東京2020オリンピック・パラリンピックの開催前後を比較し、日本財団が「ダイバーシティ&インクルージョンに関する意識調査」を実施!
この記事に該当する目標
ダイバーシティ&インクルージョン。SDGsの17個の目標にも掲げられており、2016年頃から耳にすることが多くなったこの言葉。ですが、みなさんはこの言葉の意味を正しく理解できているでしょうか。
ダイバーシティ&インクルージョンとは、ダイバーシティ(多様性)を尊重し、異なる価値観や能力をインクルージョンする(抱合する・活かし合う)ことで、イノベーションや新たな価値創造につなげ、一人ひとりが活躍でき、居場所を見つけられる社会をめざす取り組みのことを示します。
このダイバーシティ&インクルージョン(以下、D&I)に着目した日本財団は、東京2020オリンピック・パラリンピック開催前後(2019年と2021年)におけるD&Iの認知度や理解度、および社会的マイノリティに対する意識の変化を明らかにするため、10代から60代の男女、5,216人を対象に調査を行いました。日本財団では2019年にも、「True Colors Festival 超ダイバーシティ芸術祭(※)」の開催にあたり、同様のダイバーシティ&インクルージョンの認知度や理解度に関する意識調査を実施していました。
オリンピック・パラリンピックを終えた今、2年前と現在を比較し、人々のD&Iに関する意識はどう変わったのかを調べるため、大々的な調査を実施。結果、社会全体としては社会的マイノリティへの偏見・差別は減少傾向にあるものの、年代や地域差が生じていることが明らかになりました。その他の傾向も明らかになったため、一つずつ見ていきましょう。
※TCFは、パフォーミングアートを共に創ったり観たりすることを通じて、障害・国籍・性別・言語などを越えて、人々が理解し合えるようになることを目指した日本財団が主催する、長期にわたるアートイベントです。これまでダンス、演劇、サーカス、オンライン映画祭などを行ってきており、来年からは、地方でイベントキャラバンと、東京での音楽コンサートも予定されています。
【調査により明らかとなった7つの傾向】
日本の社会全体における社会的マイノリティへの偏見・差別の変化
1.「日本社会には社会的マイノリティへの偏見や差別がある」は、東京2020大会前より10ポイント減少
▼日本社会における社会的マイノリティに対しての差別や偏見の有無
2.「LGBTQの人」「身体障害のある人」「精神障害・発達障害・知的障害のある人」への偏見・差別があると回答した割合は東京2020大会前より減少、一方で「日本で暮らす外国籍の人」「見た目が日本人に見えない人」「高齢者」に対しては大きな変化なし
▼社会的マイノリティの対象別、日本社会における社会的マイノリティに対しての差別や偏見の有無
日本社会において、社会的マイノリティに対する偏見や差別があると考える人は、東京2020大会前より減少傾向にあるものの、一部の社会的マイノリティへの偏見や差別については、大会前後で数値に大きな変化はないという現状が読み取れます。パラリンピックによって障害を抱えている人たちに触れる機会が増えたこと、LGBTQの認知度が高まったことにより、このような個々のマイノリティへの差が生じたのかもしれません。
個人のD&Iへの理解度および社会的マイノリティへの偏見・差別の変化
3.D&Iの意味や定義の認知は、東京2020大会前より9.5ポイント増加。2年間で約3割から約4割へ
▼ダイバーシティ/ダイバーシティ&インクルージョンに対する認知
4.「自分自身には、社会的マイノリティへの偏見や差別がある」は、東京2020大会前より5.1ポイント減少
▼自分自身の、社会的マイノリティに対しての差別や偏見の有無
個人のD&Iへの理解は、東京2020大会前と比較して増加。さらに個人の社会的マイノリティへの偏見や差別も、全体として減少していることが明らかに。
年代/地域ごとのD&Iへの意識差
5.「D&Iへの意識高まった」は、10代の約6割に対し、50代では約3割に留まる
▼この2~3年における、自分自身のD&Iへの理解や支持の変化
6.D&Iへの意識が高まったきっかけは、「パラリンピック」が最多。10代では「人種差別問題」、「SDGs」
東京2020オリンピック・パラリンピック大会前後でのD&Iへの意識の高まりは、10代、20代の若い年代で、より高い割合となっていました。D&Iへの意識が高まったきっかけは、全体では「パラリンピック」が最多の結果に。パラリンピックを通じて障害を抱えている人たちの活躍や発信するメッセージに触れることで、生活者のD&Iへの意識が変化したと考えられます。年代別に見ると、意識が高まったきっかけとして「パラリンピック」および「オリンピック」を挙げた回答は、年代が上がるごとに割合も増加傾向にあります。一方で、10代では「人種差別問題」と「SDGs」がより高い割合となっていました。年代別の結果の違いは、日常的に視聴しているメディアや関心の対象、学校教育などの影響があると考えられ、若い世代ではその影響が強く、D&Iへの意識の変化につながったと考えられるそう。D&Iへの理解や推進には、幅広い世代に届く情報やメッセージの発信が必要であるのかもしれません。
7.D&Iの理解や支持は、関東地方で高く、北海道、四国地方で低い傾向
▼エリア別、ダイバーシティ/ダイバーシティ&インクルージョンに対する理解
▼エリア別、ダイバーシティ/ダイバーシティ&インクルージョンに対する支持
(「社会をあげてダイバーシティ&インクルージョンを推進するべきだと感じる」に「あてはまる」かどうかを質問
関東地方では、マスメディアや広告等から東京2020オリンピック・パラリンピックやSDGs等に関する情報を得る機会が多く、高いD&Iへの関心に繋がっています。また、首都圏を中心に企業の本社機能が多いことが、企業のSDGsへの取り組みについての認知度の高さに関連しいるだとか。社会全体でD&Iの理解促進を図るうえでは、地域によって情報に触れる機会に差がないよう、全国的な取り組みが必要であると言えます。
調査結果によると、東京2020大会前と比較して、日本の社会全体における社会的マイノリティへの偏見・差別の減少や、個人におけるD&Iへの理解が進んでいることが明らかになりました。今回、パラリンピックがD&Iへの理解や支持に大きな役割を果たしたことが判明した一方で、年代や地域による差も見られました。今後、社会全体でD&Iへの周知・理解を進め、社会的マイノリティへの偏見・差別の意識を取り払うために、年代や地域の異なる人を巻き込んだ、より長期的な取り組みが必要になってくるのかも知れません。