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【韓ドラが影響?】韓国のいじめ「学暴」の記録が義務化


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【韓ドラが影響?】韓国のいじめ「学暴」の記録が義務化

韓国では、日本の「いじめ」にあたる行為を、学校内暴力の「学暴」と呼んでいることをご存知ですか?米国で大きなムーブメントになった#Me Tooを模した「#学暴MeToo」という新造語で呼ばれ、SNS上での告発が増えており、韓国政府をも動かしています。

入試試験、いじめによる処罰記録の記載を義務化

韓国政府は今年4月12日、大学の一般入試の選考に、生徒がこれまでにいじめなどの校内暴力に関わった記録を反映させる方針を発表しました。2026年から、韓国の大学入学共通テスト「大学修学能力試験」の選考にも反映することを、すべての大学に義務づけます。これまでも韓国では、推薦入試において過去に加害者として処罰を受けた場合には、選考にその記録が反映されていましたが、この新しい義務化により、推薦入試だけでなく、一般入試にも影響を及ぼすことになります。韓国政府が学暴への対策を強化した背景には、2023年に放送を開始し、世界で大ヒットした韓国ドラマが影響していると言われてます。

大ヒット韓ドラ「ザ・グローリー」から読み解く、韓国のいじめ事情

今年、ストリーミング配信サービスNetflixで大ヒットした韓国ドラマ「ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜」は世界及び韓国国内において、社会に大きな影響を与え、韓国政府をも行動に移させる反響がありました。

画像出典:Netflix Japan 公式
物語は、学生時代に過酷ないじめを受けた主人公が、加害者へ復讐を行うというもので、20年程前に実際に起きたストーリーを基にした作品です。ストーリー自体は復讐というシンプルなものですが、韓国で実際に問題になっている残酷ないじめの実態が描かれています。同ドラマは、公開初週には1億2446万の視聴時間を記録。また、Netflix非英語圏のテレビ部門で、3週連続第1位を獲得するほど世界中をトリコにしました。現実に起こっているとは信じがたい校内暴力の残酷な現実を盛り込むと同時に、家庭内暴力・教師暴力・児童盗撮犯まで多様な問題を指摘しています。

韓国では経済格差や上下関係が大きく起因していると考えられます。過激ないじめの背景には、大学入試のために受験教育が中学から始まることで、成績で個人の評価に順位として優劣をつける文化があります。また、日本と違い中学以降はクラブ活動なども活発でなく、受験のための学びがメインになるため、協調性や共同制作などのカリキュラムや習い事も減少します。つまり、子どもたちのストレス発散の場所がないことが残酷な学暴に繋がる要因だと考えられています。

韓国におけるいじめが、学校内暴力の「学暴」と称されるのも、呼んで字のごとく「暴力」が加わる非常に残酷なものだからです。それはドラマの中でも描写されている、ヘアアイロンを使った暴行や、殴る、蹴るのような死に至る行為から誹謗中傷など肉体・精神的にダメージを与えるものまであります。また、ドラマ内では教師らも学暴に対し、経済的に優位な生徒を庇う仕組みも描いています。

日本の現状

日本に目を向けてみると、昨年10月に令和3年度の「問題行動・不登校調査結果」が公表され、小・中・高等学校におけるいじめ認知件数が61万5,351件と前年度比9万8,188件増え、過去最多を記録したことが分かっています。また、同じく暴力行為の発生件数も 76,441件と約1万件の増加が見られます。韓国がいじめを学暴と呼ぶのに対し、日本ではこの調査では、いじめと暴力について分けて考えられているようです。文科省の上記調査内における暴力といじめの解説が以下のように掲載されていました。
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「暴力行為」とは、「自校の児童生徒が、故意に有形力(目に見える物理的な力)を加える行為」をいい、被暴力行為の対象によって、「対教師暴力」(教師に限らず、用務員等の学校職員も含む。)、「生徒間暴力」(何らかの人間関係がある児童生徒同士に限る。)、「対人暴力」(対教師暴力、生徒間暴力の対象者を除く。)、学校の施設・設備等の「器物損壊」の四形態に分ける。ただし、家族・同居人に対する暴力行為は、調査対象外とする。
なお、本調査においては、当該暴力行為によってけががあるかないかといったことや、けがによる病院の診断書、被害者による警察への被害届の有無などにかかわらず、当該暴力行為の内容及び程度等が次の例に掲げているような行為と同等か又はこれらを上回るようなものを全て対象とする。

「いじめ」とは、「児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係にある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの。」(いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号)。(以下「法」という。)第2条第1項)をいう。なお、起こった場所は学校の内外を問わない。
本調査において、個々の行為が「いじめ」に当たるか否かの判断は、表面的・形式的に行うことなく、法が制定された趣旨を十分踏まえ、行為の対象となった者の立場に立って行うものとする。
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/shidou/yougo/1267642.htm
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言葉を変えることによるいじめの抑止力が本質的な解決策ではないものの、「何が暴力となるのか」、この点において改革が必要なように思います。いじめは恐ろしい罪で、「成長段階の幼い時の話」では収めることができないものです。

企画・ライター/ マヤニコル
編集     /内村