不安な人は、料理酒として煮物に使用したり、鍋料理の出汁として活用するのもよいでしょう。お財布にも優しく食品ロスも減らせますね。
「伝統的酒造り」は日本の登録無形文化財に!正しい知識で文化を守ろう
「酒は飲むとも飲まれるな」「酒は百薬の長」など、お酒にまつわることわざも多数。日本のお酒が私たちの文化や生活と深い関係にあることがわかります。令和3年には、日本の「伝統的酒造り」の技術は国の登録無形文化財に登録され、令和4年3月には、ユネスコ無形文化遺産にも提案されています。安心安全で誰もが手に取れる環境を支えている生鮮食品と、そもそも熟成されていくお酒関連の飲料は、考え方が違うことに、改めてハッとさせられます。文化を継承するためにも、産業を衰退させない消費選択を心がけたいですね。