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新内眞衣と学ぶニッポン放送『SDGs MAGAZINE』目標3「すべての人に健康と福祉を」につながる「世界希少・難治性疾患の日」の取り組み #後編


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3 すべての人に健康と福祉を
新内眞衣と学ぶニッポン放送『SDGs MAGAZINE』目標3「すべての人に健康と福祉を」につながる「世界希少・難治性疾患の日」の取り組み #後編

ニッポン放送で毎週日曜日午後2時10分からオンエア中のラジオ番組『SDGs MAGAZINE』。パーソナリティを務める新内眞衣さんとともにSDGsを学ぶ同番組の3月12日放送では、前回に続いて目標3「すべての人に健康と福祉を」にスポットを当て、特定非営利活動法人「ASrid (アスリッド)」 理事長を務める西村由希子さんに『世界希少・難治性疾患の日』=『Rare Disease Day(レア・ディジーズ・デイ)』の取り組みなどについて聞いた。後編では現状と課題を深く掘り下げ、SDGsとの関係性にも話が及んだ。
※3月5日、12日オンエアのラジオ回は、収録の様子が動画におさめられ、2月28日に実施したRDD Japan 2023のイベントで放映されました。動画はRDD Japan公式YouTubeチャンネルからお楽しみいただけます。
動画:RDD Japan 2023 in Tokyo

「希少・難治性疾患」とは、患者数が少ないことや病気のメカニズムが複雑なことなどから治療・創薬の研究が進まない疾患を指す。そうした病気についてみんなで考え、より良い診断、治療による生活の質(QOL)の向上を目指そうとスウェーデンで2008年に始まった活動が2月最終日「世界希少・難治性疾患の日」=「Rare Disease Day(以下RDD)」の取り組みだ。西村さんは、そのRDDを日本に持ち込み、「RDD Japan」として2010年から開催に携わってきた。

前週から希少・難治性疾患について学んできた新内さんだが、ふと小学生時代に触れていた支援活動の記憶が蘇ってきたという。

新内 「今回のテーマについてお話を聞いていて、私も小学生の時に鉛筆を買うと筋ジストロフィーの方の支援に充てられるというのをやっていたなと思い出しました」

西村 「すごいですよね。それを思い出されたのが」

新内 「でも、良くないなと思うのは、その6年間しかやっていなかったということですね」

西村 「でも、その6年間やっていたからこそ、今思い出したわけですよね」

新内 「優しい(笑)」

西村 「でも、それが大事なことです。たとえば1年に1回、楽しそうなお祭りみたいなところで知ったことって、もしかしたら5年後にも思い出せるかもしれない。継続していくことってすごく大事なことなんです。1年間だったら、新内さんもお忘れになっていたかもしれない。6年続いたからこそ、ということだと思います」

新内 「小さい時からそういう活動の中に入れたことは、すごく幸せなのかもしれないなと思いました」」

西村 「私たちも中学生、高校生たちといろいろな形で勉強をしているのですが、高校生たちは何も知らず『かわいそう』とか『うつる』とか、かなりネガティブな印象を最初は持たれているんです。でも、私たちが彼らと話をして、動けない方は動けないからかわいそうなのではなく、精神的に豊かな方がたくさんいらっしゃるし、感染もしない。そうした正しい知識を伝えると、ちょっとずつ変わってくるんです。『じゃあ、会ってみたい』とか『自分ができることを考えたい』とか。その方々が、そのままこの領域に入ってくるほど簡単ではないと思いますが、もしかしたら何かを変える、何かアクションを起こす時に思い出してくれるかもしれない。今の新内さんみたいに。それが大事なんだと思います」

2月末日に開催された『RDD Japan(RDD2023)』も、まさに“知ること”の大切さを伝える取り組みといえる。そして『SDGs MAGAZINE』でも昨年12月24日のクリスマスイブに、アストラゼネカグループの希少疾患部門「アレクシオン・アストラゼネカ・レアディジーズ」の日本法人「アレクシオンファーマ合同会社」(本社:東京都港区、社長:笠茂公弘)と共に「希少疾患と社会、私たちが気づきあうためのヒント」と題した啓発イベントを東京・港区のアーク・カラヤン広場で開催。その模様は当サイトでも紹介している。
大切なのは、人の“困っている”に対して感性を研ぎ澄ませて向き合うこと

新内 「このアレクシオンファーマについては、西村さんも関わりがあるそうですが」

西村 「そうですね。アレクシオンファーマ合同会社さんは、いわゆる希少疾患、患者さんが少なくて開発がなかなか難しい領域の創薬開発にチャレンジしてくださっている会社さんです。『RDD Japan』という活動は多くの協賛企業の方ですとか、後援組織の皆さまにご支援、ご協力をいただいて成り立っているのですが、アレクシオンファーマ合同会社さんには2019年からご支援を頂戴していまして、いろいろと映像を一緒につくったりしています。今年度は神経繊維腫症Ⅰ型という病気に関して医師の方と患者さんたちとの対話をする番組をつくりました」

新内 「企業の方が協力してくださると、広がりそうですよね」

西村 「企業にとっても、どのようにしたらいろいろな人たちに伝えることができるのかを考える、アクションを起こす良いきっかけになっていると思いますし、患者さんたちも一堂に会することで、こんな会社がこの領域で頑張ってくださっているんだなと、お互いが知り合える。そういう意味で、すごく良い機会になっているなと思います」

新内 「(先述の)『希少疾患と社会、私たちが気づきあうためのヒント』と題したイベントには映画『もののけ姫』の主題歌でもお馴染みの先天性骨形成不全症の難病を抱える米良美一さんや、番組に何度もご出演していただいている蟹江憲史先生、アレクシオンファーマの笠茂社長、フリーアナウンサーの小島奈津子さん、厚生労働省・難病対策委員会の委員長を務める千葉勉先生が登壇されています。西村さんは、こちらのイベントにはどういう形で関わられたのですか」

西村 「私たちは、このイベントで『RDD Japan』のブースを出させていただき、20種類弱くらいのグッズをキャンペーンで皆さまにお渡しするなど寄付事業を行っていました」

新内 「グッズというと、どんなものがあるのでしょう」

西村 「バッジだったり、クリアファイルだったり、今年はクマのぬいぐるみをつくったりしました。高校生からマスキングテープをどうしてもつくってほしいというリクエストもあったので、それもつくりました。たとえば学会に参加されて近くのホテルとかに泊まった際に、RDDのトートバッグを持って行ったら、同じバッグを持ってらっしゃる方がいて、何となくみんな関係者なんだなとチラ見をし合いましたということを教えていただいたりとか、企業の方に時々ご連絡をいただくこともあります」

新内 「そうしたことがあると、ちょっと心強く感じるかもしれないですね」

西村 「このパーカーもそうです」

新内 「『RDD Japan』と書かれていますね」

西村 「いろいろな方々が、かわいいから使ってみたいと思うと、他の人たちも、もしかして同じように思ってくれるかもしれない。じゃあ、これをどこで買ったのかというところから、よく分からないけどこんなロゴが展開されているイベントがあるんだと知っていただける。難しいところから入るだけではなく、そういうところから浸透していくイベントがあってもいいと思うので、どちらも大事にしています」

ここで新内さんは、基本的な話として「希少疾患とはどのようなものなのでしょう」と改めて質問。現状と課題について西村さんに詳しく解説してもらった。

西村 「希少疾患は、患者さんが少ない疾患で10万人に1人、100万人に1人というものもたくさんあります。そうなってくると、先生方もその患者さんを見たことがなかったりするので、病気の原因を特定できなかったり、病名が付いていなかったり、そういう例もたくさん出てきます。そうなると、治療法が分かるわけもなく、ましてや薬があるわけでもなく、まだまだ診断といったものも確立がされていません。さまざまなものが無かったり、少なかったりする、そんな領域といえます」

新内 「今、分かっている希少疾患の種類は、どれくらいあるのですか」

西村 「世界では7000種類くらいあるといわれています。日本だと国で指定されている子供の病気とか、指定難病といわれるものがあり、細かいものも含めて3000くらいの疾患がカバーされています。ただ、それで全部ではないので、おそらく日本でも同じような7000種類に近いくらいの疾患が存在しているだろうといわれています」

新内 「その中で有効な治療法があるものは、どれくらいなのでしょう」

西村 「アメリカのFDA(食品医薬品局)は、全体の5%しか治療法が確立されていないというデータを出しています。あとの95%は、病名が分かっても、それを治すという方向にはなかなか行きづらい感じですね」

新内 「他にも課題はありますか」

西村 「情報がないんです。たとえば、あなたはAという病気ですと言われれば、今時だと検索するじゃないですか。検索した時に医学用語ばかりが並んでいて、そこにはシビアな話も書いてある。それを見てショックを受けて心を閉ざしてしまうようなパターンもすごくあります。もっと分かりやすく、どういう生活を送っているのか知りたくても誰に聞けば良いのか分からないというように、情報面では苦労があるかなと思います」

新内 「日本における今後の見通しは、どのような感じなのでしょうか」

西村 「アレクシオンをはじめとした薬を開発してくれる企業も出てきていますし、研究者の方々もこの領域が大事だと認識してくださっているので、少しずつ状況は改善されるかなと思います。また、創薬開発では患者さんがどのような生活を送っているのか、何が大変なのか知ることが大事なんです。今まではなかなか患者さんやご家族が、自分たちで『こうなんです』と話す場所もないですし、言ってどうなるのかとドキドキしてしまうところもあったと思いますが、みんなが語れる場、発信する場ができてきているので、より患者さんやご家族のご意見が創薬開発に活きやすい流れは少しずつ生まれてきているのかなと思います」

新内 「日本には、世界でも珍しい難病認定制度というものがあるんですよね」

西村 「2014年に難病法(難病の患者に対する医療などに関する法律)が制定されました。これにより指定された難病には医療費の助成があったりとか、さまざまなインセンティブを受けられたりするようになっています。ただ、指定難病になった患者さんが全員、医療費助成を受けられるかというとそうではなく、予算が限られていることもあって、重症度が高い方は助成を受けられる一方、軽い方はその中に入らないなど、まだまだ課題は残されているかなと思います」
希少疾患・難病についてはSDGsのターゲットに明記はされておらず、目標3のターゲット4に「2030年までに、予防や治療を進め、感染症以外の病気で人々が早く命を失う割合を3分の1減らす。心の健康への対策や福祉もすすめる」との記述がある。新内さんは、そうした現状を踏まえ、「その課題解決とSDGsは、どのようにつながってくるのでしょう」と西村さんに問い掛けた。

西村 「SDGsは国連が提唱した本当に大きなグローバルな話ですけど、実はこの希少疾患領域も2016年に国連の中でNGO(NGO Committee for Rare Diseases=CfRD)が立ち上がっています。私自身も、その設立総会に参加しましたが、本当に全世界から関係者が集まって、今ここで一歩を踏み出すんだという話をして、最後にみんなでロゴにサインを書いた場面は忘れられません。そこから、貧困(目標1)とか、教育(目標4)とか、パートナーシップ(目標17)など6つのSDGsのターゲットを設定して、そこに向けて活動が進められています」

新内 「改めて、患者さんを孤立させないために必要なことはなんでしょう」

西村 「一つ一つの疾患で見ると、患者さんの数ってとても少ない。それなら一つ一つではなく、関係している疾患で集まって考えようとか、もっと地域で集まって考えようとか、いろいろな枠があると思うんです。私たちは、世界で集まって考えようという枠で、患者側のグローバルなネットワーク、研究者のネットワークで話をしながら、そこを横串にお互いを理解して進んでいこうとしています。国によって状況は違いますが、すごく国際連携・国際調和というものが盛んな領域であるのは間違いないですね」

厚生労働省の難病情報センターのサイトでは、338疾患について説明が詳しく書かれている。ただ、これだけで十分ではなく、情報を得られるより多くの選択肢が必要であり、それがさらに理解を深めることにつながる。

西村 「もっと分かりやすかったりとか、もっとアップデートしなければいけない情報があったりもするので、正しい情報を受け取る選択肢がもっと増えてくると良いなと思います。RDDでも、そういった情報を出せるよう、毎年とても気をつけています。そして、ありがたいことにどんどん情報は出てきていて、情報がたくさん出てくると、いろいろな方に届き始めて、そんなことがあるんだと知ってくださって、生活の中の配慮ができるようになるので、いいサイクルが生まれてくれば良いなと思います」

新内 「私も『SDGs MAGAZINE』を担当させていただくようになってから、声を掛ける勇気を持てるようになりました。この間も、車いすの方に声を掛けたら『ここは大丈夫です』と、丁寧にお断りされたんですけど、それはそれで良い経験でしたし、1年くらいかけて身についたものなので、皆さんに少しずつでも伝わったらいいなと思います」

西村 「そういう気持ちになれることって重要で、アクションを一回でも起こしてみると、『結構です』と言われる時もあれば、何かをお願いされる時もある。そうした普通のやり取りをできるのが社会のあり方として、すごくいいなと思います」

新内 「それが普通になるように、これからも声を掛けていこうと思います」

西村 「素晴らしいと思います。ぜひ」

そして、番組の最後は恒例の質問。西村さんに「今、私達にできること=未来への提言」を聞いた。

西村 「RDDでは毎年メインテーマを設定していて、今年度のテーマは『つたえる、ひろがる、つたわる』なんです。『つたえる』、つまり発信すること、自分が言いたくなることってたくさんあると思うんですけど、それを言うのって結構簡単じゃないですか。SNSでつぶやくこともそうですし。でも、それを『つたわる』まで丁寧なアクションを起こしましょうというところをテーマにしています。『ひろがる』をあえて真ん中に置いて、広げなくても良いので、誰かターゲットを設定したら、その方に届くまでアクションを大事に丁寧にやっていこうということです。私たちも、このシーズンが終わるまでこの気持ちを忘れずにやっていきたいと思います」

今回の放送をきっかけに希少・難治性疾患を巡る現状や課題への理解を深めた新内さんは、冒頭でも触れた「鉛筆」による筋ジストロフィーの患者支援について改めて調べてみたという。かわいらしいパンダの絵柄が描かれ、パッケージには「健康のよろこびを」と記された通称“パンダ鉛筆”は、埼玉県筋ジストロフィー協会による取り組みで、実は埼玉県限定。現在その人気から郵送販売も行なっており、公式サイトに購入法などが紹介されている。「こういうきっかけで知っていただければ私も嬉しいです」と新内さん。これもまた、RDDの哲学と共通した、知ること、理解することへの第一歩につながる貴重な活動といえそうだ。