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患者の9割が抵抗感「糖尿病」名称変更へ。偏見を払拭したい病気は他にも


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3 すべての人に健康と福祉を
患者の9割が抵抗感「糖尿病」名称変更へ。偏見を払拭したい病気は他にも

人生において、病気にかかることは何度もあります。幼少期は健康でも、大人になると、さまざまな病気にかかることが増えてくるものです。
しかし、病名のせいで「なかなか言い出せない」「なんだか恥ずかしい」と悩みを感じてしまう人も少なくありません。診断が遅れ、病状が悪化してしまうケースもあるようです。今回は、病名が理由で偏ったイメージを抱かれてしまう病気について見ていきましょう。

糖尿病、2023〜4年には名称変更へ。

糖尿病は、肥満や運動不足、食べすぎによって高血糖が続く病気です。足が痛むなどの症状があらわれ、生活が制限されてしまいます。また、ほとんど症状がないまま深刻な合併症を起こすケースも多く、「サイレントキラー」とも。
戦前、戦後の頃、糖尿病はぜいたく病とも呼ばれていました。理由は、食に困って栄養失調になる人がたくさんいる中、食べ過ぎが起因で起こる病気だったためです。しかし、飽食の時代といわれる現代ではぜいたく病という呼称は適切ではありません。
日本糖尿病学会が2022年に発表した「糖尿病の病名に関するアンケート」では、糖尿病の患者の8割が名称変更を希望しているという結果に。患者の9割が「糖尿病」という病名に「抵抗感」や「不快感」を感じているということがわかりました。日本糖尿病協会は日本糖尿病学会とも連携し、今後1〜2年のうちに新たな名称の検討を進めると発表しています。

画像出典:TikTok

また、生活習慣とは無関係に発症する「1型糖尿病」の存在も、若者を中心にTikTokでも発信が広がっています。自己免疫反応の異常やウイルス感染により、すい臓のβ細胞を自分で攻撃してしまい、インスリンを出す機能を壊してしまうタイプ (自己免疫性)と原因不明のタイプ(特発性)が存在します。
参考:ノボ ノルディスク ファーマ 糖尿病サイト

1996年「生活習慣病」に改名された「成人病」

食事や運動、喫煙などの生活習慣が深く起因する病気の総称である生活習慣病は、かつて成人病と呼ばれていたことを覚えていますか?
成人病は1956年に初めて厚生省(現在の厚生労働省)の書類に登場してから、その後約40年にわたって利用されてきました。中高年になれば誰でもかかってしまうものと考えられていたことから付けられた名前です。
しかし、成人病に関する研究が進んだ1996年、生活習慣を改善すれば回避できると判明。そして当時の厚生省が生活習慣病への改称を提案しました。これには、医療技術が進み、これまで健やかに老いられるように生きていた人々が、老いても健やかでいることを目標とし始めたことも理由のひとつとしてあるようです。

今も「名前」のせいで言い出しにくい病気

名前からくるイメージを払拭するために改称された病名は、それほど多くありません。現代においても、名前のせいで言い出しづらい病気があります。しかし、これらの多くは、誰にでもかかる可能性のあるものです。その考えられているイメージと実態には、一体どれほど違いがあるのでしょうか?

水虫

水虫とは、カビの一種が人間の皮膚に寄生することによって起こる病気です。水虫にかかった人の皮膚からはがれ落ちる角質に、素足で触れるだけでも感染します。菌が高温多湿なところを好むことから、発症は9割が足とも言われているようです。
水虫のイメージとして「不潔」「男性がかかるもの」と考えている人も多いのではないでしょうか?そのせいか、ノバルティスファーマが2014年に行った調査では、30代女性で「恥ずかしくて病院に行けない・薬が購入できない」と考えている人が約7割もいました。
たしかに以前は男性患者が圧倒的に多かったようですが、現在は女性の患者も増加しています。理由は、一日中靴を履いている人は男性が多かったものの、現在は女性も一日中靴を履いていることが増えたため。女性が社会進出をしている証でもあります。
菌が感染して発症するという仕組みは風邪と同じものなのにもかかわらず、イメージのせいで受診を控えている人が多くいる現状は、すぐにでも変えなければなりません。

性感染症(性病)

今国内で流行中の梅毒を含め、多くの人がなかなか口に出しずらい、診察に抵抗感を感じるのが、性感染症(性病)ではないでしょうか?予防会によると、現在は法改正により、正しくは「性病」ではなく「性感染症」とされています。梅毒や性器クラミジア感染症、HIVなど、性的接触によって感染する病気の総称として使われていますが、性的接触以外でも発症する性感染症もあります。現在はSTD(Sexually Transmitted Diseases)やSTI(Sexually Transmitted Infections)とも呼ばれているようです。
主に、性行為、キス、オーラルセックスなどの性交渉によって感染するため、性交渉の経験がある人なら誰でもかかる可能性があります。風俗街の病気というイメージを持っている人もいるようですが、症状が出にくいため、知らないうちに感染している場合も。なお、まれに銭湯で同じイスを使っただけで感染したというケースもあるようです。無症状が多いため、パートナーが変わるごとに検査を受けることが、感染拡大の防止につながります。「恥ずかしい」と検査を控える人も多いようですが、大切な人の体を守るためにも、こまめな検査が推奨されています。
また、セックス未経験者でも発症する性感染症もあります。性器カンジタは、真菌(カビ)による感染症で、セックスで感染するが、常在菌として健康な人でも体内に存在していることもあります。過労・ストレスなどで免疫力が落ちて菌に対する抵抗力が低下すると、発症する可能性があるようです。
参考:厚生労働省 これって性感染症?

「名前を変える」という病気との向き合い方

名前を変えるだけで病気が良くなるわけではありません。しかし、患者さんや周りの人の意識を変えることはできます。ぜいたく病や成人病など、世の中の偏見や差別意識が無意識の内に反映されてきました。
最近では、妊娠を考える人が受ける健康診断の名前も、ブライダルチェックからプレコンセプションチェックと呼ぶうごきが加速しています。子どもを望むことと、結婚の有無を切り離す考え方が広まってきているためです。
まだ世間には病名を変えることで前向きに向き合うことができる病気があるでしょう。皆が前向きになり、受診を控える人が減れば、SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」にもつながります。ぜひ、誰もが健康に過ごせる世の中にするために、病気をタブー視することなく、堂々と会話できる社会について考えてみませんか?