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世界的クリエイター16人がデザイン。渋谷を彩る「アートトイレ」何のため?


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6 安全な水とトイレを世界中に
世界的クリエイター16人がデザイン。渋谷を彩る「アートトイレ」何のため?

世界的クリエイター16人がデザインしている、見たことのないような公衆トイレが、渋谷区に出現しているのをご存知でしょうか。その名も「THE TOKYO TOILET」。17ヶ所施行予定で、2023年2月時点で既に14ヶ所完成しています。一体何のためなのでしょう。日本の公衆トイレが抱える課題を改めてみていきましょう。

編集部のオフィスの徒歩5分の裏参道にも新トイレが誕生!

画像出典:THE TOKYO TOILET

最新の「THE TOKYO TOILET」は、なんと我らがSDGs MAGAZINE編集部オフィスから徒歩5分の裏参道。Apple Watchのデザインも手がけた世界が羨むデザイナーマーク・ニューソンの建築作品です。銅製の「蓑甲(みのこ)屋根」をはじめとする日本の伝統的な建築の引用が中心となっていて、トイレが賑やかで超近代的な場所にあっても、神社仏閣や茶室、農村部などによく見られるこの屋根の形が、潜在的に心地よさや安らぎを感じさせてくれます。

画像出典:THE TOKYO TOILET

内からも外からも信頼でき、誠実さが感じられるデザインであることが重要と考えられたこのトイレ。明るい内装は、デザイナー本人の好きな色であるグリーンの単色でシームレスかつ衛生的に仕上げられています。このトイレのデザインでは機能性、シンプルさ、そして心地よく永続的な空間であることに重点を置いています。外観・デザインだけではなく、オストメイト※など障害のある人が使える設備、ベビーケアルーム、ベビーチェア、着替え台など、まるでデパートのトイレのように設備も整っています。
※オストメイトとは:様々な病気や事故等により、お腹に「ストーマ(人工肛門・人工膀胱)」という排泄口を造設した人のこと。ストーマ装具(袋)を貼って、そこに排泄物を溜める。(参考:厚生労働省ホームページ

そもそも、THE TOKYO TOILETとは?

画像出典:THE TOKYO TOILET

トイレは日本が世界に誇る「おもてなし」文化の象徴。温水洗浄便座の家庭普及率も高い日本。その性能の良さから、インバウンド客が温水洗浄便座を「爆買い」しているのも記憶に新しいですよね。その一方で、日本の多くの公衆トイレが、暗い、汚い、臭い、怖いといった理由で利用者の多くがネガティブなイメージを持っている状態にあります。

画像出典:THE TOKYO TOILET

筆者自身も2児の母で、よく公園へ行くのですが、どうしようもない非常事態のとき以外は、できるだけ公衆トイレの使用は避けていました。実際、匂いも気になるし、暗いし、防犯性が低く感じるところも少なくありません。特に築年数のある公衆トイレは、女性や子供、障害者は使いにくいこともあります。「THE TOKYO TOILET」は、性別、年齢、障害を問わず、誰もが快適に利用できる公衆トイレを、優れたデザイン・クリエイティブの力で、インクルーシブな社会のあり方を広く提案・発信していこうというものです

画像出典:THE TOKYO TOILET

画像出典:THE TOKYO TOILET
NIGO®デザイン監修、清掃員オリジナルユニフォームを制作

加えて、訪れた人々に気持ちよく利用できるよう従来に比べ清掃をはじめとしたトイレの維持管理を強化しているそうです。これにより、利用者自身が次に使う人のためを思う「おもてなし」の心の醸成も目指しています。

画像出典:THE TOKYO TOILET

渋谷の新名所として海外からも注目されている17の公衆トイレ。わざわざ行ってみたいと思えるおしゃれなトイレから、利用客のマナー向上にもつながる仕組みは、今後も定着するのでしょうか。トイレをきれいにすることから、街をきれいに。より住みやすい街づくりの一つとなるはずです。

年に200個ペーパー支給も。コンビニトイレの公共化には賛否

画像出典:大和市

社会におけるもう一つの「公衆トイレ」として浮かぶ、コンビニのトイレについては神奈川県大和市でこんな取り組みも。2022年2月に発表された「大和市公共のトイレ協力店登録事業」は、既に一般に開放されている民間トイレの中で、公共性の高いコンビニエンスストアを対象に、協力店舗を「大和市公共のトイレ協力店」として登録するというもの。高齢な方を中心とした誰もがトイレの心配をすることなく外出できるよう、外出先で誰もがいつでもどこでも安心して利用できる公衆トイレの環境づくりの一歩として、トイレの量的な充実を図る施策でした。しかし、管理体制の不安や売上への貢献が見えにくいなどのオーナーの不安の声もあり、トイレットペーパー200ロールの支給補助があってもなかなか好調には進まない結果に。

ローソン関東3店舗では「アートトイレ」が活躍中

画像出典:ローソン

その一方で、2022年11月18日から、東京・神奈川の3店舗のローソンでは、アートトイレが設置され成功事例として活躍しています。トイレとアートとの掛け算により利用客のマナーが向上し、清掃やメンテナンスの回数が減ったり、従業員のモチベーションがアップしたりと、実施期間が延長となったそうです。

SDGsには「安全な水とトイレを世界中に」として、「だれもが安全な水とトイレを利用できるようにし、自分たちでずっと管理していく」という目標をうたっています。当たり前にどこにでもトイレがある日本、もうすでにクリアになっているのでは、と思って見逃してしまいがちなこの目標ですが、ただあればよいという問題ではないことを覚えておきたいですね。