日本代表を輩出した大学サッカー部と地産地消を進めるレストランがコラボ!一体なぜ?
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「サッカー部とレストランがコラボ?」このタイトルを見て、疑問を持った方は多いのではないでしょうか。
イギリスのタイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)※が主催する、大学の社会貢献度をSDGsの枠組みで可視化する「THE Impact Rankings 2022」に4年連続ランクインするなど注目を集めている神奈川大学。その中でも編集部が注目するサッカー部による地域活動「竹山団地プロジェクト」の最新の動きを紹介します。大学運動部と地産地消を推進しているレストランがタッグを組んだ理由。そして、サッカー部とレストランと異例のコラボの裏側について、取材しました。
※イギリスのタイムズが新聞の付録冊子として毎年秋に発行している高等教育情報誌
農家の高齢化にともなう社会問題の解決
現在日本は、高齢化社会による後継者不在という社会問題を抱えています。農林水産業の報告によると、農業の分野では、“農業就業者の7割を占める60歳以上の世代が高齢化等を理由にリタイアし、農地などの経営資源や農業技術が継承されていない”ことが指摘されています。作物が育てられなくなった畑を休耕地として長期間放置すると、雑草や害虫の発生、鳥獣などの野生生物の侵入、ゴミの不法投棄など、さまざまな問題が発生する可能性があります。
この農業の高齢化にともなう休耕地問題に取り組んでいるのが、神奈川大学(横浜市神奈川区)のサッカー部です。
神奈川大学サッカー部によるSDGs活動「竹山団地プロジェクト」
神奈川大学のサッカー部では、築50年の竹山団地(横浜市緑区)を部員の寮として活用しています。竹山団地自治会や県住宅供給公社と連携して、周辺地域の活性化や地域コミュニティーの課題解決に取り組むのが「竹山団地プロジェクト」です。
2022年春から、神奈川大学のサッカー部は、農家の高齢化や後継者不在による休耕地問題を解決するため、横浜市緑区の休耕地約600坪の畑を借り受け、地元のサッカーチーム「Y.S.C.C.横浜」(サッカーJ3所属)と連携し、「Y.S.K.U.ファーム」と名づけた畑で野菜づくりをスタートしました。
このY.S.K.U.ファームでは、農林水産省が設けている特別栽培農産物の栽培基準よりも厳しい基準を設定し、有機肥料率70%以上、農薬使用回数70%以上削減を目指して、さまざまな野菜を育てています。
参考:農林水産省 荒廃農地の現状と対策について
消費者も、生産者も、環境にも貢献する地産地消
Y.S.K.U.ファームで育てられた野菜は、地元神奈川県産の野菜や魚、肉などにこだわって地産地消の料理を提供している「ユニバーサルダイニングONE」(横浜市中区)に、年間を通して供給されます。さらに今後は、横浜市内で開催されるマルシェ等の販売も予定しています。地産地消には以下のような多くのメリットがあります。
消費者にとって
・地元の新鮮で旬な野菜を食べることができる
・生産者を知ることができる安心感
・地域ならではの野菜を知ることができる
生産者にとって
・輸送コストを抑えることができる
・不揃いや規格外品でも販売することができる
・消費者の生の声を聞くことができる
環境面において
・輸送に伴うエネルギーやCO2の削減
また、こちらの「ユニバーサルダイニングONE」では、Y.S.K.U.ファームの野菜を使った地産地消料理を考案。そのフラッグシップとして、今年の8月から「SDGs-YOKOHAMAコース」の提供を開始予定。地産地消に取組むことは、フードマイレージ(食品輸送距離)を減らし、輸送に伴うエネルギーやCO2の削減と、地球環境の負荷の軽減にもつながります。また、上記のように、消費者、生産者にメリットがあるだけではなく、農家の高齢化に伴う社会問題の解決にも結び付きます。
サッカー日本A代表選手を2名輩出している神奈川大学サッカー部。サッカーだけではなく、人間の資質も学んでもらいたいという監督の想いもあり、団地全体の高齢化が進む竹山団地に部員が入居し、共同生活をしています。倉庫の片づけ、草取り、消防訓練、住民にスマホ教室を開催するなど、地域社会、自治会と交流も活発です。学生の人間的成長にも力を入れるあたたかいプロジェクトの今後にも期待します。
企画・編集/井口
ライター/赤塚