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新内眞衣と学ぶニッポン放送『SDGs MAGAZINE』目標15「陸の豊かさも守ろう」 #後編 本田亮さんが明かす「伝え方」の“極意”


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15 陸の豊かさも守ろう
新内眞衣と学ぶニッポン放送『SDGs MAGAZINE』目標15「陸の豊かさも守ろう」 #後編 本田亮さんが明かす「伝え方」の“極意”

ニッポン放送で毎週日曜日午後2時10分からオンエア中のラジオ番組『SDGs MAGAZINE』。パーソナリティを務める新内眞衣さんとともにSDGsを学ぶ同番組の3月26日放送では、環境漫画家の本田亮さんをゲストに招き、SDGsの「伝え方」にスポットを当てた。

エコノザウルス誕生秘

前回の放送では目標15「陸の豊かさも守ろう」について、環境漫画家であり、さまざまな川や山を冒険してきた本田亮さんに話を聞いたが、今回はその後編。「SDGsをどう伝えていくか」をテーマに、新内さんがその「伝え方」の“極意”に迫った。

新内 「この『SDGs MAGAZINE』をやってきて、ちょうど1年ほど。最初は『SDGs』が何の略かも言えなかった私ですが、1年やっていると自然と意識している自分にも気づきつつ、同時に『伝える』ということ、その難しさをものすごく考えています。自分のことではなく、地球のことや社会のことを伝えるという新しい挑戦。ラジオなどをやっているとき、普通に自分のことは話せても、人のこと、他のことって結構お話しするのが難しいなと思ってきました。これは、もちろん今パーソナリティをやっている私自身もそうですし、その話を聞いて、ちょっとでも『そうだな』と思ったことをリスナーの皆さんが誰かに伝えるときにも『伝え方』というのは大事だと思うんです。ということで、本田亮さんを迎えて、『伝え方』について伺っていきたいと思います。今週もよろしくお願いします」

本田 「はい、よろしくお願いします」

新内 「本田さんはもともとCMプランナーをされており、加えて国連WFP協会理事で、漫画家としても活動し、長年イラストや漫画を活用して環境問題を伝えられています。具体的な活動を紹介すると、まずは環境漫画『エコノザウルス』の連載がありますが、これはどういった漫画なのでしょうか」

本田 「環境問題をテーマにした漫画展をやるときに、まだちょっと堅いなと思ったんです。もっともっと人が寄ってくるような、子供たちも含めて集まるようなキャラクターをつくりたいなと思って、つくったキャラクターがエコノザウルスです。エコノザウルスというのは実は人間のこと。人間というのは、このまま環境破壊を続けていくと、絶滅しちゃうんじゃないかと思って、こんなに馬鹿な生物はいない。絶滅しちゃったときに、そのあと地球上に別の生物がやってきて、骨を発見したときに、彼らは僕らのことをなんて呼ぶだろうかと考え、経済ばっかり追い求めて、絶滅した恐竜と同じじゃないかということで、エコノザウルスと名付けました」

新内 「なるほど!」

本田 「エコノザウルスというキャラクターを“環境問題のミッキーマウス”にするつもりでつくったんです」

新内 「これ、すごいキャッチーで、子供だったら『わあ、かわいい』となるけど、背景を考えると相当すごいですね」

本田 「そう。ピンクの肌色をした恐竜なんですけどね」

漫画というアプローチが生んだ“連鎖の奇跡”

新内 「漫画やイラストを描くのは得意だったんですか」

本田 「いや、全然描いたことはなかったですね。もともと写真学科出身だし」

新内 「それを一から」

本田 「そうそう。練習して、いろいろな人に教えてもらって描き始めたんです」

新内 「絵を描き始めたのが38歳というのは、すごいですね。そして、2021年8月には『ムズカシそうなSDGsのことがひと目でやさしくわかる本』(小学館)を出版。これはどういった内容の本なのでしょうか」

本田 「ずっと環境問題について30年間くらい描いていたけど、環境問題だけでは地球の問題をアピールしていることにならないなということを思ったんです。ちょうどそのとき、SDGsという言葉がいろいろなところで出てきた。ただ、SDGsについて語っている人はいるんだけど、どれもこれも難しすぎて、それを何とか、もうちょっと優しく、正しく、みんなに分かるように僕の方で漫画にしてみようと思ったんですね。SDGsを読んでみると、17のテーマというのはアイコンもあって楽しそうなんだけど、その中に入っている169のターゲットってほとんどの人が知らない。そのターゲットについて漫画にしてみたらどうかな、ということで始めたんです」

新内 「難しい単語や文字数の多さから感じる伝わりづらさをイラストにしたのが、本田さんのアプローチだった、と。結構、反応はあったのでしょうか」

本田 「SDGs展を最初、伊藤忠青山アートスクエアというところでやったんですけど、そのときに小学生とかがたくさん来てくれて、すごくよく分かったと言ってもらえた。あとは学校の先生とかがジーッと見ていて『自分はSDGsの授業をやっているんだけど、うまく言えなくて困っていた。これは分かりやすいので、これを使わせてもらっていいでしょうか』という先生も何人かいました。もう一つは、それを見に来た高校生が、学校で直訴したんです。『こういうのをやっている、これはうちの学校でもやった方がいい』と。それから2、3日後に校長先生、教頭先生ら何人かで見に来て『講演をしてください』と頼まれたっていうこともありました。生徒さんが持って行った話というのは嬉しかったですね」

新内 「校長先生たちもすごくないですか。生徒さんに直訴されて、行ってみようとなったってことですもんね。それで、実際に講演には行かれたんですか」

本田 「はい、授業をやりました」

新内 「わあ、すごい! 分かりやすいから学生さんたちも行動を起こしやすいということですかね」

本田 「それもそうだけど、それ以前にSDGsってどんなことが書いてあって、どういうメッセージなのかが分かりましたっていう声が多かった。分かるとそれをきっかけにして動こうという気持ちが起きてきますよね」

新内 「確かに。そして、SDGsについて楽しく学べる『本田亮 ユーモアイラスト展』など個展もやられているとか」

本田 「普通の個展というとアート作品を展示して、それを売ったりするものですが、僕のはメッセージなので、プリントされているものもあって、同時多発的に東京と大阪でやっていることもある。3年くらい前に伊藤忠青山アートスクエアで最初の個展をやってから、15回くらいやっているんじゃないかな」

新内 「その『ユーモアイラスト展』には、どのようなイラストが展示されているのでしょう」

本田 「ターゲットについて説明してあるので、17の目標全て、ターゲットそれぞれ3つくらいずつ選んでいるから、50作品くらいあります」

新内 「どのような方がいらっしゃるんですか」

本田 「企業の方に始まって、子供までさまざまですね」

心を掴むのはユーモア

新内 「私自身も、この『SDGs MAGAZINE』をはじめ、さまざまな場面でSDGsにまつわることを話す機会が増えてきているのですが、その際にどのくらいの人に伝わっているのかが気になっていて、こうしたことに興味がない人にどうしたら伝わるのかなと思っています。そういうことを考えることって、ありますか」

本田 「もともと僕は、環境問題を始めた時もそうだったんだけど、世の中の15%の人っていうのはものすごく意識が高くて、15%の人っていうのは全く意識が低く、その30%は動かないと思っているんですね。意識がない人はずっとないままだし、高い人はずっと高いまま。だけど、真ん中に70%の人がいる。この70%の人はうまく話せば興味を持ってくれたり、行動を起こしてくれたりする人だと思うので、そういう人たちに対して僕はメッセージを送るのが、一番いいかなと思っているんです。それが世の中の大多数だと思うのでね。そういう人たちに対して伝えるためには、難しい話を楽しくしなきゃ駄目です。最大の武器はユーモア。ユーモアっていうのは人の心を動かすんです。ユーモアでプッと笑ったら、その人はこっちの味方になったのと同じ。ユーモアっていうのは、すごくコミュニケーションには重要かなと思います」

新内 「もともとCMプランナーをやられていて、やはり人の心を掴むものをすごく研究されてきたと思うんです、仕事柄。それを突き詰めた結果がユーモアだったということですか」

本田 「そうですね。CMというのはちょっと難しかったり、堅かったり、説明しづらかったりする商品を15秒の中で伝えるんです。15秒の中で一番有効なメッセージというのは、その中でいかに楽しく、強くインパクトを持って人の心に届かせるかということだと思うので、そのCMの中で伝えようとしている商品を環境問題に変えちゃったんです。僕はいわゆる漫画家の中でもちょっと変わっていて、難しいテーマをやさしく伝えるのが好き。難しいものを人の心に届かせるという漫画を書いています」

新内 「どうしましょう。私『SDGs MAGAZINE』に、もっとユーモアを取り入れなきゃいけないなと今、すごく思いました」

さらに、本田さんは、たくさんの要素があるSDGsを伝える上で、重要なポイントは「全部を伝えようと思っても伝わらない」と認識することだと強調する。

本田 「一番大事なメッセージ、芯になるものを選んで伝える、一番強いものと弱いもののバランスを取る必要がありますよね。僕の漫画展には、アートを見にくる人もいる。ユーモアを見にくる人もいる。SDGsを勉強しにくる人もいるわけです。でも、SDGs一色だったら、(SDGsに興味がない人は)見に来ないですよね。いくら『SDGsを伝える』と言っても」

新内 「ユーモアやアートを見に来ている人は、SDGsを見に来ているわけではないということですからね」

本田 「それが、気づいたら勉強してしまっているわけですよ。アートを見に来たらSDGsを勉強しちゃった、みたいな」

新内 「確かに私も個展とかに行かせてもらうことがありますが、自分でチケットとを取って行ったものって、その後にいろいろと調べちゃいますもん。もっと深く知りたいと思うきっかけになりますよね」

本田 「うん、そうですね」

新内 「逆に、SDGsに対するアレルギーが強い人もいると思うんです。大切なことやきれいごとほど、“意識高い”と言って何か避ける人とかいると思うんですよ。これまでの常識や習慣を変えることに対して抵抗が強い人も多いと思います。その点については、どう思いますか」

本田 「やっぱり、頭で考えて、頭で正論を言うと反発されると思うんです。みんなの気持ちと同じように当たらないといけない。この環境問題とかSDGsというのは、偉そうに語ったら駄目だね」

新内 「やっぱりユーモアが大事ということですね」

本田 「そう、ユーモアで最後みんなと同じ気持ちでソフトランディングするように語るとかね」

新内 「やっぱり伝え方は大事になってくるんだなと思いました」

本田 「SDGsって語る人がたくさんいるんです。企業の講習とかをやっている方も、ものすごくたくさんいる。ただ、ものすごくテーブルの上で勉強して、そこから語っている人がほとんどだと思うので、僕の場合はテーブルの上で語らないというか、語るところは体験で語るというか、体験をベースにして地球の上で語るぐらいの気持ちでいくようにしています。こういうふうに見てきて、こんなことがあって、そこでこう感じて、それでSDGsがあるんです、という流れにしようと心がけています」

新内  「本当に、体験をしなきゃいけないなと思いますし、ユーモアもすごく大事なんだなと思いました」

大事なのは「話す、繋げる」

そして、番組の最後には恒例の質問。「今私達にできること=未来への提言」を本田さんに聞いた。

本田 「未来への提言というと、僕はやっぱり『話す』ということが重要かなと思います」

新内 「話す?」

本田 「はい、『話す、繋げる』というのが重要だと思っていて、先ほどの高校生の話もそうなんだけど、彼女は先生に『こんなものがある』と話したんですよね。『絶対にこれ、やった方がいいですよ』と。SDGsって自分が感じたことを自分の友達だとか家族だとかにどんどん話して、そういう連鎖反応を大きくしていって世の中の意識が変わると、当然ながら政治が変わってきて、政治が変わるとシステムが変わって、未来が変わるという流れになるのかなと。一番シンプルなんだけど、話して繋げていくということが重要なんじゃないかと思います」

新内 「ありがとうございました」

本田 「この番組もそうだよね」

新内 「そうですね」

本田 「話し方をうまくやればいいと思います」

新内 「わあー、研究します!」

最後に本田さんから、難易度の高い“宿題”を出され「今日の本田さんのお話を聞かせていただいて、ちょっと私も改めなきゃいけない部分もありますね」と新内さん。「1年番組をやってきて、もちろん大切なことを伝えるためにいろいろな角度から伝えているつもりではあるんですけど、どこか堅苦しくなってしまう場面もあったなと思います。ユーモアって世界を救うじゃないですけど、すごく大事なんだなと思わせてくれたので、来週からまた楽しくやっていこうかなと思います」と、楽しく、分かりやすくSDGsを学ぶことの重要性を改めて感じた放送回となった。