男性専用サウナが多い理由とは?銭湯の歴史からみるジェンダーの壁
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だんだんと暖かくなり、朝と夜の寒暖差に服装が困る季節になりました。汗ばんだ時には銭湯やサウナでさっぱりしたいですよね。2023年3月には、北海道日本ハムファイターズの新球場ES CON FIELD HOKKAIDOの内に世界初の球場内天然温泉・サウナ施設が誕生。4月には東京都港区赤坂に関東最大級のサウナ施設「サウナ東京」(男性専用)もオープンするなど都内でも続々と大型スーパー銭湯やリノベーションをした老舗のデザイナーズ銭湯・サウナも増えてきています。数年前から始まったサウナブームは、男性を中心に広まっていったような雰囲気でしたが、今では女性のサウナーも増加しています。しかし、サウナは男性専用のお店が多いことはご存知でしょうか。サウナや大きなお風呂に入ってゆっくり時間を過ごしたい!けれど男性専用で入れなかった…ということが多々あるのです。なぜ女性も入れるようにつくらなかったのか、銭湯の歴史を振り返りながら考えていきたいと思います。
日本のサウナの原点は沐浴か
風呂の始まりは、諸説ありますが6世紀ごろに渡来した仏教とも。汚れを洗うことは仏に仕える者の大切な仕事という意味もあった”沐浴”。昔は浅い浴槽に少ないお湯を張っていたとされ、ほとんど蒸し風呂状態で入っていたためサウナに近しかったことも考えられます。日本人のサウナーの原点はここからきているかもしれないと思うと感慨深いですね。
女湯より男湯の方が広いのはなぜ?
今では女性専用サウナの登場など、女性も入りやすい機会が増えていますが、老舗旅館などの浴場は男湯より女湯の方が小さいことがありますよね。その昔、江戸時代の温泉は基本的に「入り込み湯」と言われる混浴スタイルでした。江戸時代の末期までその状態が続き、風紀が乱れることもあったとされます。そして厳しく取り締まりが行われた結果、浴槽の真ん中に仕切りをつけたり、1つしかない浴場を男湯、女湯と日で分けられたのが、今の銭湯の形です。
時代は移り、その後温泉街として観光地となっても、当時の団体旅行客は男性が多いことからそのままの形でも困ることはありませんでした。そのため、現存する築年数の経っているデザイナーズ銭湯の一部では、設計上リノベーションをしても、女湯を広くすることは難しいことも。昔の名残として女湯の方がコンパクトサイズになっているケースが多く存在します。
また女湯の方が景色が良くない、という声も。露天風呂で景色を楽しみながら湯に浸かることと、外の視線を遮ることの両立は、バランスが取りにくいのかもしれません。
女性専用スパ・サウナも増加
銭湯の歴史をさかのぼると温浴施設の男女差があるのも理解できます。女性は月経のため、1ヶ月に1週間は積極的に風呂に浸かれない人も一定数存在するので、そういった視点で考えると男性専用の温浴施設市場が先に発展してきたのも分かります。
しかし今では生理用品も進化し、低用量ピルの服用が珍しくなくなってきたりと、月経をコントロールする方法が増え、女性が温浴施設を楽しみやすくなりました。
そのような社会の変化もあってか女性専用のスパ・サウナも増えています。2023年4月に愛知県栄市にある男性専用の有名サウナ「ウェルビー」の栄店3階には、女性専用サウナ「フォレストハウス」がオープンしました。
また、サウナ好きには欠かせない「熱波」ですが、受けたい女性は(女湯に男性熱波師が入れないことから)なかなか機会がありませんでした。近年では、サウナ内で熱風を送る職人「熱波師」の資格取得した女性が、女湯・男湯のサウナで活動をするなど、銭湯やサウナに女性が関わることが普通の時代になってきています。
トランスジェンダーを取り巻く課題も
公共施設・商業施設におけるジェンダーレストイレが海外では文化として根付いていたとしても、日本の文化に取り込むにはまだ時間がかかりそうです。細かい課題は山積みですが、銭湯も同様に、すべての人を受け入れる体制は確立できていません。LBQT法案への賛否や修正事情をみても、正しい性差の理解と、さまざまなセクシュアリティの人が心地よく利用できるような環境とは何か、引き続き対話を重ねていくことが必要です。