寄付がしたくなる仕掛け。クレジットカードで切られたパンの行方は?
この記事に該当する目標
これまで世界では多くのユニークなドネーションキャンペーンが行われてきました。寄付する側も楽しく、そして分かりやすく参加できる工夫が取り入れられた募金活動。それは、明るい未来を照らし出してくれるような希望に満ちた発想の集まりです。今回は、クリエイティブなアイディアに溢れたドネーションキャンペーンについてご紹介します。
飢餓に苦しむ人々の現状とは?
現在、寄付を必要とする人々はどのくらいいるのでしょうか。国連は2022年7月、「世界の食料安全保障と栄養の現状2022年版」の中で、世界の飢餓人口が8億2800万人と厳しい事態になっていると公表しました。さらに、新型コロナウイルスのパンデミック、紛争の激化や異常気象により食糧供給がうまくいかないために、 世界では、30 億人以上の人々が健康的な食生活を送ることができいないとも言われています。2019年から比べると1億1200万人の増加となりました。
また、国連世界食糧計画(WFP)のディビッド・ビーズリー事務局長は、「45か国で5000万人が飢餓の一歩手前まで来ている。ウクライナ危機で世界中の国々が飢餓に追い込まれる恐れがある。私たちは今すぐ行動を起こさなければならない」とコメントしています。これまで以上に、世界では貧困や飢餓の状態が悪化し、まさに他人事ではないところにまでなってきているのです。
キャッシュレスで楽しく募金ができる?The Social Swipe by MISEREOR
このような状況の中、私たちができることの一つとして「寄付」があげられます。以前、寄付に関するユーモアに富んだアイデアがドイツで話題になりました。寄付に馴染みのない日本でもこうした取り組みがあれば身近になるのではというアイデアだったのでご紹介したいと思います。さまざまな人が行き交う駅や空港に設置されている「MISEREOR Social Swipe」は、クレジットカードに対応した初のデジタル広告看板で、これまで以上に簡単に募金をすることができるようになっています。「Feed them(飢えを満たして)」と書かれたデジタルサイネージの中央の切れ込みにクレジットカードをスワイプすると、2ユーロがMISEREORというカトリック系支援団体に寄付されるという仕組みです。
操作方法はとてもシンプル。画面に映し出されたパンの切れ端をクレジットカードでカットすることで、寄付されたお金がペルーで飢餓に苦しむ人々の毎日の食事に使われていることを表示してくれます。このようなインタラクティブな体験が、寄付している側にも楽しみをもたらす要素になっているのです。大きなモニターで映し出される寄付の様子は、通りすがりの人も思わず立ち止まってしまうような作りになっています。
他にもある!世界の想像力豊かなドネーション
世界各地では、普通ではなかなか思いつかないようなドネーションの方法がいくつかあります。まずは、広告専門学校マイアミアドスクールの学生が考案した赤十字への募金活動。舞台は、空港のセキュリティゲートです。ここにある金属物を置くトレーに、アメリカ赤十字への寄付を促すデザインを採用しています。募金のためにわざわざポケットを探る人は少ないと思われますが、確実にコインを取り出すタイミングに募金をさせるというアイディアが秀逸ですね。
次に、ブラジルの低所得者層を支援する慈善活動団体Casa do Zezinhoの募金プロジェクト「Half for Happiness」は、スーパーマーケットの協力を得て、生鮮食品を半分の量で販売しています。空いたパッケージのスペースには、「How about sharing with those in need?」(この食品の半分を本当に必要としている人[栄養不足に陥っている低所得者層]にお裾分けしませんか)というメッセージを添えることで、いつも食品を余らせ、廃棄してしまう人たちへの問題提起として、とても印象的な活動となっています。
最後に、イギリスで活動するホームレス支援団体Simon on the Streetsによる寄付を募るためのプロモーションを紹介します。ホームレスを連想させる汚れた毛布やビニール袋、ペットボトルなどのアイテムとともにQRコードを表示したダンボールを街中に設置。そのQRコードを読み取ると、そのままホームレス支援の活動に寄付ができるようになっています。キャッシュレスが進む中、現金をホームレスに直接手渡すよりも、より目的に沿った形で支援をすることができるのもこの活動の利点です。
グローバルノート株式会社による国際統計・国別統計専門サイトによれば、2021年にクレジットカード発行枚数はアメリカ、中国、ブラジルに次いで、日本は世界4位。クレジットカード以外にも、電子マネーやコード決済など支払いの選択肢はどんどん広がってきています。こうした時代の動きに合わせたドネーションの方法や身近で分かりやすい広告活動によって、誰でも社会問題について意識できるようになるといいですね。