企業の技術革新がCO2排出量減のカギに!早ゆでパスタに施された特許とは?
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みなさんは好きな食べ物と聞いて何を思い浮かべますか?2011年にイギリスの民間団体「Oxfam International」が、世界17カ国に対して「どんな食べ物が好きか」という調査を行った結果、1位となったのが「パスタ」でした。世界中で愛されるパスタにはロングやショート、ニョッキやラザニアなどいくつもの種類があり、さらに具材やソースを工夫することでたくさんのアレンジが楽しめます。お米が主食の日本でもパスタをよく食べているという人は多いのではないでしょうか。今回は、この世界中で選ばれているパスタをゆでるという調理法と、CO2排出量減につながる「ゆで時間短縮」を叶えた日本の特許技術について考えていきます。
大正時代から続く、人々の好みに合わせて進化してきた国産パスタ
日本で最初にパスタという料理が現れたのは、1880年代(明治初期)頃と言われています。その後、国産のパスタが生まれたのが大正時代。当時は一部のレストランで限られた人しか食べることのできない希少な食材でした。その後、昭和30年頃から徐々に広がり、昭和60年代には家庭の味としてもパスタが一般的になっていきました。
日本パスタ協会の発表しているデータによると、2020年の国内パスタ供給量が過去最高の32万7千614t(前年比14.9%増)となっています。そんなパスタに欠かせないのが、沸騰したお湯です。
パスタゆで時間短縮へ向けた36年の研究、ついにCO2排出量57%削減へ
パスタ100グラム(一人前)を茹でる際に水1リットルを沸騰させる必要があります。水の温度や火力など環境にも左右されますが、大体、沸騰までに5〜6分かかるそうです。環境省の直近のデータによると日本の1世帯が1年間に排出するCO2(二酸化炭素)は2.72トンで、そのうち都市ガスは0.40トンと電気の1.80トンに続いて2番目となっています。
このような背景を基に日清製粉グループでは、ずっと続く未来のために、家庭でゆでる際のCO2排出量削減を具体的な目標のひとつに掲げています。「マ・マー 早ゆでスパゲティFineFast」シリーズは1.6mmの場合、茹で時間は3分。時間短縮や電子レンジ調理によりCO2排出量削減を実現しました。同社の標準品と比較するとガスコンロの場合は、CO2を36%削減、電子レンジの場合は、57%削減できます。
早ゆでの研究はすでに1986年から始まっており、麺にV字型の切り込みを入れる手法で早ゆでを実現し、2011年には改良を重ねた「風ぐるま形状」のスーパープロント製法を開発しました。2015年には1.8mm以上の太いスパゲティでも早ゆでが可能に。さらに2022年春のリニューアル品からは電子レンジでの調理ができるようになり、これまで以上に便利かつ環境に配慮した商品が生み出されています。
日清製粉グループならではの特許※技術「風ぐるま形状」とは
公式サイトによると、ゆで時間を短縮する秘訣は、麺に入れる溝とのこと。溝の角度や深さによって食感が大きく変化するため、細めのスパゲティはアルデンテ感を、太めのスパゲティはモチモチ感を強調するなど、麺の太さに合わせた食感のコンセプトごとに、形状を変える必要がありました。そうした商品開発のなかで生まれたのが、ゆで時間短縮と本格食感の両立を実現した幅広いラインアップの「風ぐるま形状」です。その開発には、麺のダイス(パスタの製造に使用される型)から自社設計できる強みを活かした技術や長年蓄積してきた工場での製造ノウハウ等、日清製粉グループならではの強みが活かされています。
※ 特許第5726493号(発明の名称:溝付き麺)
消費者のニーズは「節約志向」と価格競争の時代から、カロリーオフなどの「健康志向」、そして「環境志向」へと変わりつつあります。普段の食生活から環境課題について考えるきっかけになる「マ・マー 早ゆでスパゲティFineFast」シリーズから生まれた特許のように、日本の技術開発力がどう進化していくのか目が離せませんね。