初!心の不調を治療する「美術鑑賞券」を医師が処方。その訳とは
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コロナ禍で多くの人が不安などの心の不調を抱き、ストレスと向き合う方法を模索している最中ではないでしょうか。そのような中、ベルギーの首都ブリュッセルでは、医師が患者に「美術館や博物館への無料入場」を処方する試験的なプロジェクトが2021年からスタートしていたのをご存知でしたか?
アート鑑賞がストレス緩和にどう繋がるのか、そしてどのようなプロジェクトなのかをご紹介していきます。
アートを処方箋に。心の不調に芸術鑑賞を
WHOをはじめ、COVID-19に関するさまざまな論文が発表されている中、2022年にイギリスで発表された論文で、コロナ禍における心の不調に対し、アート鑑賞を含む地域や自然との接点が希薄になると、精神障害が生じやすくなるという結果が報告されています。またアートを活用したコミュニティ活動が多くあったとのこと。これらのことも加味すると、心の不調にアート鑑賞が有益なことが明らかになってきているのではないでしょうか。
参考:経産省 第2回 アートと経済社会について考える研究会 資料3 P.60健康格差是正のための地域社会の活⽤
ベルギー・ブリュッセルでのプロジェクトは、どんなもの?
このプロジェクトは、ベルギー・ブリュッセル市内の5つの美術館や博物館への無料入場を、医師が処方するというもの。プロジェクトを率いるブリュッセルの市会議員デルフィーヌ・フーバ氏は「アートの力で、人々のメンタルヘルスを改善したい」と想いを語っています。
どのような人が対象?
では、どのような人がその対象になるのかというと、うつ病やバーンアウト症候群(燃え尽き症候群)などの方。現在、患者と医師が、どの美術館が良いのかを相談し決定した美術館へ、1度、無料入場できるのだそうです。
過去にはカナダで実施
実はこのブリュッセルでのプロジェクトを実施するきっかけは、2018年にスタートしたカナダ・モントリオールの「MMFA-MFdC Museum Prescriptions(美術館の処方箋)」プロジェクト。カナダで行われているこのプロジェクトでは、拒食症や過食症などの摂食障害を抱えている方、自閉症スペクトラム障害(ASD)、乳がん、言語や知的障害など、さまざまな精神的健康に問題を抱える人が対象となっており、最大で50回の処方箋を発行できるのだそうです。またリラックスした状態で、大切な人と鑑賞できるシステムで大人2名と17歳以下の子ども2名まで一緒に入場できるといいます。
ケアのひとつとして
風向きのように瞬時に変化していく現代の情報と情勢。現代人はその情報過多の中で疲れているのかもしれません。日本のZ世代のうち、友達と遊ぶ際、定番の遊び場として美術館がチョイスされているというデータも。国内ではブリュッセルやカナダのような事例はまだありませんがアートで癒してみてはいかがでしょうか。