【体験レポート】障がい者や外出困難者と社会を繋ぐ「分身ロボットカフェ」
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昨年から長期化している新型コロナウイルスの流行。自由に出掛けることも、会いたい人に会って会話をすることも叶わない状況のなかで、深い孤独を感じた人も多いのではないでしょうか。
ライフスタイルの変化によって、様々な分野でのオンライン化やリモートワークの定着が進み、移動をしなくても働くことの出来る環境が整ってきましたが、これまでは「動けないけれど働きたい」という意欲を持ちながらも、なかなか活躍の場を見つけられない人たちの存在がありました。
「人類の孤独の解消」をミッションとするオリィ研究所は、難病や障がいなどで外出困難な人たちが働き、社会と繋がることのできる「分身ロボットカフェ」を運営しています。
先日、今年6月に常設実験店として日本橋エリアにオープンした「分身ロボットカフェDAWN ver.β」」に行ってきましたので、その様子をお伝えします。
「分身ロボットカフェDAWN ver.β」」には、「OriHime Diner」、「BAR & Tele-Barista」、「CAFE Lounge」の3つのエリアがあります。今回は「パイロット」と呼ばれるスタッフが「OriHime」「OriHime-D」を遠隔操作して接客をしてくれる「OriHime Diner」を利用しました。現在60名ほどのパイロットが在籍し、難病を患う人や身体が不自由な人のほか、家族の介護をしている人などさまざまな理由で外出することが難しい人たちが働いています。
入店後、席に着くと「こんにちは、今日は初めての来店ですか?」とOriHimeが声を掛けてくれ、タブレットを使用しながらメニューを案内してくれました。各テーブルには、一台ずつOriHImeが置かれていて、OriHimeを遠隔操作するパイロットと会話をしながら食事を楽しむことが出来ます。
タブレットにはパイロットのプロフィールが表示されているので、会話のきっかけにも繋がります。
取材当日、接客を担当してくれたパイロットは福岡県在住のりょーさん。2回目の実験店舗から分身ロボットカフェに参加していて、現在は週に4~5日ほど予定や体調に合わせて勤務しているそう。この日はテーブルでの接客にあたっていましたが、ドリンクを席までサーブするOriHime-Dの操作を担当する日もあるといいます。
手をパタパタと動かしたり首を振ったり細やかな動作を行うOriHimeを通して会話をしていると、まるでパイロットと一緒にお茶を楽しんでいるような感覚になります。
お喋りに夢中になっているとOriHime-Dがテーブルに到着し、「ドリンクをお持ちしました」と声を掛けてくれました。
フロアでは各テーブルへと移動する「OriHime-D」の姿が見られます。
フードはホールスタッフの方が運んでくれました。
この日は看板メニューの「ロービーバーガー」 ¥2,500(税込)をオーダーしましたが、全5種、キッズメニュー2種の本格的なメニューが用意されています。
食事中もずっとOriHImeがお喋りに付き合ってくれるので、一人のランチタイムも寂しくなさそうです。
先天性ミオパチーという筋肉の病気を患うりょーさんは、分身ロボットカフェでの仕事以外に病気の治療法確立や理解促進に向けた活動もされているのだといいます。「分身ロボットとの会話を楽しみながら、多くの人があまり聞き慣れないであろう病気を知ってもらう機会にも繋がったらいいなと思います」と話してくれました。
会話を楽しんでいると、あっという間に終了時間が来てしまいました。
ロボットを介してのコミュニケーションは、心の距離やタイムラグなどであまりスムーズにいかないのではと思っていたのですが、想像していたよりも違和感がなく、コロナ渦で当たり前になったオンライン会議ともまた違う、人の存在や繋がりを感じることが出来ました。
SDGsの目標では、目標8「働きがいも経済成長も」ターゲット8.05「すべての人に、働く喜びと正当な対価を」、目標10「人や国の不平等をなくそう」ターゲット10.02「すべての国で、すべての人に、政治・経済・社会に参画する力を」などで、誰もが社会と繋がることができ、労働意欲のある人たちが働きがいのある仕事に就くことができる社会の実現が掲げられています。
今自由に動くことが出来ている私たちにも、病気や環境の変化によってこれまでのように働くことが難しくなる日が来るかも知れません。誰もがそのような状況に置かれても、社会と繋がることを諦めずにいられる未来があるといいなと思います。
時間入れ替え制の「OriHime Diner」は予約利用がおすすめですが、併設する「CAFE Lounge」は当日でも気軽に利用できます。
カフェ席からも、「OriHime Diner」の利用客が楽しそうにOriHimeと交流をしている様子も見ることが出来るので、ぜひ最新のテクノロジーとサステナブルな未来に繋がる新しい働き方を覗いてみてはいかがでしょうか。