宅配便が5年で約9億個増加!再配達「有料化」への賛否は
物流の「2024年問題」をご存知ですか?2024年4月から働き方改革関連法により、自動車運転業務の時間外労働時間に上限が設けられる予定です。この新たな規制によって発生する可能性があるさまざまな問題を物流業界の「2024年問題」といいます。具体的には、物流業界の売上減少やドライバーの収入減少などが懸念されています。
このような状況を受け、国土交通省と経済産業省は2023年4月を「再配達削減PR月間」と定めました。再配達の削減に向けて、まとめ買いで荷物の数を減らすことや、宅配ボックス・置き配の活用が推奨されています。ヤマト運輸は、6月から一部区間で宅急便などの荷物のお届け日数と指定時間帯を変更することを発表。東京から四国などの従来「翌日」着の指定が可能だったエリアも「翌々日」配送になります。
また、企業側では業務の効率化を図るため「再配達の有料化」を検討。消費者は有料化についてどのように考えているのでしょうか。
配達業界のジレンマ、半数が「指定した時間に受け取れなかった経験がある」
再配達の有料化について考える前に、どれだけの消費者が時間通りに受け取れなかったかを見ていきましょう。
株式会社NEXERが運営する日本トレンドリサーチの調査によれば、荷物受取の時間指定をしたことがある人は85.2%でした。そのうち、約半数(49.6%)が指定した時間に受け取れなかった経験があることが明らかになっています。
荷物が指定した時間に受け取れなかった理由は、受け取り側の事情(仕事や急用で外出など)だけでなく、配達業者による理由(指定した時間に来なかった、荷物をなくされたなど)も多く見られました。
EC市場拡大と物流の課題、宅配便の取り扱い個数は5年で9億個以上増加
再配達問題の背景にはEC市場の需要の高まりと、配達員の人材不足があります。消費者向け電子商取引は、2021年に20.7兆円規模に達し、物販系分野は13.3兆円規模まで成長しました。
国土交通省によると、宅配便の取り扱い個数もAmazonや楽天などEC市場の需要拡大に伴い、令和3年度までの5年間で驚くべきことに9億個以上増加しています。
一方で、宅配需要の増加に対応しきれず、トラックドライバーなどの人員が不足。原因には少子高齢化による生産年齢人口の減少やトラックドライバーの賃金・労働環境の悪化が理由として考えられます。
これらの要因を受けて、国土交通省は再配達回数削減に注力。「総合物流施策大綱」において宅配便の再配達率削減目標数を2020年度10%程度から2025年度7.5%程度へと設定し、その達成に向けて取り組んでいます。
有料化で再配達回数削減へ、2017年に西友が再配達を有料化
再配達回数削減のために、再配達の有料化が注目されています。2017年には西友が再配送料400円を導入しました、再配達にお金がかかるとなれば、消費者として敬遠される可能性もあります。しかし報道によれば売上や会員数は増加しており、再配達有料化の影響は見られないそうです。再配達有料化に伴う客離れやトラブルに発展するリスクは、想像しているよりも低いかもしれません。
SNSでは賛否の声も、あなたは賛成?反対?
また運送業界で再配達の有料化については、ネット上では賛否両論があるようです。賛成派の一部では、「再配達には人件費がかかるため、有料化することでサービスの質を向上できるのでは」と考えているようです。一方で、「再配達の有料化は消費者にとって負担になる」という反対意見もあります。さらに、「再配達を有料化することで消費者と配送業者の間でトラブルが発生するのでは」という懸念も散見されました。
再配達による労働力の社会的損失は年間1.8億円にも
2015年国土交通省は「宅配の再配達の発生による社会的損失の試算について」の資料で、再配達による社会的損失は年間約1.8億時間・年約9万人分の労働力に相当し、再配達によるCO2排出量は年間41,8271トン(スギの木 約1億7,400万本の年間CO2吸収量)に相当する、と発表しています。面積でいうと、山手線の内側2.5個分と同じ広さのスギ林になります。
この物流の2024年問題はSDGs8「働きがいも経済成長も」のターゲット2「商品やサービスの価値をより高める産業や、労働集約型の産業を中心に、多様化、技術の向上、イノベーションを通じて、経済の生産性をあげる。」とも繋がります。
ドローンやアプリサービスなどまだまだ効率化できる部分はあるはずです。配達する側もされる側もお互いに持続可能であるために、テクノロジーを活用した新たな取り組みが求められています。