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外国人が働きやすい国「ワースト10位」の日本。高度外国人材に頼る日本の労働環境とは


この記事に該当する目標
10 人や国の不平等をなくそう
外国人が働きやすい国「ワースト10位」の日本。高度外国人材に頼る日本の労働環境とは

今月7月12日、日本の安全を守る防衛省の有識者検討会が「高度外国人材」についての報告書を提出しました。この経緯としては、少子化・高学歴化が進むことにより、自衛官の採用環境が厳しい状況にあることが主な理由です。この問題を解決するべく、高い知識を持つ優秀な外国人材を任期付きで採用する制度を提案することになりました。

現在、コロナの規制緩和と円安が影響し、外国人観光客を目にする機会が増えましたが、旅行者だけでなく、外国人移住者、外国人労働者も増加しているのでしょうか。外国人材をどのように活用し、より良い社会を築ていくのか、新たな仕組みや現状を踏まえて考えていきましょう。

「高度外国人材」とは

2012年5月から導入されている「高度人材ポイント制」。外国人材を「高度学術研究活動」、「高度専門・技術活動」、「高度経営・管理活動」の3つに分類して、「学歴」、「職歴」、「年収」などの項目ごとにポイントを設け、ポイントの合計が70点に達した場合に、日本に滞在する際の優遇措置を与えています。70点以上の人材は、「高度専門職1号」と認定され、在留期間5年、配偶者の就労が可能、一定の条件の下での親の帯同、入国・在留手続きの優先処理などが可能となります。この「高度専門職1号」を3年以上続けると「高度専門職2号」となり、その場合は、在留期間が無期限になります。こうした制度で、優秀な外国人材の受入れ・定着の促進を図っているのです。
では、実際に優秀な外国人はどのくらい日本で働きたいと思っているのでしょうか。

日本で働きたい?働きたくない?

外国人材の受け入れを強化している日本ですが、日本で働くということに外国人は魅力を感じているのでしょうか。世界最大の海外駐在員向け交流サイト「インターネーションズ(InterNations)」により発表された「外国人が住み働きやすい国」ランキングをみてみましょう。

毎年発表される同ランキングは、世界各国で働く海外駐在員へのアンケート調査をもとに、各国の就労環境、生活の質、生活費などの指標を分析しているものですが、今年、日本は53ヶ国中44位、下位10位内に入っています。
理由としては、「独特の文化に馴染むのが大変」、「ワークライフバランスがない」、「時給が低い」などの声があり、総合的に日本の働きづらさが反映される結果になりました。実際に、2009年以降、日本は経済連携協定(EPA)に基づいて看護師として働くことを目指すフィリピン人を毎年受け入れていますが、今年の応募者は制度が始まって以来、過去最少となる17人となりました。 
一般社団法人日本国際化推進協会(JAPI)による「日本で働くことについての調査」(2015年)によると、日本の企業に入社しにくい理由として、「昇進・扱いにおける外国人差別」、「女性差別」、「昇進・採用基準などにおいての不透明さ」が挙がりました。

一方で、特にアジア圏からは日本で働くことに魅力を感じている割合が多く、「技術が高い」、「企業の安定性」といったイメージもあるようでした。

日本企業の外国人従業員の受け入れ事情

日本の人口は約1億2800万人(2010年)から、2030年には1億1600万人に減少すると言われています。日本は働きにくい国だと思う外国人が多い中でも、日本で働く外国人労働者は、2016年には100万人を突破し、2019年には160万人を超えています。多くの外国人が日本で働いているという現状に呼応する形で、外国人採用に力を入れている企業もあります。

2012年に社内の公用語を英語にするなど、早い段階からグローバル化を進めている楽天。2014年時点での開発職の社員は約8割が外国人材となりました。英語版の採用ホームページもあり、新卒・中途ともに世界中から応募することができます。職種も幅広く募集しており、より多くの人材に機会を与えることができているのが特徴です。様々な文化や価値観に対応するため、社内カフェテリアにはベジタリアン、ハラル対応のメニューを用意しており、社内には礼拝所(Prayer room)もあります。

フリマアプリを運営するメルカリは、「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」というミッションのもと、東京オフィスのエンジニアリング組織の約50%が日本国籍以外のメンバーで構成されています。そのため、語学を学んでいる途中の同僚に対して、「やさしい日本語」「やさしい英語」のサポートがあり、ネイティブスピーカーが相手にわかりやすい話し方を学ぶということを行っています。
また、約20人で構成される通訳・翻訳を行うチーム「Global Operations Team(GOT)」が存在し、社内の大規模イベントでの同時通訳からチーム内の会議、メンバー同士の1on1のサポート、ドキュメントの翻訳など、業務上必要なコミュニケーションを円滑に進める役割を担っています。その他、Unconscious Bias Training (無意識バイアストレーニング)、Communication Team-building (多文化・多国籍のメンバーが集まるチームにおいて、起こりうるコミュニケーションバリアの要因を理解するチームビルディングセッション)など、多様性や多文化の壁をできるだけ取り除く制度を積極的に取り入れています。

日本では、食糧やエネルギーの輸入だけではなく、多くの労働が外国人によって支えられている状況です。この現状を受け止め、日本人はもちろん、外国人にも働きやすく住みやすい日本を目指していくことが持続可能な日本の実現に大切なことだといえます。すでに多様性を意識し、様々な仕組みを動かしている企業を参考に、お互いを尊重し合える社会について改めて考えてみてはいかがでしょうか。