SDGs目標1「貧困をなくそう」とは?解決すべき課題や現状
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SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略で「持続可能な開発目標」を意味します。SDGsには17の大きな目標と169のターゲットがあるのが特徴です。その中で「貧困をなくそう」は17の目標の1番目に掲げられています。貧困は世界の様々な地域で起こっているため、個人の意識や取り組みだけではなく国規模でインフラを整えることが必要です。貧困をなくそうというSDGsの目標の概要と貧困問題について解説します。
SDGs目標1の現状と課題について
SDGsの1番目の目標である「貧困をなくそう」は、貧しい人をなくすために掲げられた目標です。貧困とは単純にお金がないというだけではありません。貧困のために食べるものに不自由し、それにより健康を保つことができなかったり、十分な教育を受けることができなかったりすることを意味します。
具体的に目指すポイントは二つあり、一つは極度の貧困生活を送っている人を世界のあらゆる場所からなくすことです。生活必需品を購入するだけの収入を持っているかの指標を国際貧困ライン、または貧困線といいます。二つ目はこの貧困ラインによる貧困層を半減させることです。
①世界の貧困率と貧困層の数
2015年世界銀行のデータによると国際貧困ラインにおける極度な貧困層は約7億3,600万人とされています。貧困は可視化しにくい問題でもあるため、目標を「2030年までに1日1.25ドル未満で生活する人をなくす」とし、分かりやすく数値化し課題として取り組んでいます。
世界には1日1.25ドル未満で生活する人が8億人以上いるとされているのが現状で、貧困率でいうと、世界の6人に1人、約3億5600万人の子供たちが極度の貧困状態とされています。極度の貧困をなくすためには社会保護と貧困支援を国レベルで行うことが重要で貧困には世界情勢や地球温暖化なども影響します。
この目標ができたときは、極度に貧しい暮らしをしている人の国際的な基準は、1日1.25ドル未満で生活していることでしたが、2015年からはこの基準が一日1.9ドルになっています。
②貧困の原因
男女差別などの社会的問題もあり、すべての人から貧困をなくすという目標に対して平等に救えていないのが現状です。貧困の主な理由としては、政治や経済の影響などがあります。特に南アフリカは植民地の歴史があり、人種隔離政策や奴隷制度による影響が根強く残っているのが特徴です。この影響で経済の発展も遅れが見えています。
その他にも戦争や紛争も貧困の理由の一つです。紛争によって住む場所や職を失い難民となる人たちも少なくありません。紛争は国の経済へも大きなダメージを与えるため貧困を生み出しやすい環境になってしまいます。また、大きな災害も貧困の引き金です。
干ばつや地震などの自然災害によって農作物が被害にあうことで貧困に陥る人が増えてしまいます。社会保護として様々な団体が行っている取り組みには、貧困によって十分な食事がとれない人には食べ物を支給したり、自分たちで食べ物を生産できるように農業のレクチャーをしたりなどがあります。ただ食べ物を支給するだけではなく、将来的な自給自足を目指して農作物の育て方を教えるのも取り組みの一つです。貧困で医療を受けられない人が多数いる地域には、医療スタッフが直接現地で治療にあたることもあります。貧困は健康に影響するだけではなく、教育の場にも大きな影響を与えるのが大きな問題です。
③教育などの社会保護
貧困下では生活を維持することや生きていくことが優先されるため教育は後回しになってしまいます。子供たちが学べる場がないと、読み書きができなかったり、簡単な計算もできなかったりする子供が増えてしまいます。また学習によって正しい知識を身につけることができないままでいると、大人になり就職しても安定した収入を得ることが困難です。安定した仕事を得られないため貧困から抜け出せないというケースが多くなってしまいます。このような状況を解決するためにも世界中の子供たちへの教育は必要です。教育の場を作るためには、教育の重要性への理解を深めなくてはいけません。
そのため貧困地域の人々に、どうして教育が必要なのか教える取り組みを実施している団体もあります。学校などの施設を建てるだけではなく、現地の人々の意識や考え方にもアプローチが必要なのです。また、子供たちが安心して教育を受けることができるように現地での環境を整えることも求められます。このように貧困問題は、単純に金銭的、経済的な問題だけにはとどまりません。食糧問題や差別問題、教育問題など様々な要素が複雑に絡まり関係しあっているのが特徴です。貧困によって多くの問題が発生しているため、貧困を解決することで多くの問題が解決できると考えられています。
そのためSDGsでも1番目に「貧困をなくそう」という目標が掲げられており、世界的な問題である貧困には、国や支援団体などが様々な形で協力し合い取り組んでいます。
SDGs目標1達成に向けて私たちができること
国や多くの団体が世界の貧困問題を解決しようと様々な取り組みを行っていますが、私たちは貧困をなくすために、どのようなことができるのでしょうか。個人的には大きな支援ができなくても、身近なことから取り組むことが可能だと考えます。
①フェアトレード商品の購入
簡単にできることの一つとして、フェアトレード商品を購入するという方法があり、貧困をなくすための取り組みとして注目を集めています。
発展途上国では、自国で作られた製品や農作物などが適正価格で貿易されないケースが多く課題となっていますが、フェアトレードとは「Fair Trade 」(公平貿易)という意味で、適正な価格での取引を目指すものです。
公平な貿易が行われない場合、発展途上国の生産者にしわ寄せがきてしまいます。安い賃金で働くため、生活を安定させることができません。さらに問題視されているのが、発展途上国の生産者の中に子供も多く含まれていることです。貧しいため、子供であっても労働にかり出されてしまいます。そうすることで子供は労働に時間を奪われ、教育の機会を失ってしまうのが大きな問題です。これらの問題を解決するためには継続的で公平な取引が必要とされています。フェアトレードによって立場の弱い生産者を支援することが狙いです。フェアトレード認証マークの付いた商品は徐々に広がりを見せており、それらを購入することで、簡単にフェアトレードに参加・支援することができます。商品選びの参考にしてみてはいかがでしょうか。
②食糧支援団体の支援
次に、食料支援を行っている団体に寄付をする方法です。実は、豊かで貧困の少ない国だと思われている日本でも貧困や相対的貧困(※)に苦しんでいる人は多く、日本の人口の6人に1人が相対的貧困であると調査データでも示されています(厚生労働省の「2018年度国民生活基礎調査」より)。これは先進国35カ国中7番目に高い数値です。日本にも食料支援を行う団体があり、寄付や食品の寄贈などを行うことができます。
食品の寄贈などを行う際には受け入れ可能な食品が細かく決まっているので、団体ごとのルールを確認することが必要です。そして、子供の食事を支援する「子ども食堂」の活動も全国で展開されています。
※相対的貧困とは国や地域における生活レベルとは関係なしに、衣食住といった必要最低限の生活水準が満たされていないこと。
子ども食堂とは貧困家庭の子供に無料、もしくは安い料金で食事を提供する取り組みで、自治体や地域の住民が主体となって運営しています。家族の帰宅が遅く一人で食事をする子供やレトルト食品ばかり食べている子供、経済的理由で十分な食事をとることができない子供のためにスタートしました。そして、子ども食堂は子供が食事をする場所以外にも役割を持っています。手作りの温かい食事を食べることは子供の心の安定を保つことにもつながり、栄養バランスの取れた食事は成長期の子供の発育にも欠かせません。
また、子ども食堂は地域のコミュニティの場所でもあり、アットホームな雰囲気や地域の人たちとのつながりを感じられるのもメリットです。食堂を利用する子供同士が仲良くなったり、親同士が交流したりすることもできます。子ども食堂を利用することで子供が不安や孤独を感じることを減少させることが可能です。心と体の成長の両方をケアサポートできるため、子ども食堂の必要性は高まっていくと考えられています。しかし、子供に無料や低価格で食事を提供する子ども食堂の中には、スタッフや運営費の確保に苦しんでいるところも多くあります。それらを支援するため、SDGsの取り組みとして子ども食堂への寄付活動も広がっています。
誰にでも始められるSDGsへの取り組み
SDGsの取り組みと聞くと難しく考えがちですが、小さなことからでも始めることができます。募金箱を見かけたら少額でも寄付すればよいのです。無理に多額の寄付を行う必要はありません。商品を選ぶ際にフェアトレード認証ラベルの商品があったら、なるべくそれを購入することでフェアトレードの活動を支援していることになります。まずはSDGsを知り、意識することが大切です。