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スポーツで性別を分ける概念は時代遅れに。ローレウス・スポーツ・フォー・グッド2020年次報告書を発表


この記事に該当する目標
1 貧困をなくそう 3 すべての人に健康と福祉を 5 ジェンダー平等を実現しよう
スポーツで性別を分ける概念は時代遅れに。ローレウス・スポーツ・フォー・グッド2020年次報告書を発表

スポーツには年齢や性別を問わず、様々な方が楽しめる競技が数多くある一方で、競技によっては、概念として「男性のスポーツ」や「女性のスポーツ」といった分け方をする考え方もあります。そんな中、SDGs17の目標の内「1.あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ」、「3.あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する」、「5.ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る」などの目標達成に向けスポーツを通じて社会貢献を行う世界的組織「Laureus(以下、ローレウス)」から、世界中の子供や若者のスポーツプログラムへの参加動向などをまとめた「ローレウス・スポーツ・フォー・グッド2020年次報告書」が発表されました。

本報告書は、ローレウスの活動の軸の1つである、40以上の国と地域にて200を超えるスポーツプログラムサポートを通して、世界中の子供や若者の生活を変えていくことを目的とする「ローレウス・スポーツ・フォー・グッド財団」によって発表され、2020年に27万人を超える子供や若者が参加したコミュニティスポーツプログラムを調査したもの。ローレウスの一年間の活動を振り返るほか、ジェンダー平等の実現に関するデータや、スポーツを通じて子供や若者がどのような影響を与えたか、女の子や女性にとってスポーツがどのような存在に変化しているかなどを報告しています。

報告書内では、ローレウスのプログラムへの女性の参加率は現在47.8%で、スポーツ全体における参加率よりも高い水準を誇っています。また、誰もが気軽に参加できるグラスルーツスポーツに“積極的に参加している”または“男性と同程度参加している”と答えた女性は増加傾向にあり、昨年と比べ、水泳は200%以上、ダンスは112%、バレーボールは11%、陸上では41%上昇しています。一方で、主に男性のものとみなされることの多いスポーツへの女性の参加率は、昨年に比べ、サッカーで17%、バスケットボールで6%、ラグビーで18%と減少しています。この傾向は、いまだ多くのスポーツで顕著にみられますが、ローレウスのSport for Development(スポーツを通じた青少年育成)プログラムに参加する女の子たちは、このような固定概念にとらわれることなくチャレンジし続け、思春期になるとスポーツから離脱してしまう傾向から脱却し始めています。

日本においては、ジェンダーの不平等は、特に変革が求められています。「ジェンダー・ギャップ指数 2021」によると、日本は156の国・地域で120位となっており、ジェンダーの不平等は、日本の女性に影響を及ぼしている根本的な社会問題の1つであることを示しています。女の子は男の子と比較すると、特に思春期にスポーツをやめてしまう割合が非常に高く、それに伴い、同時期に心の健康と幸福度の問題も起きることが分かっています。

日本にてスポーツの力で女の子の活躍の場を広げることを目指し、2020年に大坂なおみ選手、ローレウス、そしてナイキのパートナーシップによって「プレー・アカデミー with 大坂なおみ」が設立されました。このプログラムでは、女の子にスポーツを通じて楽しく前向きな遊びの体験を提供し、次世代のロールモデルになれるようサポートしていきます。また、ローレウスのグローバル・パートナーである三菱UFJフィナンシャル・グループが、このプログラムの活動資金を支援し、今後、ロサンゼルスとハイチでも活動を展開予定です。大坂なおみ選手は、「大きな変化をもたらすスポーツの力を信じていて、次世代の女性アスリートの背中を押すことに情熱を注いでいます。でも、すべての女の子、特に恵まれない地域に住む女の子が、私のようなチャンスをもらえたり、ロールモデルに出会えたりするわけではありません。私はこの状況を変えるために何かしたいのです」とコメントしています。

ローレウスは、日本国内の活動として、ジェンダー平等を達成するために、スポーツを通じて知的障害や学習障害を抱える若者を支援するプログラムや、クライミングを通じて身体障害を抱える若者に力を与えるプログラム、女の子の生活スキルや心の健康、成績に焦点を当てたプログラムなど様々なプログラムを支援してきました。このようなプログラムを通じて、日本の女の子や女性がスポーツや自分のコミュニティに積極的に参加し、リーダーシップを発揮できる平等な機会を増やすことを目標としています。

これまで主に男性のものとされてきたスポーツや運動が、女の子や若い女性からも人気を博す存在へと変化し、「男の子のスポーツ」や「女の子のスポーツ」と区別する概念は、もはや時代遅れになりつつあるのかもしれないことが示されています。東京オリンピック・パラリンピックが開催され、日本国内だけではなく世界中の方々がスポーツに注目をしている今。老若男女問わず楽しむことができるスポーツを通して、ジェンダー問題を改めて考えるきっかけになることを願っています。