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あなたのペットは大丈夫?外来種が及ぼす影響と生物多様性を考える


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15 陸の豊かさも守ろう
あなたのペットは大丈夫?外来種が及ぼす影響と生物多様性を考える

「外来種」と聞いてどんな生物を思い浮かべますか。一般家庭でも多く飼われているのが、アメリカザリガニとアカミミガメ(ミドリガメ)。元々ペット用、もしくはペットの餌用として日本に持ち込まれたのですが、飼育の途中で野外へ放す人が増えたことで、以前からあった生態系へ影響を及ぼしていることが問題視されてきました。このような状況を受けて、6月1日からアメリカザリガニとアカミミガメ(ミドリガメ)が「条件付特定外来生物」となり、その取り扱いについてルールの変更がされると、このニュースは各種メディアで大きく取り上げられました。今後もペットとして飼うことは認められるのですが、野外へ放したり、販売・輸入を行うことは禁止となり、違反した場合は最大で3年以下の懲役、300万円以下の罰金、またはその両方が課されることに。
今回は、こうした生態系などの環境保全の面でも問題になっている「外来種」について考えていきましょう。

●「特定外来生物」って?

特定外来生物は、主に明治時代以降に販売などの目的で人間によって日本に持ち込まれたものです。現時点で哺乳類(25種類)、鳥類(7種類)、爬虫類(22種類)、両生類(15種類)、魚類(26種類)、昆虫類(25種類)、甲殻類(6種類)、クモ・サソリ類(7種類)、軟体動物等(5種類)、植物(19種類)と多くの生物が指定されています。この特定外来生物の中から、在来種の生態系や農林水産の中で大きな被害や影響のある生物、アメリカザリガニとアカミミガメ(ミドリガメ)の二種が、外来生物法に基づき「条件付特定外来生物」と新たに認定されました。こうした動きがあった中で、これまでに外来種が及ぼした影響とはどんなものがあるのでしょうか。
 
1)生態系への被害
・小笠原諸島
グリーンアノール(外来トカゲ)により希少な昆虫類が捕食され、オガサワラシジミ、オガサワライトトンボ,オガサワラトンボ,シマアカネ等の固有のトンボ類なども絶滅かそれに近い状態になっています。
 
・沖縄・奄美地方
ハブやネズミの駆除として持ち込まれたマングースが、在来種を捕食し、一気に個体数を増やした結果、本来の生態系に大きな被害を与えています。

・琵琶湖
食欲旺盛、好奇心旺盛、縄張り意識が強いブラックバスの移入後、小魚、甲殻類、両生類、昆虫など、口に入るあらゆる生物が襲われ、モアユ、ビワマス、ホンモロコ、ゲンゴロウブナ、ニゴロブナ、ビワヒガイなどの漁獲量が激減。投網や電気ショックなどといった方法で駆除されています。

2)人体への被害
・セアカゴケグモ
毒グモのセアカゴケグモは、年々生息域を拡大しており、基本的にはおとなしい性格ですが、素手で掴もうとすると咬まれることがあります。強い毒性を持つ雌に咬まれると、全身に痛み、発汗、発熱や皮膚の壊死など重症化する危険性もあります。

・カミツキガメ
陸にいるものは攻撃的で、捕らえられた時の咬みつき、引っ掻き等の被害があります。ペット用に大量に流通しているのですが、大型に成長し攻撃的になるため、飼われていても捨てられてしまう事例が増えています。

3)農林水産への被害
・アライグマ
最近、害獣として捕獲されることの多いアライグマ。被害の多い農作物は、糖度の高い果物や野菜類を中心にスイートコーン、カボチャ、スイカ、ブドウ、ナシ等が報告されており、その問題は農作物への被害だけでなく、生態系や民家などの人間の生活環境にも及びます。また被害地域は都心部へも広がってきています。

・スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)
スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)は、1980年代初期に食用として輸入されました。主にイネ、レンコン、イグサ、ミズイモを食べるので、水田での被害が多いです。卵には毒があり、敵に捕食されにくいので、その数を順調に増やし、お米をはじめとした農作物への大きな影響を及ぼしています。

日本の食卓に欠かせないあの食材も…「世界の侵略的外来種ワースト100」に指定

外来種が日本で被害を与える一方で、海外でも日本の食卓に欠かせない「ワカメ」が、国際自然保護連合(IUCN)が選ぶ「世界の侵略的外来種ワースト100」にランクイン。ワカメは東アジアに自然分布していますが、1980年代以降、ワカメの子供といわれる遊走子や配偶体が種カキや船体に付着したり、船のバラスト水(重り)に混入したりして世界各地に拡散。日本と朝鮮半島では食用ですが、他の地域ではほとんど食べられないために大繁殖し、自生種や養殖漁業に悪影響を与える害藻として扱われているそうです。
その他にも、虫では「コガネムシ」、植物では「クズ」が日本産の侵略的外来種として海外では嫌われ者に。ほ乳類では「タヌキ」が、ペットや毛皮目的に飼育されていたものが野生化し、ヨーロッパ各地に分布を広げており、農作物などを荒したり、狂犬病の媒介者とまで呼ばれています。

「外来生物」はすべて悪なのか。生物多様性について考える

ワカメやタヌキのように日本では当たり前に生息し、共存している植物や動物も、海外では害を与えるものとして扱われているケースもあります。私たちは、生き物の命を大事にしようと教わる一方で、人間の暮らしに害を与えるということが分かれば、外来生物や害獣、害虫は遠慮なく駆除しているのが現状です。
しかし、このような行動に異議を唱える人もいます。実は、在来種の生態系を活性化させるのに役に立っている外来生物がいたり、そもそも外来種自体が絶滅の危機に瀕しているという側面もあります。一括りに外来生物=悪ということではなく、それぞれしっかりと検証し、議論し、合意形成していくこと。それが各地域の固有性の維持に繋がり、その積み重ねが日本、そして世界の生物多様性の維持に波及していくのではないでしょうか。

これまでペットとして当たり前に飼育し、都合が悪くなったり、飽きたら放流、野放しにしてしまっていた生物たちのその後を考えてみると、人間の生活をはるかに超えた大きな問題に発展していることが分かりました。地球の生態系や生物多様性について知り、行動をすることは、陸の豊かさを守ることに繋がります。責任を持って動物や植物を飼う、そして共存するということについて改めて考えてみてはいかがでしょうか。