SNS投稿でがん治療の研究支援!「deleteC」キャンペーンに見る現代の「広告」と「啓発」のあり方
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日本人の死因の第1位は何か知っていますか? 長年トップを譲らないのが、「がん(悪性新生物)」。昨年は、38万1,497人もの人ががんが死因で亡くなっています。がんは日本人の死因の26.5%を占めており、約3人に1人ががんで亡くなる計算になります。
身近な病気であり、誰もがかかる恐れのあるがん。そんながんに立ち向かうべく、近年ユニークなキャンペーンが実施されています。今回はその「deleteC(デリートC)」キャンペーンを紹介するとともに、広告と啓発のあり方を考えます。
がんは「治らない病気」?
かつては“治らない病気”という印象がありましたが、今ではがんの種類によって異なるものの、早期に発見されれば約9割は治るとも言われています。しかし発見が遅れたり、他の臓器や器官に広がって転移したり、再発したりと、がんで苦しむ人が絶えないのが事実です。
がんの治療が長引けば通常の生活が送れず、仕事や家族のことなどで悩まされます。看病する人の生活も変わってしまうでしょう。こういった現状は日本だけではなく、世界でも同じ。がんで長く苦しむ人を救うべく、世界中ではがんの撲滅を目指した研究が続けられています。
がんの治療研究を支援!「deleteC」キャンペーンとは
がんの治療研究は進められているものの、莫大な資金が必要。研究を支援するための取り組みは数多く存在しますが、今回は「deleteC(デリートC)」について取り上げます。
「deleteC」は、「誰もが参加できて、みんなでがんの治療研究を応援していける仕組み」を提案しているプロジェクトです。2022年9月22日に交付を受けた、認定NPO法人 deleteCが実施しており、その仕組みは次のような流れになっています。
①オリジナル商品・サービスを製作・販売・提供
キャンペーンの名のとおり、英語でがんを意味するCancerの頭文字・“C”を消したり「deleteC」のロゴを利用したりして、商品やサービスの製作、販売、提供が行われます。
②消費者が「deleteC」アイテムを購入
「deleteC」キャンペーンの商品やサービスを購入すると、その一部が「deleteC」に送られ、がん研究支援金の一部に。
③今もっとも応援すべき研究に寄付
「deleteC」プロジェクトで集められた支援金は、「deleteC」を通じてがんの研究者、研究機関に寄付。がんの研究を公募し、がん臨床試験の専門的知見を有する医師、「deleteC」のパートナー企業、医療リサーチチーム、がん経験者からなる「deleteC選考委員会」で選出されます。
deleteCは、9月3日~9月30日までの期間で、「#deleteC大作戦」をというキャンペーンを実施しました。消費者が「deleteC」対象商品のロゴの“C”を、好きな方法で消した写真や動画を投稿。例えば、サントリー食品インターナショナルの「C.C.レモン」、「デカビタC」、カルビー「Calbee」、コクヨ「キャンパスノート」のCampus、グラフィコ「オキシクリーン」、「スキンピース」、「フットメジ」といった商品の、“C”の文字をペンやアプリ加工で消した画像をアップします。期間中の投稿やいいねの数だけ、参加企業、団体から「deleteC」を通じてがん治療研究に寄付される(1投稿=100円、1いいね=10円)、という取り組みです。
昨年も実施された当キャンペーンですが、投稿数は昨年を上回り27,110件。リアクション数は982,124件という結果に。総額12,593,440円もの金額ががん治療研究に寄付されました。
全員にとってWin-Winな「広告」と「啓発」のあり方
「deleteC」には、サントリー食品インターナショナル、カルビーなど、多数の大企業が参加しています。さらに、多くのSNS投稿やリアクションもあり、大きな成果を出しています。なぜ、ここまで取り組みが盛り上がったのでしょうか。
①広告にもなる寄付活動
「deleteC」キャンペーンを通じて、消費者に商品名の「C」を消してSNS投稿を行ってもらうことで、商品の広告にもなります。企業によるシンプルな寄付活動と異なり、SNSでのPRにもなるのが企業にとっての魅力の1つでしょう。
②ブランドイメージの向上に繋がる
社会的に有意義な活動の支援が行えることもあり、ブランドイメージの向上に繋がるのも企業にとってもメリットです。
③消費者の参加しやすさ
ダイレクトに金銭を寄付する形はハードルが高く感じられやすいが、「商品を買い、ひと手間加えてSNSに投稿しよう」「その商品にリアクションをしよう」だと参加しやすくなります。またSNSの拡散力もあり、知人の投稿を通じて「deleteC」を知る人も多くいたはずです。
企業と消費者が対等な関係であり、参加ハードルが低いことが、「deleteC」の成功の秘訣だと考えられるのではないでしょうか。今は一方的な広告や啓蒙ではなく、“一緒に行う”というスタンスが、多くの企業や一般の人を巻き込めるカギなのかもしれません。
誰もが恐れる「がん」という病気。「deleteC」のような取り組みなら、気軽にがん治療研究の支援に参加できるのではないでしょうか。2022年の「deleteC」キャンペーンはすでに終了していますが、今後も定期的に実施していく予定とのこと。1月のイベントで発表されるがん研究や、来年の取り組みにも注目です。