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全国の地価が上昇中!都心?郊外?地方移住?住む場所を改めて考える


この記事に該当する目標
11 住み続けられるまちづくりを
全国の地価が上昇中!都心?郊外?地方移住?住む場所を改めて考える

ニュースやテレビ番組で「日本で一番高い土地」は、銀座4丁目の「山野楽器銀座本店」である、ということを耳にしたことはないでしょうか。このような土地の価格について2023年3月、国土交通省が令和5年の地価公示を公表しました。この発表によると、全国の土地価格は2年連続で上昇。首都圏や地方都市以外の地域でも住宅地の地価が28年ぶりに上向き、地価上昇の流れが地方にも広がってきています。さて、今回はこの「地価」について知ることで、私たちの今後の暮らし方について考えていきましょう。

「地価公示」って?地価の仕組みを知ろう

地価公示とは、全国で選定された約2〜3万の地点を対象に1月1日時点の1平方メートル当たりの正常な価格を国土交通省土地鑑定委員会が判定し、毎年3月下旬に公表するものです。ここで発表された価格を、私たちが土地を取引する際の指標として使います。さらに、固定資産税評価や相続税評価のもとになる重要なものです。2023年の地価公示では、主に下記のような点が話題になっています。

・埼玉や千葉などで顕著な地価の上昇

今回は、東京圏といわれる埼玉、千葉、神奈川、茨城の4県の一部で、大きな上昇が見られました。最も顕著だった千葉県では、浦安市で9.7%。次いで、市川市が6.8%、埼玉県では、戸田市が5.8%という結果に。これは、結婚や出産を機に都内から郊外(ベッドタウン)へ移り住む人が増えたことが影響しているといえます。家庭を持つタイミングで少しでも広い戸建てに住みたいと考える人が多いようです。

・北海道、沖縄で大幅に上昇

地方では、北海道、宮城県、佐賀県、熊本県、沖縄県で大幅な上昇がありました。新型コロナウィルスの流行が落ち着き、富裕層の消費が動き始めたことや海外からのインバウンド需要の回復が期待されて、このような地価の上昇につながっています。  特に、北海道北広島市では、日本ハムファイターズの新しいホーム球場「北海道ボールパーク HOKKAIDO BALLPARK F VILLAGE」の開業が大きな話題となっています。これに伴い、道路などのインフラの整備やホテルやショッピングモールなど商業施設が建設され、球場付近の利便性が向上することで人気が出ています。また、隣の札幌市に比べて地価が安いということもあるようです。
沖縄県糸満市西崎町は、プラス25.9%と驚くべき数字になりました。全国の工業地で最も地価が上昇。道路整備により西崎町からの空港や港へのアクセスが向上したことで、物流施設の需要が高まっていることが大きな要因です。

・東京23区すべての区で地価が上昇

昨年、2%以上の上昇が見られた区は、江東区、豊島区、杉並区、中野区などを含む8区だったのに対し、今年は23区すべてで2%以上の上昇がありました。このような住宅需要が起こっている理由は、都心でのマンション人気が高まっているから。特に駅からなどの利便性が高いマンションでは、ほとんどの部屋が1億円超えの「億ション」。マンション投資とも呼ばれるように継続的に地価が上がる都心だからこそ、資産として持っておきたいと考える人が多いようです。

なぜ都市部に集中するの?「あんドーナツ化現象」

都心部の地価は上がり続けるのにも関わらず、それでも人が同じところに集まる理由は何なのでしょうか。全国で最も公示地価が高い銀座4丁目では、1平方メートルあたり5380万円。前年比からさらに1.5%上昇し、全国最下位の470円に比べて約11万倍の数値となっています。東京の都心部の地価は上がり続ける一方ですが、いわゆる「ドーナツ化現象」のような形で、都心部から郊外へ多く人が流れこむという動きは、一時期に比べてそれほど見られていないそうです。この理由としては、主に2つ考えられます。まずは、今後も続く地価の上昇を見込み、将来は売るということも考えて購入する場合。もしくは、リモートワークが終了し、改めて通勤の便利さを求めて、都心に住みたいというニーズが高くなっているということです。これに加えて、首都圏郊外の地価、需要も上昇しているため、敢えて郊外に住むよりも都心部に人が集中してしまっている現状。この現象はドーナツ化現象をなぞらえて「あんドーナツ化現象」とも呼ばれています。長く続く不景気や少子化といった中で増える会社員の共働き世帯が、都心部を好む傾向もあるようです。

進む二極化。地方の地価上昇へのカギは。

今年の地価公示の大きな特徴として、東京・大阪・名古屋といった「3大都市圏」と札幌市・仙台市・広島市・福岡市の「地方4市」以外の地域でも、住宅地の地価が28年ぶりに上昇したという点があります。都心部への人口集中が目立つ中で、人口の流出を防ぐ、流入を促すような施策を行うことで、地価を上げている地方も存在します。その一例を見てみましょう。

・北海道栗山町

地方で農業をしたいという移住者を呼び込むことを目的に2年間の就農支援を行っています。また、全国のクリエイターたちが「ものづくりDIY工房」を自由に活用してものづくりができる環境を提供し、滞在期間には栗山町の良さや作成した作品等をSNSを通じてアピールしてもらうプログラムも行っています。

・島根県浜田市

移住者に対して2人の専任相談員を設置し、暮らしや仕事については「定住相談員」、住まいは「空き家バンク相談員」が対応します。空き家バンクの登録は、市内からの転居も含めると毎年の成約率は約80%。賃貸を希望しがちな若い移住希望者に対しても、空き家バンクをおすすめすることで、住める場所の選択肢が広がっています。空き家の改修助成には、上限30万円(UIターン者・市内在住者でも40歳未満なら50万円)の優遇をしており、移住者に住みやすい環境を提供するための施策を積極的に行っています。

新型コロナウィルスも落ち着き、ゆるやかな景気回復の波が見られる中で、地価についても今後大きな動きがみられることが予想されます。都心部の地価が上がることで起こる「あんドーナツ化現象」がはらむ問題は、環境問題や都市の景観上の問題、小学校や保育園の不足による自治体の財政の混乱などを引き起こすことも考えられます。一方で、地方には雇用が少なかったり、インフラ整備の課題も多く、まだまだ住みにくいと思われる部分も。SDGsの目標11には「住み続けられるまちづくりを」がありますが、持続可能な都市開発を行うことは地価の上昇や人口の増加などその都市の活性化、さらにその先にあるSDGsの達成、というところにもつながっていきます。 みなさんも自分の今後の暮らし方や暮らす場所について、今一度考えてみてはいかがでしょうか。