患者と医療者が「ともに考え、決める」医療へ。ノバルティス ファーマが「MOSHIMO Day」で伝えた対話の大切さ
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病気とともに生きる人にとって、必要なのは医学的な情報や治療の選択肢だけではありません。仕事や家族との時間、自分らしい生き方など、一人ひとりが大切にしている思いや価値観も、納得できる医療を考えるうえで欠かせないものです。
患者と医療者が互いの違いを尊重し、それぞれの思いを伝え合いながら、医療を「ともに考え、創るものへ」。そんな対話を社会に広げることを目指すイベント「MOSHIMO Day 2026」が、2026年10月10日に開催されました。
ノバルティス ファーマ株式会社が開催した同イベントでは、患者や家族、医療従事者らが集まり、共同・共有意思決定(Shared Decision Making、SDM)の重要性や、患者一人ひとりの価値観を医療に反映するための工夫について考えました。
患者の声を、より良い医療につなげるために


開会にあたり、ノバルティス ファーマ株式会社代表取締役社長のジョンポール・プリシーノ氏は、イベント名に込めた思いを紹介しました。「もしも」には未来への希望を、「もしもし」には対話の始まりを重ねているといいます。
医療が進歩し、治療の選択肢が広がる一方、患者が抱える悩みや不安は一人ひとり異なります。医学的に適切な治療であっても、生活や価値観が十分に考慮されなければ、本人が納得して治療を続けることが難しい場合もあります。
患者の声を医療に生かすには、患者自身が思いを伝えるだけでなく、医療者がそれを受け止め、治療に反映できる環境が必要です。
歌い続けたい。その思いが治療を考えるきっかけに


イベントでは、IgA腎症の当事者でミュージシャンとして活動する星熊南巫さんが、自身の治療経験を語りました。
星熊さんにとって、歌うことは仕事であると同時に、自分らしい生き方そのものです。治療や手術を考える際には、病状だけでなく、これからも歌い続けられるのか、仕事や日常生活にどのような影響があるのかが大きな不安だったといいます。
そこで、自身の仕事や生活、治療への希望や不安を医師に伝え、生活背景も踏まえながら治療の時期や方法をともに検討しました。扁桃腺摘出手術についても、歌う仕事への影響に配慮してもらえたことが安心につながったと振り返ります。
患者が希望を伝えることは、わがままではありません。医療者がその人に合った治療を考えるための大切な情報です。星熊さんは、患者が医学の専門家になる必要はなく、自分の体について知り、大切にしたいことや不安を整理して伝えることが重要だと話しました。
現在は、日本のIgA腎症患者が経験や思いを共有し、治療への参加について一緒に考えられるオンラインコミュニティの立ち上げも準備しています。患者同士がつながることも、自分に合った医療を考えるための支えになります。
医学的な正しさだけでは決められない「SDM」


京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野の教授 中山健夫先生は、SDMについて解説しました。
医学的なエビデンスや診療ガイドラインは重要ですが、治療の選択には患者の生活背景や価値観も関わります。治療の効果だけでなく、仕事を続けられるか、家族との時間を確保できるか、日常生活への負担はどの程度かといった点も、判断するうえで大切な要素です。
中山先生は、SDMで共有すべきものとして「情報、目標、責任」を挙げました。医療者は治療の選択肢やメリット・デメリットを伝え、患者は自分の価値観やライフスタイル、大切にしたいことを伝える。双方が情報を持ち寄り、納得できる選択を一緒に探していきます。
SDMは、患者に決定を一方的に委ねることでも、医療者にすべてを任せることでもありません。互いの知識や経験を共有し、その人にとってより良い選択をともに考えるプロセスです。
診察室での対話を支える、小さな工夫


パネルディスカッションでは、患者が思いを伝えるための具体的な工夫も紹介されました。
慢性特発性じんましんの当事者である安藤奈名子さんは、症状が夕方から夜に出やすく、受診時に医師へ見せにくいという悩みを共有しました。そこで、受診歴や服薬歴、症状の部位や程度などをまとめた「症状カルテ」を作成。記録を持参することで、医師と症状を振り返り、治療について話し合いやすくなったといいます。
IgA腎症の当事者で看護師でもある堀寛美さんは、血圧手帳に付箋を貼り、医師に伝えたいことを3行程度にまとめる方法を紹介しました。要点を書き出しておくだけでも、質問や説明のきっかけになります。
一方、医療者側から患者の生活に目を向けることも欠かせません。日本調剤柏の葉公園薬局の外来がん治療専門薬剤師、渡辺富美子先生は、薬の効果や副作用だけでなく、患者が日常生活で何に困り、何を我慢しているのかを把握する重要性を説明しました。皮膚症状のある患者がゴルフを希望した際、プレーするホール数を減らしたり、移動にカートを利用したりする工夫を提案した事例も紹介されました。
患者が大切にしていることを知れば、治療と日常生活を両立する方法を一緒に考えられます。対話を成立させるには、患者が声を上げる工夫と、医療者がその声を受け止めて支援につなげる仕組みの両方が必要なのです。
「MOSHIMOアクション助成金」で、対話の輪を社会へ
イベントでは、患者と医療者の対話を社会全体に広げるための「SDM共創宣言」が発表されました。
また、この宣言の理念を具体的な行動につなげるため、新たに「MOSHIMOアクション助成金」の創設も発表されました。患者団体などが実施する対話促進や教材・ツール開発、実態調査などの活動に対し、最大2団体へ各50万円の助成を行うプログラムです。募集期間は2026年10月10日から2027年1月31日までとされ、診察室の対話を地域や社会の実践へと広げる後押しとなります。
対話とパートナーシップで、より良い医療環境へ


「MOSHIMO Day」が目指すのは、患者と医療者が診察室で対話することだけではありません。病気とともに生きる患者や家族、医療従事者、企業、そして社会全体がそれぞれの立場から思いを伝え合い、互いの違いを尊重しながら、納得できる医療をともに考える。その対話を社会に広げていくことです。
この取り組みは、SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」に深く関わっています。一人ひとりの状況や価値観が尊重され、患者が納得して治療に参加できる環境を整えることは、誰もが健康で自分らしく生きられる社会を目指すうえで重要です。
同時に、患者、家族、医療従事者、企業などが立場を超えて対話し、協力しながら、より良い医療環境をつくろうとする姿勢は、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」にもつながります。
医療に関わる一人ひとりが互いの立場を理解し、共通の目標に向かって協働することが社会全体の変化を生み出す力となります。
医療のあり方を変えるために必要なのは、医学の進歩だけではありません。一人ひとりの声に耳を傾け、その人が大切にしていることを理解し、ともに考える姿勢も欠かせないのです。
患者の思いを医療に生かす対話を、個人の努力だけに委ねず、社会全体で支えていく。「MOSHIMO Day」は、誰もが自分にとって納得できる医療を「ともに考え、決める」社会の実現に向けた一歩となる取り組みです。





