ケニアが年間62億枚の削減に成功?プラ製レジ袋と海について考える
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ウミガメの鼻にストローが刺さっている心痛む画像を見たことはありますか?何気なく使い、破棄しているゴミが適切に処理されず、行き着く最終地点は海。海の中は人間の行いによって汚染された想像を絶するプラスチックまみれの世界と化しているのが現実です。近年では、私たちが呼吸する大気や飲んでいる水、ミネラルウォーターからもマイクロプラスチックが検出されたとの報告が出ており、私たちは既に毎週5g=クレジットカード1枚分のプラスチックを体内に取り入れているとの試算もあるほど。そんな、海洋の負のスパイラルを食い止めようと国連がスタートさせたのが6月8日の「世界海洋デー(World Ocean Day)」です。
「世界海洋デー」とは
2009年に国連が「海の大切さについて考える日」として制定されました。海洋の汚染問題は年々深刻化しており、毎年約800万トンのプラスチックごみが海に流れていると言われています。プラスチックごみは、海の生物たちの命を脅かすだけでなく、人体にも影響をおよぼす可能性があります。また、漁業・養殖業や観光業にも大きな打撃を与えていて、経済協力開発機構(OECD)の調べによると、世界で年間130億ドル(1兆4,300億円)もの経済的損失がプラスチックごみによる海洋汚染で発生していると言われています。※出典:日本財団ジャーナル
海洋プラスチックごみの7〜8割は街で出たゴミが川や水路を通って海に流れ着いています。つまり、海洋汚染を食い止めるには私たちの生活習慣からシングルユース(使い捨て)のプラスチックの使用頻度から変化を変える必要がありますそんな世界的な課題に対して、日本よりいち早く、使い捨てのプラスチック袋の使用を禁じた国があります。それは、アフリカのケニアです。
ケニアの厳格なプラスチック禁止政策
ケニアでは、特殊な処理技術を必要とする廃棄物も増えており、ごみ処理体制及び法制度が追いつかないず、公衆衛生の低下や環境汚染など、さまざまな問題を引き起こしています。2017年8月28日には、そんな状況を変えるべく、商用・家庭用を問わずビニール袋の使用・製造・輸入を禁止する法律が発効されました。その法律は「世界で一番厳しいレジ袋の法律」としてロイターに取り上げられるほど、罰則が厳しいもので、違反した場合には最大4年間の禁錮刑か4万ドル(約435万円)の罰金が科されます。
また、国内のみならず国外から持ち込むことも禁じられています。旅行者も例外なく所持が発覚すると上記罰則が適用されます。この厳しすぎる法律のおかげで、ケニアでは年間62億枚のレジ袋の削減※1が叶い、国民の80%がこの禁止令に応じることに成功しました。※2
ケニアでは、海洋はもちろんのこと、陸においても使い捨てのプラスチックによる汚染問題が深刻化しています。その存在は食物連鎖を脅かすもので、海の生物だけでなく、硬貨としても使用されている牛の胃からプラスチック袋が出てきたことも大きな影響を与え、改善に向けて少しずつアクションを起こしています。
※1出典:京都大学 Isaac Onyango Omondi
※2出典:National Enviroment Manegment Authority
プラスチック汚染対策が国際条例に?
広島で開かれたG7サミットで各国首脳が合意した文書には、「2024年までに追加的なプラスチック汚染をゼロにする」つまり、新たな汚染を増やさないことが目標として盛り込まれました。マイクロプラスチックには有害な化学物質が吸着しやすく、長期的に私たちの健康や生態系への悪影響が懸念されています。こうしたことから、プラスチック汚染を防止すべきということは今や世界的に合意する動きがアクティブになっています。
また、食物連鎖による被害だけでなく、先進国が途上国にプラスチックごみを燃料代わりとして使用させる「ゴミ輸出」による二酸化炭素排出問題もあり、プラスチック問題は世界が団結して取り組まないと解決することが難しいため、国際的なルールが必要であるとされはじめています。2024年までにウルグアイ・フランス・ケニア・カナダ・韓国で計5回の政府間交渉を予定しており、すでに第二回まで完了しています。残り3回の開催と結論の行方に注目です。
プラスチックごみ問題を解決するには、国連が設定した「世界海洋デー」や、ケニアのようなプラスチック禁止政策のように、国や地域単位での取り組みも必要不可欠です。私たち一人ひとりが意識を高め、行動を変えることが、海洋汚染の解決につながるのではないでしょうか?まずは、今日だけでもペットボトルから水筒に。レジ袋からマイバックに。
企画・ライター 摩耶二コル
編集 内村