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猛暑で変わる現代人の健康リスク、「ビタミンD不足」を防ぐ生活習慣と食事のポイント


この記事に該当する目標
3 すべての人に健康と福祉を
猛暑で変わる現代人の健康リスク、「ビタミンD不足」を防ぐ生活習慣と食事のポイント

近年、記録的な暑さによる「外出自粛」や、美容・健康を目的とした「徹底した紫外線(UV)ケア」などライフスタイルが変化する中、食事からの摂取量不足も相まって、現代の日本人に特有の新たな健康課題が浮き彫りになっています。
それが、「夏なのにビタミンDが作れない」というパラドックスと、それに伴う深刻な“ビタミンD欠乏”です。

こうしたなか、大塚製薬栄養素カレッジが、「猛暑と過度なUVケアが招く“ビタミンD欠乏”対策セミナー」を開催。ビタミンD欠乏のリアルな実態とリスク、また日常生活でできる対策について、専門家の先生たちから話を聞くことができました。

なぜ夏なのにビタミンDが欠乏するのか?日本人のビタミンD欠乏の現状と将来のリスク

セミナーの第1部では、大阪公立大学大学院 生活科学研究科教授 桒原晶子先生が登壇し、「データで見る日本人のビタミンD欠乏のリアル ~なぜ現代の食生活だけでは足りないのか~」をテーマに講演を行いました。

本来、ビタミンDは、日光(紫外線)を浴びることで体内で生成されるものです。紫外線の強い夏は、ビタミンDが欠乏するというイメージはあまりないかもしれません。ところが昨今は、ライフスタイルの変化により、日本人の90%以上がビタミンD不足に陥っているというデータもあります。

ビタミンD欠乏の背景には、男性では非屋外職業、低い身体活動量といった日光を浴びる機会を減少させるライフスタイルが主な要因として考えられます。
また女性では日光回避行動を取る傾向が強い中で、それを補うための魚などからのビタミンD摂取不足が長期的な濃度低下を招く要因になります。とくに若年女性においては、日光を避ける行動やビタミンDの摂取量が少ないことが、将来の骨軟化リスクだけでなく、次世代(子ども)の発育にまで影響を及ぼす社会課題となっています。

ビタミンDは“貯める”ことが大切、健康を支える新たな視点「ビタミンD貯金」

ビタミンDは日光に当たることで皮膚で合成される経路と、鮭やいわし、うなぎなどの魚、または卵やキノコなど食事から得られる経路があり、その栄養状態の指標として“血中25(OH)D”濃度が最もよい指標として扱われます。
血中25(OH)D濃度は、日々の摂取や皮膚での産生だけでなく、過去のビタミンD摂取・産生の履歴を反映する“残高指標”として考えられるもので、体内のビタミンDの“残高”を減らしすぎないことが重要だと桒原先生は言います。

昨今は、猛暑による屋外活動の減少や、日光を浴びる機会の少ない生活習慣がビタミンD産生に影響していると考えられています。
一方で、日焼け止めについては規定量を塗りきれていないケースが多く、使用自体が直ちに血中濃度の低下につながるわけではないそう。暑さ対策はもちろん重要ですが、日焼け止めを活用しながらも、日陰にとどまり続けず適度に日光を浴びることがビタミンDを欠乏させないために大切です。

ビタミンDの栄養状態は、各ライフステージで様々な疾患と関わります。
例えば妊娠中の母体のビタミンDが不足すると妊娠糖尿病や、低体重児の出生リスクが高まります。小児期では、アトピーやくる病のリスクが高まり、成人期〜高齢期では骨折や糖尿病、がんなど、様々な健康被害に繋がる恐れがあります。

桒原先生は講演の最後に、紫外線量の多い夏に日を浴びることに抵抗のある人はその分ビタミンDがとれる食事を意識すること、そしてビタミンD栄養状態は食事や日光曝露習慣の積み重ねを反映するため、今その瞬間だけたくさんとればいい訳ではなく、少しずつコツコツ摂ることをアドバイスとして伝えていました。

日々の食事と適度な日光浴でビタミンD不足を防ぐ

第2部では、ビタミンDをめぐる社会的背景や日常生活の中での向き合い方について、桒原先生と健康医療ジャーナリストの西沢邦浩氏の対談が行われました。

西沢氏から、欧米でビタミンDへの関心が高い背景について問いかけがあると、桒原先生は、緯度の高い地域では冬季に皮膚でビタミンDをつくることが難しく、ビタミンDを多く含む食品が限定的で食事からの補給にも限りがあるため、国レベルで不足を防ぐ仕組みが発達してきたと説明しました。
カナダのように液状乳製品とマーガリンへの添加が法制度として整備されている国や、イギリスはリスクの高い層へ配布する仕組みを持つ国を例に挙げ、米国の国民健康・栄養調査では血中濃度の改善傾向も見られていると述べました。

一方、日本は諸外国に比べて魚を多く食べる文化によって、ビタミンDを自然に摂取できていたため問題意識が育ちにくかったといいます。近年は若年層ほど魚の摂取量が少なく、室内中心の生活、紫外線回避、猛暑による外出控えが重なって状況が変化しています。2010年前後から2015年頃に、くる病が再び問題視され、学会でも取り上げられるようになった点にも触れられました。

また、前半から伝えられていた「少しずつコツコツ」について桒原先生は、日光の強さや魚の食べ方、本人の状態などにより結果が異なるため、ビタミンDのために1日何分くらい日光を浴びる、魚をこれくらい食べると一概には言うことができない。とにかく「コツコツ」積み重ねることが大事、と強調しました。

続けて、「ビタミンDが摂れるの食べ物は魚、卵、そしてきのこ。それ以外では日本では難しい。日光を浴びることも大切だが、口からとるのが一番確実。魚をとるのが難しい場合、探せばヨーグルトなど強化食品もあるのでそういったものや、チェックシートなどを活用しビタミンDの欠乏が明らかな場合はサプリメントで補うことも必要」だと述べました。

猛暑やライフスタイルの変化によって広がるビタミンD不足は、現代社会における新たな健康課題の一つです。日々の食事や適度な日光浴など、無理なく継続できる習慣を積み重ねることは、自身の健康を守るだけでなく、健康寿命の延伸にもつながります。
一人ひとりが予防の視点を持ち、健康づくりに取り組むことは、SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」の実現にも貢献する重要な一歩となるでしょう。

教授 / 博士(家政学)

桒原 晶子 (くわばら あきこ) 先生

大阪公立大学 大学院生活科学研究科 生活科学専攻 教授
生活科学部 食栄養学科 教授博士(家政学)

応用栄養学、臨床栄養学を専門とし、特に脂溶性ビタミンやビタミンD欠乏の実態に関する研究を数多く手掛けるビタミンD研究の第一人者。
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会 ワーキング構成員や、日本栄養・食糧学会 学会誌編集委員などを歴任。
近年は「日本人若年女性におけるビタミンD欠乏の実態と要因の探索」などの研究で多数の賞を受賞している。
健康医療ジャーナリスト

西沢 邦浩 (にしざわ くにひろ)

株式会社サルタ・プレス 代表取締役

早稲田大学卒。1991年日経BP社入社。
『日経ヘルス』『日経ヘルス プルミエ』編集長、日経BP総研マーケティング戦略研究所主席研究員を経て独立。
現在は株式会社サルタ・プレスの代表取締役を務める傍ら、最新の論文やエビデンスをベースに、総合的な見地で分かりやすく健康生活を指南する記事や講演が多くの支持を集めている。



執筆/フリーライター Yuki Katagiri