13年連続三つ星レストランも注目、世界海洋デーに考える私たちの食と海洋資源。
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毎年6月8日は国連が定めた「世界海洋デー(World Ocean Day)」です。コンセプトは、世界で共有する海や個人個人の海とのつながりに思いをはせ、海が私たちの生活に果たす重要な役割や海を守る大切な方法についての認識を高めること。1992年にリオデジャネイロで開催された地球サミットにて初めて提案され、2008年12月5日の国連総会にて制定されました。
今年の世界海洋デーのテーマは“Planet Ocean:Tides are changing(潮の流れは変わっている)” 。海洋問題に対しての意識が少しずつ変わってきている中で、行政、研究機関、NGO、企業、個人など、すべての人々が一丸となって取り組んでいくことを促しています。
日本では、13年連続ミシュラン3つ星の「柏屋」で特別メニューを提供
「食」を通してのアプローチで言うと、世界の一流580のホテルとレストランが加盟するルレ エ シャトーでは、2018年より、漁業と海洋生態系の保全に取り組む非政府環境団体、「エシック オーシャン」とのパートナーシップのもと、この世界海洋デーに向けた取り組みを実施しています。6年目となる今年、ルレ エ シャトーが掲げたテーマは “SEAsonality ―シーフードの“旬”とは―”。魚介類の“旬”とは、その魚種が市場に多く出回る時期のことで、産卵のために群れをなして集まり、もっとも捕獲しやすい繁殖期と重なることが多いため、必ずしも持続可能性が高いとはいえません。世界の料理とおもてなしの伝統を守り、発展させることを使命とするルレ エ シャトーでは、常に持続可能な漁業の大切さを意識しているシェフたちが魚介類の“旬”について再定義し、サステナブルシーフードを使った特別メニューや料理教室、魚を一切使わないメニューの提供など、世界各地でさまざまなイベントを展開しています。
日本では、13年連続ミシュラン3つ星の「柏屋」で特別メニューを提供
日本では世界海洋デーに先立った6月3日、13年連続でミシュラン3つ星を獲得した大阪の日本料理店「柏屋」と、1735年に創業し、現存する世界最古のスイス時計ブランド「ブランパン」のコラボレーションスペシャルイベントが実現しました。「柏屋」の松尾英明オーナーシェフは約40年のキャリアをもつ熟練の料理人。2022年には、関西の料理人や生産者、近畿大学の水産研究所とともに、持続可能な食の未来を考え、具体的なアクションを起こすために「リレーションフィッシュ」という会社を立ち上げるなど、サステナブルな取り組みに真摯に向き合っています。
初夏の味わいを瑞々しく表現したランチコースの中で使われたサステナブルなシーフードは3種類。MSC認証(世界の水産資源を守るための持続可能な漁業に対する認証制度)を取得した帆立貝は焼き目をつけて、生雲丹やジュンサイと先付けに。和歌山県串本の大瀬戸水産が取り組む養殖の大瀬戸伊佐木は炭で焼いて、ふくよかな出汁と水無月豆腐と合わせた煮物椀に。ケンケン漁という一本釣漁法で釣られた鰹は漬けにして、カボスの酸味をきかせた辛子酢味噌でいただくお造りに。いずれの料理も素材の力を最大限に引き出した丁寧な仕事が感じられます。
「水質浄化能力がある帆立貝のような二枚貝は環境負荷の小さな養殖をできる成功例、意識の高い若い生産者が取り組んでいる大瀬戸伊佐木は新しい養殖業の価値意識の転換、ケンケン漁の鰹は環境負荷の小さな漁法で、天然の魚を持続的に利用していくひとつの象徴として、この3つの魚介類をコースに取り入れました。煮物椀はうちにとっていちばん大切にしたい料理で、そこに養殖魚を使うことは大きな冒険でしたが、炭で焼いて余分な脂を落とし、香りをつけることで、うちのお椀として出せるものになりました。人が大切に育てたものには環境負荷が小さく、味も品質も天然ものと遜色のないいいものが作れるということを、我々料理人が生産者の代弁者として訴え、価値意識の転換を広めていくことが重要だと思っています」と松尾シェフ。実際にお料理をいただきながら聞くお話は、刺激と学びに満ちていました。
海に囲まれた島国で、古来、自然と共存し、季節の移り変わりを大切にしてきた日本。海洋デ―をきっかけに、改めて海が私たちにもたらす恩恵と、未来への持続可能性について、考えてみませんか?