それって変えた方がよくない?根強く残る日本の古い価値観を考えよう
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多くの人は子どもの頃、体育の時間や学校の集会などで「体育座り」をしていたと思います。実はいま、この体育座りを廃止する学校が増えてきているのです。日本トレンドリサーチの調査によると、体育座りは、内蔵を圧迫するうえに、坐骨神経痛や腰痛の原因になると言われています。今回は、体育座りのように日本では昔から当たり前のように行われていたことですが、これから持続可能で、強くしなやかな世界に向かうために廃止したり、変えた方がよいことを取り上げます。
実は昔から法律で禁止されていた体罰
教育の現場における体罰は1947年に定められた学校教育法で禁止されています。第11条に「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、学生、生徒及び児童に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。」とあります。懲戒と体罰の違いが分かりにくいですが、具体的に体罰とは、
・授業中にトイレに行かせない
・授業中は喉が渇いても水を飲んではいけない
・時間内に食べきれない給食を無理に完食させる
・授業中に指導の一環で廊下や教室の後ろ・前に立たせる
なども含まれます。数十年前の教育現場ではよく見られた光景ですよね。現在はどうなのでしょうか。文科省の2020年度に全国で行われた調査によると、高校では194件、中学147件、小学校では123件の体罰に関する報告がありました。体罰の内容で1番多かったのが、素手で殴る・叩くで224件(46%)、次が蹴る・踏みつけるで59件(12%)、そして棒などで殴る・叩く が35件(7%)でした。これらの体罰による傷害は「無し」が378件(78%)で、どちらかというと軽微なものが頻発しているようです。いくら傷害がなかったとしても、成長過程の生徒たちには、心の傷が見えないところでついています。これが将来的に大きな影響を与えることも少なくはありません。
教育者が体罰を行ってしまう理由の多くは、感情的になってしまったということです。これには、衝動的な怒りの感情やイライラを上手にコントロールするためのアンガーマネージメント研修を積極的に取り入れていくことが有効だといえます。
温泉文化では当たり前だけど。親子での入浴はおかしい?
日本政府は2020年12月に、混浴に関するトラブル等の防止のため「公衆浴場における衛生等管理要領」を改正し、混浴制限年齢を10歳以上から7歳以上不可に引き下げました。これに伴い、全国的に銭湯や温浴施設などの公衆浴場で、子どもの混浴制限の年齢を見直す動きが広がっています。神奈川県では、横浜、川崎、相模原の3政令市において2022年4月1日から、その後10月には神奈川県内全市町村(藤沢市を除く)で混浴不可の年齢が7歳以上となりました。子どもの発育を考慮した国の要領ですが、海外では元々、親との混浴はありえない習慣のようです。特にアメリカでは、裸になる浴室はプライバシーが守られるべき場所という価値観が当たり前で、同性でも親子で一緒に入浴はしません。むしろ、一緒に入った場合には性的虐待だと思われることがあります。映画「となりのトトロ」のメイとサツキ、父親の三人でお風呂に入るシーンが物議を醸したのは有名な話です。
実際に、子どもが異性に裸を見られた時に羞恥心を感じるのは、6歳頃からと言われています。また、悲しいことに親子間での性的虐待は発生していますし、子どもはそのような事実があっても声をあげにくい弱い存在です。特に男児の性被害は、明らかにするのが難しい現状があります。いくら温泉や銭湯が日本の文化だと言っても、時代の流れに合わせて世界基準にしていく必要があるのではないでしょうか。
登下校時の苦痛!小学生にはランドセルが重すぎる
小学生は毎日どのくらいの重さのランドセルを背負って通学しているのでしょうか。健康づくりの心身教育ウェアを販売するフットマークが行った「ランドセルの重さに関する意識調査」によると、小学生の7割近くが3キログラム以上のランドセルを背負っていることがわかりました。この結果、「ランドセル症候群」の子どもが増加しているそうです。ランドセル症候群とは、重いランドセルを背負い続けることで、筋肉痛や腰痛、肩こりが発生することです。さらに、登校が憂鬱になり、学校に行くのが嫌になってしまう場合もあります。
ランドセルには、転倒時のクッション代わりとなったり、雨でも中身が濡れないという利点があります。しかし、重くなってしまうと意味がありません。宿題や予習・復習をするための必要最低限の荷物だけ持って帰れるような工夫ができるといいですね。
その他の荷物は学校に置いてきても大丈夫なように、学校側が仕組みを作っていくことも期待されます。
日本特有の上下関係・エイジハラスメント
日本は、世界各国の中でも比較的年齢の上下関係がはっきりしている国です。例えば、「団塊の世代」や「ゆとり世代」など、各世代に名前がついているのも年齢による区別が明確な表れです。なんとなく初対面の人の年齢が気になったり、敬語を使うべきかどうか悩んでしまうのも日本ではあるあるですよね。中には新人だから、とか、若いからということだけで、相手にアドバンテージをとろうとする人もいます。このように年齢や世代による区別で嫌な思いをさせることを、エイジハラスメントといいます。テレビ朝日系ドラマ「エイジハラスメント」では、「25(歳)以上は女じゃない」、「30(歳)過ぎた女に彼氏がいるかどうか聞けない」というセリフがあります。まさに年齢による差別ですね。
また、年齢を知った際に、その年代の特徴に当てはめて、勝手に相手の性格やステータスを決めてしまうこともよくあることです。ここからミスコミュニケーションが始まります。年齢の先入観や偏見を払拭した上で、相手と接することができれば、よりヘルシーな人間関係がつくれるようになるでしょう。
外国の人にはなかなか理解されない日本の習慣・価値観を紹介しました。「わたしたちは、持続可能で、強くしなやかな世界に向かう道を歩んでいくために、今すぐ大胆で変化をもたらす行動を起こすことを決意します。」とSDGsの前文・宣言にありますが、古くから根付くもの・ことを変えるのには、とても時間がかかります。果てしない目標のように思えますが、1人でも多くの人に「新しい倫理観」をつくっていく必要性を知ってもらえたら嬉しいです。