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2023年上半期に起こったニューストピックから振り返る日本のジェンダーギャップ


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5 ジェンダー平等を実現しよう
2023年上半期に起こったニューストピックから振り返る日本のジェンダーギャップ

ジェンダーギャップ指数という数値を知っていますか。この指数は、世界経済フォーラム(WEF)という国際機関により世界各国のジェンダーの不平等状況を分析した結果が報告されているものです。そして6月21日、「ジェンダーギャップ指数2023」が新たに発表されました。今回は、この報告書をもとに2023年上半期のジェンダー平等にまつわるニュースや問題点について振り返っていきましょう。

アジアの最下位はどこ?まさかの日本?

「ジェンダーギャップ指数2023」の調査は、世界146カ国を対象に行われますが、日本はそのうち125位で、前年の116位から順位を下げる結果となってしまいました。細かく分野ごとにみてみると、経済:123位、政治:138位、教育:47位、医療:59位に。4分野中、特に政治におけるジェンダー格差が明らかとなりました。これまで一度も女性の首相が誕生していないことや、「2025年までに国政や地方選挙の候補者に占める女性を35%に」という目標に現実がなかなか追いついていないことなどが理由として挙げられます。
また、全体のギャップ指数を東アジア・太平洋地区19カ国中でみると、1位:ニュージーランド、2位:フィリピン、3位:オーストラリアと続き、14位:韓国、15位に中国がランクイン、そして最下位はまさかの日本でした。同じアジア地域の中でジェンダーギャップにおいては一番の後進国となった日本。とても残念な結果となりましたが、果たして日本が行っているジェンダーギャップに対する動きにはどのようなものがあるのでしょうか。

2023上半期日本で起こったジェンダーギャップに関する話題

<6月>G7男女共同参画・女性活躍担当相会合で日本のみが男性
今年のG7サミットに併せて開催された「G7男女共同参画・女性活躍担当相会合」。この会合では、各国の男女共同参画担当大臣が一堂に会し、様々な男女共同参画、女性活躍に関する課題について意見交換を行いました。今回は、「コロナ禍の教訓」や「女性の経済的自立」をテーマに、議論の成果を盛り込んだ共同声明を発表し、閉幕。しかし、その内容により注目されてしまったのが、日本以外の担当大臣が女性、議長を務めた小倉女性活躍相のみが男性だったこと。今回の会合で、女性の政治参加の遅れが目立つ形となった。

<5月>同性婚で神前式を挙げることができる尼崎えびす神社
同性の神前結婚式を受け入れる神社はとても少ない中で、兵庫県尼崎市にある尼崎えびす神社で男性同士のカップルの挙式が行われるというニュースがありました。この経緯としては、全国各地の8万社の神社が参加する宗教法人「神社本庁」を母体とする「神道政治連盟」という政治団体の偏見と差別が詰まった主張がきっかけとのこと。「同性愛は後天的な精神の障害、または依存症」といった発言を同連盟がする中で、このカップルは問題提起も込めて、同性でも挙式のできる神社を探すことにしたそうです。挙式を執り行った宮司の太田さんはメディアを通して、「今は過渡期、(同性愛に対し)偏見もなければ特別視することもなかった。選択肢の一つになれたのであれば良かった。神道の神様は多様性に満ちていて、今の社会に通ずるものがある。大事にしていきたい。」と話しています。

4月<歌舞伎町タワー2階ジェンダーレストイレ>
今年4月に開業した東急歌舞伎町タワー2階の「ジェンダーレストイレ」が話題になりました。同じ空間に女性用トイレ個室(2室)、男性用トイレ個室(2室)、ジェンダーレストイレ個室(8室)、バリアフリートイレ個室(1室)が設けられており、手洗いスペースは共用となっています。多様性への配慮から実現したジェンダーレストイレでしたが、実際は、犯罪が起こりやすい場所として認識されることもあり、危険性の高い施設だという人もいます。しかし、これを全面的に否定することは、トランスジェンダーやノンバイナリージェンダー(自身の性自認が男女どちらにも当てはまらない、当てはめたくない人)の選択肢がなくなるということもあり、どのような解決方法があるのか、未だに多くの議論を呼んでいます。

3月<記者会見での女性宇宙飛行士に対するプライベートな質問>
2月28日に行われた記者会見で、4127人という応募者の中から選ばれた宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙飛行士候補2人のインタビューが行われました。この中で注目を集めたのが、日本赤十字社医療センターの外科医、米田あゆさんへの質問。家族構成や配偶者・子どもの有無などについて聞かれると、米田さんは「家族に関すること、パートナーの有無に関することは、大変申し訳ないですが、プライベートのことで回答するのは差し控えさせて頂きたいと考えております。」と堂々と回答しました。さらに、同じ記者から「若い女性(20代)という観点から、宇宙開発の事業にどんな貢献ができるか」という質問も。こうした会見に対し、Youtubeのコメント欄では、「男女ではなく「宇宙飛行士」として選ばれたのに、男性には絶対しない「若い女性として」意見下さいとか気持ち悪すぎやろ。」といったコメントも見られました。

2月<LGBTQへの差別発言で更迭された荒井元首相秘書官>
岸田首相に「厳しく対応せざるを得ない発言だ。」と言わしめた荒井元首相秘書官の発言。同性婚カップルに対し、「隣に住んでいたら嫌だ。見るのも嫌だ」、「(同性婚を)認めたら、日本を捨てる人も出てくる」などと述べたことで、大きな批判を生みました。こうした問題が報道される中、LGBTQを差別から守る法整備も徐々に動いてきたこの上半期。しかし、今月4日、経済産業省は、荒井氏を通商政策局担当の官房審議官に起用すると発表しました。さらに国際関係担当の官房政策統括調整官も兼ねることで、経産省の幹部に復帰する形に。経歴からすると事実上の降格とはなるものの、政治の中枢にいる人が差別的な発言をしてしまう国はどうなのでしょうか。岸田首相に至っては、荒井氏を批判しつつも自ら同性婚に対して、「家族観や価値観、そして、社会が変わってしまう課題だ」などと国会で触れたことも。まずは、国の舵取りを務める人たちの意識から変えていく必要があるのではないでしょうか。

上半期に起こったジェンダーギャップのニュース。まだ国内には差別的な意識が根強く残っていることが分かります。日本がアジアで最下位のジェンダーギャップ指数だったことが、これらの出来事から炙り出されるのではないでしょうか。こうした問題は決して忘れることなく、これからも議論を重ね、一人ひとりが意識を持ち、改善していかなければなりません。風化させない為にも、このような記事が少しでもジェンダーギャップのない未来に貢献できると嬉しいです。