それ、男性更年期かも?30代も危ない理由とは
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この記事の監修ドクター
ひだまりこころクリニック 医師 岡田夕子
専門分類:精神科(心療内科)、精神神経科、心療内科
更年期障害と聞くと、女性の病気というイメージがありますが、男性にも更年期障害があることをご存じでしょうか。最近では、朝の情報番組が取り上げたことで、男性更年期というキーワードがトレンド入りし、SNSでも話題となりました。「最近急に疲れるようになった」「なかなかやる気が出ない」と感じることはあっても、「まだ若いから大丈夫」「そのうち治る」「年齢のせいで疲れやすいだけだ」と楽観視している方もいらっしゃるかもしれません。ストレスは大なり小なり感じるものですし、風邪や怪我とは違い、目に見えた症状が出ないメンタルの不調は、まだ病院に行くほどでもないと受診するのを控えてしまいがちです。しかしここ数年、男性更年期で通院している人は増えています。
うつ病と更年期障害の違い
うつ病とは気分障害の一つで、精神的ストレスや身体的ストレスを背景に、感情や意欲をつかさどる脳に不調が生じた状態のことを言います。不眠や食欲不振などの身体症状、そして、ものの見方や考え方が否定的になるなどの精神症状がみられ、日常生活に大きな支障をきたします。辛い体験をした時だけでなく、嬉しい体験の後にも発症することもあり、発症の原因は正確には解明されていません。
一方、更年期障害とは、加齢により体内の性ホルモンのバランスが崩れることによって、精神的・身体的な不調が生じることです。男性の場合は男性ホルモンのテストステロン、女性の場合はエストロゲンの減少が原因となっています。うつ病と違い、原因がはっきりと分かっているため、問診と血液検査によって判断でき、適切な治療を受けることが可能です。
男性更年期の要因、テストステロンって何?
一般的に、テストステロンの分泌は20代でピークを迎え、次第に減少していきます。テストステロンには主に「筋肉や骨を強くする」「生殖機能を保つ」「認知力や認知機能を高める」という3つの役割があり、この値が高いと活動的になり、社会貢献への意欲や決断力が高まります。家庭や会社などのコミュニティの中で評価されたり、認められたりすることで分泌量が増えるので、社会性ホルモンとも呼ばれています。
【監修医師コメント】
男性にも更年期があるというのがわかったのは、非常に最近のことであると記憶しています。テストステロンは男性ホルモンとして有名ですが、これが年齢とともに減っていってしまうと、男性にも女性の更年期と似たような症状が出てしまいます。そのため、実はテストステロンというのは非常に大事なホルモンなのですね。この認識が一般社会には足りていないのかな、と考えています。この記事を通して、男性のテストステロンの働きが思った以上にあるということが知ってもらえればと思います。
逆にテストステロン値が低いと、性機能障害、認知機能・気分障害、筋力低下、脂肪の増加、貧血などの症状が現れ、女性の更年期障害同様に生活に大きな支障が出てきます。女性の場合は閉経と関連があり自己判断し易いですが、男性の場合は目安となる体の変化も特になく、発症年齢も様々であるため、あまり認知されていないのが現状です。更年期と聞くと50代くらいをイメージしますが、30代以降なら誰でも罹患する可能性はあります。
テストステロンが低くなる原因とは
先ほども述べた通り、テストステロン減少の主な原因は加齢ですが、最近では生活習慣やストレスが大きく関係していることが分かっています。例えば、運動不足による筋力の低下はテストステロン減少の一因です。また、一番大きな原因ともいわれているのが、社会との関わりにより生じるストレスです。自分を主張する場が無いことや、転職や昇進など職場環境の変化、また、退職による社会との関わりの減少など、自己肯定感や活力の低下はテストステロンの減少に大きく関わっています。国内では約600万人、40歳以上の6人に1人はテストステロンが減少しているといわれています。職場での立場や責任範囲が大きく変わった30代のうちから更年期障害になっていた、という方も少なくないようです。
テストステロンを増やす方法
放っておくと減少するテストステロンですが、自力で増やすことが可能です。様々な方法がありますが、今すぐにでも実践できる4つの方法をご紹介します。
1.適度な競い合い
2.運動
3.質の高い睡眠
4.ストレスを溜めない
フットサルやバスケットボール、ゴルフなど、仲間と競いながら楽しめるスポーツは1.2.4を同時に満たすことができ効果的ですし、階段の上り下りや少し早歩きをするなど、普段の生活をちょっと見直すだけでもテストステロンを増やすきっかけは生まれます。運動というと、筋力をあげるために糖質オフを意識して取り入れている人も多く見かけますが、糖質はテストステロンに必要な栄養です。また、男性ホルモンを増やす亜鉛やビタミンDサプリの摂取も良いですが、バランスの良い食生活を心がけるようにしたいものです。その他、睡眠の質を高めるためにもゆっくりと湯船に浸かることや寝る前のスマホを止めるなど、頭と心をリラックスさせるようにしましょう。
気を付けたいとは思っていても、忙しい毎日を送る中では簡単にできるようで意外とできないことかもしれませんね。
男性ホルモン補充療法という選択肢
病院では、症状が軽い場合は漢方やED治療薬、ビタミン剤の処方が行われますが、男性更年期と診断された場合はテストステロンを補う男性ホルモン補充治療が行われます。これまでは注射タイプが主流でしたが、最近ではより手軽な塗り薬による治療も注目されています。
2022年1月に処方可能になった「1UPフォーミュラ」
塗り薬はこれまでも存在していましたが、注射と比べるとテストステロンの含有率が低く緩やかな効果しか期待できませんでした。今年新たに処方可能になった1UPフォーミュラは質量あたり5%、1回あたり20mgのテストステロンを塗布することができます。従来の塗り薬は1%が主流でしたので、これまで塗り薬で効果が感じにくかった方からも期待の声があがっています。使い方はとても簡単で、太ももの内側などに1日1回塗るだけです。
注射の場合、複数回打つ必要があるため病院に行く回数も必然的に増え、男性ホルモンの急増による副作用も見られます。一方で、自宅で手軽に使用でき、副作用も少ない塗り薬は、通院の時間がとれない男性にとっても便利な治療法ではないでしょうか。塗り薬タイプはホルモン治療先進国のアメリカでは仕事のパフォーマンスを高めたい時や運動前などにも使用されています。日本でも、もっと身近になるかもしれませんね。
周りの気付きも重要。専門外来を受診しよう
なかなか気分も冴えない梅雨の季節。ちょっとした気持ちの落ち込みも、天気のせいにしたり、年齢のせいにしたりと、体調変化を見逃しやすい時期とも言えます。うつ病とは違い、明確な原因が分かっている更年期障害は、規則正しい生活で改善させることができます。そうは言っても、忙しい毎日を送っている方にはなかなか難しいことかもしれません。
病院で受診をし、医師に相談することで、自分にあった薬を選ぶことができ、塗り薬のような気軽にできる治療方法もあります。自分では見過ごしやすい病気なだけに、パートナーや家族など周りが早めに気付くことで早期発見・早期治療に繋げたいですね。
企画・編集/北井
ライター/黒川
監修/医師 岡田夕子(ひだまりこころクリニック)
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