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レギュラー番組にリニューアルした『SDGs MAGAZINE』新内眞衣と学ぶ「ウェディングケーキモデル」視点からのSDGs②社会圏&経済圏


この記事に該当する目標
8 働きがいも経済成長も 9 産業と技術革新の基盤をつくろう 10 人や国の不平等をなくそう 12 つくる責任つかう責任
レギュラー番組にリニューアルした『SDGs MAGAZINE』新内眞衣と学ぶ「ウェディングケーキモデル」視点からのSDGs②社会圏&経済圏

新内眞衣さんがパーソナリティを務めるSDGsを楽しく、分かりやすく学べるニッポン放送のラジオ番組『SDGs MAGAZINE』は10月から毎週日曜午後2時10分~30分の週一放送へとリニューアル。その第2回、10月16日の放送では前回に続いて「SDGsウェディングケーキモデル」を基に、改めてSDGsの基本を学ぶ内容となった。今回は生活圏の上にある社会圏と経済圏の問題を、日本における SDGs 研究の第一人者で「ミスターSDGs」こと慶応義塾大学大学院の蟹江憲史教授に解説してもらった。

「ウェディングケーキモデル」における社会圏の問題

蟹江教授にSDGsの概念が分かる「ウェディングケーキモデル」の成り立ちなどを聞いた前回の放送。新内さんは、SDGsが定める17の目標を3段のウェディングケーキに見立て、一番下の大元にあるのが環境、その上に社会があり、そのさらに上に経済があって、それをパートナーシップで縦に結ぶという構図について学んだ。今回は「ウェディングケーキモデル」における「生活圏」の話題に続き、その上に位置する「社会圏」「経済圏」を深掘りする。

新内 「今回はまず『社会圏』についてピックアップしていきたいのですが、今この『社会圏』において、具体的にどういった課題があるのでしょうか」

蟹江 「そうですね。『社会圏』というとちょっと難しく感じるかもしれないですけど、要するに“人と人との関係”なんですよね。貧困の問題も、誰かがリッチになって、誰かが苦労する。そういう格差が生まれるのも、人と人との関係で出てくる話ですよね。飢餓の問題も同じ。健康の問題も、パンデミックがいい例ですけど、人から人へ移っていくものです。誰かがつくった食べ物を食べる中で病気になったり、健康になったりもしていく。そういうことを含めて、“人と人との関係”が関わってくるのがこの問題です。
より分かりやすいものを挙げるなら、教育の問題だったり、ジェンダーの問題だったりもあります。もう少し大きい話なら街づくりですね。街で暮らしていくためにはエネルギーも必要。みんなが豊かに暮らしていくためには、何と言っても平和でないといけない。持続可能ではなくなる一番極端なものが暴力ですよね。そうした課題、“人と人との関係”が含まれているものが『社会圏』の問題だということです」

新内 「正直、範囲が広すぎて何から学んでいけばいいんだろうと思ってしまいます。全てが繋がっているのは何となく分かるのですが、より深く掘っていく上で何から手を付けていけばいいのか、分からなくなります。この番組を初めて聞いていらっしゃる方も多分いるので、そんな中で、分かりやすい例えになるようなものはありますか」

蟹江 「それは、いろいろあります。今、ウクライナとロシアの間で起こっている戦争も例えになります。また、日本の場合、一番遅れているのがジェンダーの問題です。女性の社会進出が遅れていて、政治家を見ても内閣の写真を見ても『女性はどこにいるの?』というくらいですよね。会社の役員とかをホームページで調べてみても、本当はジェンダー平等を考えると半々で当然なのに、そうではない。日本の歴代の首相も男ばかり。女性は日本に人口の半分くらいいるはずなのに、何ででしょうね。そうした、生活をしていく上で違和感を覚えたり、これって本来こうじゃないはずじゃないと感じたりすることが、この『社会圏』の問題になってきます」

新内 「女性の社会進出は、なぜ重要なのですか」

蟹江 「女性が働けないという状況になると、その分の労働力がもったいないですよね。本当は働いて活躍して、いろいろな良いものを生み出せるのに、それが埋もれているのは非常にもったいない。社会の活力を損なっていくという話になるんじゃないかなと思います」

“希望の星”は教育

新内 「教育の面では、どういった課題がありますか」

蟹江 「教育の現場は、パンデミックを経て実はオンライン教育とかがすごく進んだんです。ウクライナで戦争がありますけど、オンラインが発達してきたおかげでウクライナの子供たちにも教育を支援していくことができる。SDGs今の状況を見ていくと、温暖化は進んでいるし、飢餓も、貧困もあるし、パンデミックも、戦争もある。世界的に見ると悪いことばかりで、目標達成は難しいと思われていますが、この教育のところやインターネットへのアクセスについては進んでいるんです。そこは“希望の星”ですね。だけど、教育にしても、まだできていないところももちろんあって、みんなが授業を受けられるのだけれども、量だけでなく質を高めることが課題になってきています。1クラス5人の教室より1クラス100人の教室では、先生がこっちを見てくれているのかなって不安になりますよね」

新内 「分からないところがあっても手を挙げづらかったりする」

蟹江 「そうですね。あるいは、みんなが手を挙げすぎると、先生もどうしたらいいか分からなくなっちゃうみたいなことがある」

新内 「なるほど」

蟹江 「日本は、教育は割とSDGsの中で成績が良いんです。もちろん、まだ課題もありますが、いいところをどんどん伸ばしていく必要もあるんじゃないかと思います」

新内 「ニュースなどでは、タブレットを支給している学校があったり、大学とかでもオンライン授業をやっているところがあったりするのを見ます。慶應義塾大学はオンライン化が進んでいるんですか」

蟹江 「そうですね。うちの大学、特にうちのキャンパスは割とすぐにオンラインを導入しました。インターネットを日本で始めた村井純さんという方がうちにいることもあって、どんどんやろうと進めているのですが、一方でやっぱり対面も必要じゃないですか。授業って、授業を受けるだけが大事なわけではなく、終わった後の雑談とか、終わった後に質問しにいったりとか、そういうところで人と人の触れ合いもあったりする。対面とオンラインをミックスしていくのが大事じゃないかなと思います」

経済圏を変える“消費者の行動”

新内 「その社会の上に来る経済の問題もお伺いしたいのですが」

蟹江 「これが、実は一番問題なんですよね。経済はGDPでいうと増えており、一見うまくいっているように思えますが・・・」
新内 「日本は今GDP3位ですか」

蟹江 「そうです。世界3位ですね。為替レートが悪くなったりしていて、これからどうなるか分からないところもありますけど、一応3位だと。ただ、経済活動の結果、環境に負荷が及ぼされてしまったりだとか、例えばペットボトルをいっぱいつくっていて、そこで収入が増えて、売り上げが増えて、経済的には良かったと思うかもしれないけども、実はそれが使い捨てされて温暖化の原因になったりだとか、そういう問題が生まれてしまっている。経済を変えるというところに、この社会と環境の発想を入れ込まなければいけないというのが今の課題ですね」

新内 「『経済圏』を変えるのは難しいのですか」

蟹江 「難しいと思います。なので、すごく会社の中でもパラダイムを変えていったりだとか、価値観を変えていったりだとかがすごく大事になります。そして、大事なのは会社の価値観を変えるためには消費者の価値観が変わっていくと、それに引きずられて会社も変わるということ。この番組を聞いてくださっている方が、今までエコじゃないものを買っていたとしたら、エコなものを買おうと思うことによって、会社の行動も変えていけるんです」

新内 「私たち消費者も、ちゃんと知らないといけない。私も、こういう番組をやっているからこそ広めていかないといけないなと思いますね」

蟹江 「ぜひぜひ。だから、消費者が賢くなって、ちょっと高いかもしれないけどリサイクルされたものでできた商品を買うようにすると、リサイクルの仕組みもどんどん進んでいく。そういう人が増えていくと、仕組みが進み、そうしたリサイクルによってつくられた物が安くなっていくんです。むしろ最初からバージンなものでつくるよりも、リサイクルでつくったものの方が手に入れやすくなるという世の中が待っているわけです。消費者ができることはいっぱいある。それこそSNSとかでいろいろな人が繋がって、『ウェディングケーキモデル』の最後にあるパートナーシップを組んで、みんなが手を組んで、大きなうねりにしていくことができると、もっともっと動きが活性化されるということです」

新内 「私も、この番組をやっているからか、当たり前にエコバックを持っていて、当たり前にタンブラーを持っている人が周りに多いですね。友達と買い物に行って、エコバッグを忘れてしまったときも貸してくれたり、そういう人がたくさん増えると意識も変わっていくということですね」

蟹江 「今まで毎日、ビニール袋をもらっていた人が2日に1度にすれば、それだけで1人の人のレベルでは半減できているんです。2日に1回だけで、それってすごいですよね」

企業に問われるのは消費者の声を拾う姿勢

新内 「たまたま食品ロスについて調べていたら、1人当たり年間で40キロ以上のロスを出しているというのを見ました。それこそ『つかう責任』ですけど、それはもっと考えていかないといけないなと思います。一人暮らしをしていると、調味料とかも半分くらい残っているところで賞味期限が切れてしまっていることが結構あるので、そういうことも変えられたらなと思います」

蟹江 「もうちょっと小さいボトルがあったら、うまく使えるかもしれないとか思うじゃないですか。それは会社の側でやってもらう必要がある。消費者の声をしっかり会社が聞くことが重要になります」

消費者庁では、「消費者志向経営」をテーマに日本のSDGs達成の課題などが話し合われており、有識者検討会の委員に蟹江教授は名を連ねている。

蟹江 「そこで言っているのは、消費者の声を会社もしっかり聞きましょうということです。それって目標12の『つくる責任 つかう責任』にも関わってくるところなので、そういう意味でも大事ですねという話しをしているんです。そういった消費者の声、例えば『もう少し、小さいものがあるといいな』とか『小分けにしてくれるといいのにな』とか。そうした声を出して、それを聞いてもらうということが大事だと思います」

新内 「私は一人暮らしですが結構、料理をするんです。そういう立場からすると、調味料の量り売りがあるといいのにと思ったりしますね」

蟹江 「あっ! 大事な一言が出ましたね。それをどこかの会社がキャッチして、新内さんの新しいブランドをつくっちゃうとかね。どこかの調味料会社と一緒になって(笑)」

新内 「いつも申し訳なくなっちゃうんです。あー、もうこれ期限切れちゃったということがあったりするので」

蟹江 「そういうような声を出して、次のアクションに持っていくのが今、すごく大事なフェーズになっています。今まではSDGsを知るだけで良かったかもしれないけれど、もう折り返し地点なんです。2030年までに目標を達成するには、ここから加速していかなくてはいけない。そうすると、いろいろな行動を取らなければいけない。どんどんアイデアを取り込んで、企業の側もアクションを広げていくというフェーズに来ているんじゃないかなと思いますね」

新内 「すごく勉強になります。ふとした一言が、SDGsの達成につながっていったりもするのかなと思うので、いろいろなことに目を向けてこれからもSDGsの番組をやっていきたいなと思います」

■今の行動が未来を「ちょっといいもの」に

2回にわたってSDGsの概念を「ウェディングケーキモデル」を使って解説をしてもらった新内さんは、蟹江教授に「今、私たちにできること、未来への提言」を尋ねた。

蟹江 「できるアクションをやってほしいということですね。できるアクションって、個人によって違うと思います。個人といっても、個人が会社に繋がっている人もいるし、自治体とかの仕事に繋がっている人もいる。そうした、それぞれの環境で自分のできることをいろいろと探して、やっていってほしいと思います。そして、提言という意味では新内さんにはこの番組発の何か新しいサステナブルなモノづくりをしてもらえるといいなと思います」

新内 「仕組みづくりやモノづくりは楽しいと思うので、頑張りたいなと思います! きっとまた分からないことがあったらお話を伺うと思いますので、その際はまたぜひ遊びに来ていただけるとうれしいです。ありがとうございました」

蟹江 「ありがとうございました」

この2回の放送を通じて、新内さんは「すごく、たくさんのことを教えていただきました」と感謝。さらに、最大の驚き、発見だったというのが「消費者の行動を変えることで、物が手に入りやすくなったりとか、今より安い価格で手に入ったりとか、より良いものが手に入ったりとか、無駄をなくすことによってそうした循環が起こる」という点だったという。

達成に向けて生活に我慢や忍耐が必要と捉えられることもあるSDGsだが、長い目で見れば、その行動は恩恵として自らに返ってくるともいえる。「一人一人の行動が変われば、生活しやすくなる。こうした現状を伝えるだけでなく、行動することによって未来がちょっといいものになる。そんな希望も見えたので、すごくお話を伺えて良かったなと思います」。新内さんにとっても、今回の蟹江教授の“講義”は改めてSDGsに正面から向き合う良いきっかけになった様子だった。