実は海外でも処理水の海洋放出事例があった!処理水の海洋放出は安全なのか
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東京電力は8月24日、福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出を開始し、9月11日、タンク10基分7800トンの1回目の放出が計画どおり完了しました。その後、3週間ほどかけて設備の点検などを行い、10月5日、2回目の海洋放出も始めました。このニュースを受けて、国内外で賛否両論の様々な意見が飛び交う事態になっています。みなさんは、処理水の海洋放出についてどう思いますか。今回は、この「処理水」について学んでいきたいと思います。
そもそも「処理水」とは
処理水について、特に国外ではネガティブなイメージを抱いている人が多いですが、今回の処理水は「国際原子力機関(IAEA)」の承認を得ているものになります。大前提として、IAEAは、核兵器の拡散を防ぎ、すべての国が安全・安心に原子力科学を利用できるようにするための、国際連合の保護下にある自治機関です。
今回、福島第一原子力発電所において発生した放射性物質が含まれる汚染水を浄化処理したものを「ALPS処理水」と呼んでいます。トリチウム以外の放射性物質を、安全基準を満たすまで浄化しており、トリチウムについても安全基準を十分に満たすよう、処分する前に海水で大幅に薄めています。また、海洋放出の前後で、海の放射性物質濃度に大きな変化が発生していないかを、第三者の目を入れた上でしっかりと確認しています。経済産業省のホームページでは、ALPS処理水の最新の分析情報を掲載し、随時更新することで誰もがモニターできるように工夫しています。
しかし、こうしたデータがあるにも関わらず、なぜ国内外では批判の声が上がっているのでしょうか。
処理水放出の‟世間”の反応
東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出が始まったのを受けて、日本国内でも特に漁業に携わる人々から、風評被害などを恐れて反対する声が上がっています。福島県の住民や漁業関係者151人は、国と東京電力に対して放出の差し止めなどを求める訴えを福島地方裁判所に起こしました。
中国では、政府が直ちに、日本産の水産物の輸入を全面的に停止すると発表しました。このことを受けて、中国からの国際電話による嫌がらせも相次いでいます。中国SNSでは、「福島で黒い水」「魚が突然変異」など、フェイクニュースが蔓延し、「身勝手で無責任な放水」「極めて利己的で無責任」と日本政府を批判する声も多くあがっています。
韓国メディアでは、「日本は自国の問題で韓国国民・韓国政府へ、さまざまな負担を強いていることを肝に銘じてほしい」と主張し、香港の李家超(ジョン・リー)行政長官は、自身のSNSで「自国の問題をよそに押しつけようとする無責任な試みに反対する」と投稿しました。こうした近隣諸国による一部の過剰な反応に対し、在中国日本国大使館では、ALPS処理水の海洋放出の安全性について、積極的な対外発信を中国語で行っています。
処理水を海洋放出しても大丈夫なのか? 海外の海洋放出事例とは
処理水の処分方法には、地層注入、海洋放出、水蒸気放出、水素放出、 地下埋設の5つがあります。前例や実績があることから、「海洋放出」「水蒸気放出」の 2つが現実的とされ、放出設備の取扱いやモニタリングが比較的に簡単であることから、「海洋放出」の方がより確実に処分を実施できるとされています。
世界各国の原子力関連施設では、以前から処理水やトリチウムを含む水を海洋放出しています。実は、韓国の釜山のようにトリチウムを放出しながらも海産物の名所となっている場所もあります。
具体的な例としては、韓国の月城(ウォルソン)原発は71兆ベクレル(2021年)、中国の秦山(しんざん)第3原発は143兆ベクレル(2020年)をそれぞれ排出しています。その中でも、フランスのラ・アーグ核燃料再処理施設は、1京ベクレル(2021年)と、桁違いの量を排出しています。中国、そして韓国でもすでに海洋放出が行われていたのです。
このような事実は話題にならず、なぜ日本だけが強く批判されるのでしょうか。そこには、歴史的な政治の背景も絡み合っていて、反日感情を煽るための材料にしているメディアもあります。純粋にALPS処理水に対する批判だけという訳ではないようです。だからこそ、正しい情報を取り入れていく必要があります。
福島復興のために私たちができること
ALPS処理水の処分は、廃炉の安全・着実な進展と、福島復興のために必要なことですが、まだまだ国内外でネガティブイメージを持った人が多いのが事実です。私たちがまずできることは、処理水について正しく理解し、風評被害を広げないこと、そして、科学的な根拠のある情報を広く発信し続けることではないでしょうか。