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映画分野の大賞受賞者、約85%が男性「表現の現場」から考えるジェンダーギャップ

映画分野の大賞受賞者、約85%が男性「表現の現場」から考えるジェンダーギャップ

#TREND
  • ジェンダー平等を実現しよう
  • 働きがいも経済成長も

 3月10日に第46回日本アカデミー賞の授賞式が開催されました。映画『ある男』が最優秀作品賞を受賞。キャストでは最優秀助演女優賞に安藤サクラさんが選ばれました。多くの賞を受賞した『ある男』ですが、受賞コメントで、安藤サクラさんが子育てと撮影の両立について残した言葉が、多くの議論を呼びました。さまざまな働き方改革が進む今、表現の現場にあるジェンダーギャップについて考えてみましょう。
安藤サクラさんは、「私にとって子育てと撮影は今のところうまくできない。撮影のシステム的なことも理由としてあると思う。悩みつつも、その都度、家族会議をしながら協力し合って、大好きな現場に戻れるようにしたい」と話していました。子育てと仕事の両立に悩み、途中では引退を考えるほどだったという撮影現場。果たして過酷な環境と言われる表現の現場は、どのような状況なのでしょうか。

ジェンダーバランス白書で分かる男性優位の表現の現場

日本映画制作現場のジェンダーギャップや労働環境の調査・政策提言を行うJapanese Film Projectの統計では、2000年~2020年の21年間で劇場公開された「興行収入10億円以上の実写邦画796本」のうち、女性監督作品は25本(3.1%)だと発表しました。また、映画会社の大手4社である東宝、松竹、東映、KADOKAWAでは、役員・執行役員の女性割合は102人中6人のみ。制作現場では、監督のほか、業界内で地位が高い役職の女性比率は1割前後となっています。 このような実態を数値的により分かりやすくまとめたものが、表現の現場調査団による「ジェンダーバランス白書」です。ここから分かることとしては、以下のものが挙げられます。

・美大、音大ともに女性の学生が7割強いるが、教授や理事長になると6~8割が男性
・演劇分野での審査員の76%が男性
・文芸分野の審査員の約95%が男性
・映画分野の大賞受賞者は約85%が男性
・オーケストラ団体の常任指揮者の約97%が男性

画像出典:表現の現場 調査団 ジェンダーバランス白書

その他、表現9分野(美術、演劇、映画、文芸、音楽、デザイン、建築、写真、漫画)の審査員は、約77%が男性、大賞受賞者の約65%が男性となっています。この結果を見る限り、男性優位の業界となっている表現の現場。女性が長く居続けやすい環境とは言い難いことが分かります。

是枝監督による働き方改革とは

このような状況の中、是枝裕和監督は、日本の映画業界のジェンダーギャップにきちんと対策をしなければならない、と将来への危機感を持っています。2022年6月には、諏訪敦彦監督をはじめとした8人の映画監督たちを中心に「日本版 CNC設立を求める会」を立ち上げました 。CNC(Centre national du cinéma et de l’image animée)とはフランスの映画映像法で定められた視聴覚メディアを支援する中心的な組織です。このCNCをはじめとする海外の映画産業支援制度を見習って、日本でも労働環境や、教育、制作、流通支援に取り組むシステムを構築する必要性を呼びかけています。
さて、海外ではどうなっているのでしょうか。2022年9月にスペインで行われた第70回サンセバスチャン国際映画祭では、コロンビア出身の女性監督、ラウラ・モアさんの「The Kings of the World」がゴールデン・シェル賞(最優秀作品賞)を受賞しました。さらに、イタリアで開催された第79回ヴェネチア国際映画祭では、女性監督ローラ・ポイトラスさん(アメリカ)が、「All the Beauty and the Bloodshed 」という作品で、金獅子賞(最優秀作品賞)に輝きました。このような結果とともに、有名な国際映画祭では、受賞者だけでなく、審査員の男女比も平等になってきています。

ジェンダーレスと相対する紅白歌合戦

昨年で第73回をむかえたNHK紅白歌合戦では、性別で出演者を紅白に分けています。報道によると申し出がない限り、出演者の意思を確認することはなく、NHK側が紅白を決めているとのことです。元々は、男女平等を表現するためにこの仕組みが採用されたのですが、「多様性」という観点からは新たな課題を感じるものとなっています。
このように性別を男女の二つで分けるということは、時代遅れな部分もあり、すでにヨーロッパを中心とした表現の現場では、改革が進んでいます。世界3大映画祭の一つ、ベルリン国際映画祭は2021年に「男優賞」「女優賞」を、「俳優賞」に統一しました。また、イギリスを代表する音楽賞「ブリット・アワード」も、男女別の賞が存在していましたが、2022年からは男女の区分がなくなりました。これは、性別がノンバイナリー(男女のどちらにも属さない)であるシンガーのサム・スミスが区分をなくすよう提言したことなどから、変わってきたと言われています。

ここ最近では、渋谷ジェンダー映画祭True Colors Festival(トゥルーカラーズフェスティバル)超ダイバーシティ芸術祭のような動きが、日本でも見られるようになりました。SDGsの目標である5:ジェンダー平等の実現をすることで、8:全ての人の働きがいも、そして国としての経済成長にも繋がっていくでしょう。これからも世界各国で「表現の現場」での働き方改革が進められていくのではないでしょうか。

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